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掌編小説集1 (1話~50話)

送信機

作者: 蹴沢缶九郎

雲一つない晴れ渡った日曜の午後、松岡は発明好きの小池に、「面白い物を見せたい。」と呼び出され、家に遊びに来ていた。


部屋に通された松岡は早速、「見せたい物って何だい?」と尋ねた。


小池は、「あそこを見てくれ。」と、窓の辺りを指差す。そこには、とても神秘的で美しいカーテンがあった。


「お、何だこの綺麗なカーテンは? どこで買ったんだ?」


「南極さ。もっとも、正しくは買ったんじゃなく、切り取ってきたんだが。」


と小池が答える。松岡は意味が分からないといった様子。


「実は、本当に見せたいのはそのカーテンじゃなく、これなんだ。」


そう言うと、小池はポケットからテレビのリモコンの様な物を取り出した。


「それは?」


と松岡が聞く。


「これは僕が開発した実体波送信機。この送信機から照射された実体波で、どんなものでも実体化させる事が出来るんだ。つまり、そのカーテンは実体化した本物のオーロラ。この間、南極に遊びに行った時に、実体波で実体化させ、切り取ってきたんだ。」


「なるほど、まさしくオーロラのカーテンというわけか…。しかし、本当にそんな事が可能なのか?」


疑る松岡。


「百聞は一見にしかずだ。実際に見せよう。」


小池は松岡を庭へと連れ出すと、庭にある水道の蛇口をひねり、ホースの先から出した水で、小さな虹を作り出した。

小池はその虹に、先ほどの実体波送信機を向け、実体波を照射した。


するとどうだろう、虹は徐々に実体化し、そこに小さな虹の橋が出来上がったのだ。


「これは凄い!!」


松岡は感激の声をあげた。


「なあ小池、頼む!! これを貸してくれないか?」


「まあ、いいけど。扱いには充分注意してくれよ。」


かくして、実体波送信機を借りた松岡。使い道をあれこれ考えながら帰路へとついた。



それから数日後、慌てた様子の松岡から、


「大変な事になった!!すぐに来てくれ!!」


と連絡があった。


小池が急いで向かうと、松岡の家の回りに何やら人だかりが出来ていた。


「ははあ、さてはあちこちで送信機を自慢したな…。」


呆れた小池だが、人だかりの人間が口々にしている言葉を聞き、事は思ったより深刻だと分かった。


「うらめしや…。」

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