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2-2 第103話 羞恥よりも独占欲が勝ってしまうようです

side優也


 結局あの後、何事も無く夕方になったので俺達は解散。俺と結羽は旅館に戻る。


 旅館に戻ると結羽は部屋の中央に置かれているテーブルの上の煎餅を食べながらテレビを見始めた。

 何やら結羽は気にしていない様子だが俺はさっきの事をまだ引き摺っていた。

 俺は恋愛初心者。だから距離感を掴むのも難しいし、だいぶ結羽のしたい事を察せるようになったがそれでもまだ分からないことは多々ある。


「はぁ……どうしたもんかねぇ」


 困ったらとりあえず頭を撫でるんだが、それだけじゃ最近は物足りなさそうだ。

 かと言ってキスするのはな……。結羽がまだしたくないって思ってた時のことを考えると少し臆病になってしまう。


 その時だった。


 プルルルプルルル。携帯の着信音が鳴り響いた。番号を見ると直ぐに誰か分かったので少しため息をついてから着信ボタンを押す。


「あー。ただいまこの電話番号は――」

『お兄ちゃんっ!!!!』


 キーン。耳がぶっ壊れるのではないかと思うほどの大きな声が携帯から聞こえてきた。少し耳鳴りがして耳が痛いがだるいなぁと思いながら電話の方へ意識を向ける。

 まぁ、お兄ちゃんって呼んできたところから察せると思うが相手は萌未だ。何やら焦ったご様子で話しかけて来ている。


「どうしたんだよ……」

『お、お兄ちゃんの家が……家が……っ! 売家になってます!』


 情報伝達が遅いなぁ。今の世の中って情報化社会じゃなかったっけ? 萌未が乗り遅れてんぞ。

 ってか今頃なのか? 俺の家が売家になったのは結構前だ。


『まさかお兄ちゃん……転校を?』


 萌未の涙ぐんだ声。受話器越しでも分かる萌未の悲しそうな声。恐らく本当に泣いているのだろう。

 あいつ、受験勉強で縛られている間もかなりの頻度で俺に会いたいと泣いていたらしい。だが、俺にあってしまうと歯止めが効かなくなってしまうのでそれは酒田さんが止めてくれたらしい。ナイス酒田さん。


 だが、このままにしておく訳にもいかないだろう。どういう経緯で今頃知ったのかは知らないがあいつの事だ。自分も転校するとか言い出しかねない。


「あー。まぁ、別の家に移り住んだってだけで市内からは出てねぇよ」

『ホント!? 本当に居るの!?』

「ああ、居る。居るからそんなに声を荒らげて確認せんでいい」


 耳が痛いから。その声、凄い耳に響くからちょっと落ち着いてくれると助かるな!?

 すると電話越しに安堵したようなため息が聞こえて来たので落ち着いたんだなと俺も鼓膜が破裂せずに済むと思って安心する。


「んで? それだけか?」

『はい! 心配になってしまって……ダメですか?』

「いや、別にダメってことは無いが」

『ならいいですよね!』


 何がいいのか知らんが萌未が安心してくれたようでよかった。

 いつも結構雑に扱っているが俺にとっては大切な従妹だ。出来るだけ不安は無くしてあげたいし、相談事や困ったことがあったらどんどんと聞いてあげたいと思っている。

 だからそういう不安を抱いての電話は実は大歓迎だったりする。


『お兄ちゃんは何だかんだ言って優しいですよね。その優しさに免じて私が彼女居ないお兄ちゃんの彼女になってあげてもいいですよ?』

「…………」


 そういえば萌未には俺と結羽が付き合った事を言ってなかったっけ。って事は萌未の中では今でも俺は年齢=彼女居ない歴ってことになっている訳か。だからそんな俺の為に彼女になるって言ったのか。なんて優しいんだ。だが、俺には既に彼女が居るからな。

 隠すか隠さないか……どうしたもんかねぇ。そう思いながら上を向くとそこには顔があった。紛れもない俺の彼女の顔だ。

 若干頬を膨らませて不機嫌なご様子だ。しかもまさか上から覗き込んでくるとは思わなかった。


「……優也。代わって」

「え?」

「代わって」


 どんどんと低いトーンになって行く結羽に俺は恐怖し、光の速さで手に持っていた携帯を渡した。偶に怖いんだよな……。多分あの様子だと相手が誰だか分かっているようだが、結羽は萌未と話して何する気なんだ?

 携帯を受け取ると結羽は耳に当てながら俺に話し声が聞こえない所まで歩いて行った。もしかして俺に聞かれたくない話でもあんのかな? なら仕方が無い。適当に本でも出して話終わるまで待ってようかな。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

side結羽


「どうも。今代わらせて頂いた優也の彼女(・・)の柴野 結羽です」

『あ、結羽さんですか……って彼女!?』


 私は優也から携帯を受け取るとまず牽制の一言を放った。萌未ちゃんが優也の事を兄や従兄として見てるんじゃなくて一人の男(・・・・)として見ている事は一目見れば分かる。ここは彼女アピールをしておかないといつ私の優也が盗まれるか分かったものじゃない。


「そうだよー。私は優也の彼女。そう、彼女。女の人って意味じゃなく恋人的な意味の彼女だよ?」


 私は彼女と言う言葉を強調する為にあえて何度も繰り返し彼女と言う言葉を発する。

 普段は恥ずかしいはずなのに今はスラスラと言葉が出てくる。多分羞恥より独占欲の方が勝ってるんだろう。

 私、萌未ちゃんと優也が会話をしているって事が話の流れから分かって嫉妬しちゃってたな。それから盗み聞きしてたら何気に萌未ちゃん、優也に迫ってたし。これはもう許せないよね。


「んで、そんな私の彼氏(・・・・)に何か用?」

『い、いえ……』

「そうなの? それじゃ私の優也(・・・・)に代わるからね」


 満足した。これだけ釘を刺せば何も言えないでしょう。それといつも恥ずかしくて言えなかった分を言えたからモヤモヤしてたのがだいぶ晴らせた。


 そんな感じで私はウキウキ気分で優也に携帯を返した。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

side優也


「あー。代わったぞ」

『お兄ちゃん。お幸せにね?』


 若干涙ぐんで震えた声で祝ってくる萌未。多分結羽が何か言ったんだろう。その声は若干恐怖に染まっている様な気がする。本当に何言ったんだよ。


「まぁ、結羽に何言われたか知らんがあんまり思い詰めんようにな」

『思い詰めもしますよ……だって大好きなお兄ちゃんと結羽さんが……』

「え? なんだって?」

『何でもありません!』


 なんなんだ? 本当に。

 しかもそのまま切りやがったし。本当に何がしたかったんだ?

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