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仕事が休みの日は目に見えてテンションだだ下がりになる変わった子として町の皆さんに面白がられている私ですが、本日は仕事が休みでもテンションは下がっていません。

何故なら!今日は先日素敵な出会いを果たした修道女のナナちゃんに会いに行くから!


ここでこの世界における修道女という存在について、もう少しおさらいしておこう。

前世では全然関わりが無かったから違いがどれだけあるかについては詳しく知らないんだけど、この世界の修道女ってのは教会に住み込みで神への理解を深める教育を受けながら教会へ貢献(清掃や庭仕事や炊事などなど)を行う女性を指す。これが男だと修道士。そしてその中から試験に合格した者は牧師になり、教育を施す側になる。

つまり教会に行けば高確率でナナちゃんに会えるはずだ。こっちは丸一日休みなんだし、仕事中なら待とう。忙しいようなら休みの日を合わせられるように予定を聞いて…。

…あれ、私がやろうとしている事ちょっとストーカー臭くないか?


……女同士だから大丈夫!友達に飢えているだけだから!変な意味なんて無いから!


自分に言い訳をした私は胸を張って歩く。

途中、目の前をこの城下の外れにある町では珍しい馬車が通り、ニカ様か?!と一瞬びくっとなったけど見覚えの無い馬車だったし何事も無く通り過ぎて行ったのでほっと胸を撫で下ろした。そもそもニカ様もリリちゃんを見極めるみたいなニュアンスの事言ったんだから、前より頻繁には私に会いに来ないかもしれないな。良い事だらけだ。

思考に一区切りついたところで、丁度教会に辿り着いた。私は一つ深呼吸をして扉に手を掛ける。


「失礼致します」


教会の中に入ると、物凄い勢いで中に居た二人が振り返った。その勢いに私は驚いたけど、二人の顔を見るにそれはお互い様だったよう。

内一人は服装からして恐らく牧師さんで、もう一人はナナちゃんだった。


「あ!あ!!先生!この人です!私を助けてくださった聖女様みたいな貴族様…!」


ナナちゃんが相変わらず落ち着き無く左右の三つ編みをぶんぶんさせながら私を指差し叫んだ。かわいい。言っている事の一部がどうにも気になるが。


「シスターナンシー、声を落としなさい。それから人を指差さない」

「す、すみません」


対して牧師さんは落ち着いた男性だ。親のようにナナちゃんを嗜める優しそうなおじ様。うん、いいコンビだね。

私は足音を立てないよう二人の前まで歩いて行き一礼した。


「フィー・クロウと申します。はじめまして牧師様。ナンシーさんは先日ぶりですね。確かに私はナンシーさんとは先日お話の機会がありましたが、貴族ではありませんので誤解の無いよう」

「え?!ええ?!貴族じゃない?!嘘です!!」

「シスターナンシー」

「すみません、静かにします…」

「それももちろんですが、人の言葉を嘘と決めてかかるのは感心出来ません」

「はい…」


しゅんとしているナナちゃん、叱られたわんちゃんみたいでかわいい。貴族よりちゃんと平民と認識して欲しいところではあるけど。

でも前の時妙に謙っていた理由がこれでわかったな。貴族だと思われていたのか。言葉遣いやら仕種はもうほぼ反射で猫被っちゃうからな…代わりに心の中ではこの有様なんですがね。


「申し遅れました。この教会の牧師を務めさせて頂いております、ジャック・ガンホースと申します。先日はシスターナンシーをお助け頂きありがとうございました」


そう言って綺麗にお辞儀する牧師ジャックさん。この世界の人の名前や外見は完全に前世の日本人目線だと外国人なのに、言語が日本語で文化風習も日本式が多いのは日本のゲームだからとしか言えないね。

しかしふむ…ジャックさんのこの身のこなし、しかもファミリーネーム持ちとなると、たぶんこの人身分は貴族だな。あまり関わり合いになると痛い目を見そうだ。


「目の前で女の子が怪我をしそうになっていたら助けるのは当然の事ですよ」

「お、おお…フィーさん格好いい!」


ナナちゃんの好感度が上がった気がする!嬉しい!


「それはそうとクロウさん、惜しかったですね。もうほんの少しでも早くお越し頂ければ聖女様と会えたでしょうに…」


ジャックさんが突如聖女様というワードを出した。ナナちゃんもジャックさんの隣で自分の事のように悔しがってくれている。天使かな?


「あの、聖女様とは…?知識不足でお恥ずかしいのですが、教会にそのような階級があったのですか?」

「いえ、ありませんよ。聖女様は階級とは別の呼び名ですから」

「聖女様の事は、勝手に私達が聖女様って呼んでるだけなんですよ!」


牧師と修道女が勝手に聖女と呼ぶような存在…?ただ階級で呼んでいるのよりむしろとんでもない事な気がするな。その女の人はどんな聖人だと言うのか。


「何故聖女様と…?」

「彼女は幼い頃から毎月一度は必ず教会にお越しになり、感謝を捧げなさるのです」


…それだけ?

いや、欠かさずするのは凄い事かもしれないけど、前世ではそんな人、身近には居なくても世界規模では沢山居ただろうからいまいちピンと来ない。確かに今世では何かの節目以外で滅多に教会に行く人は居ないみたいだから珍しいのはわかるけど…。それなら毎日この教会で神様に感謝する時間を取っているだろうジャックさんやナナちゃんの方が凄いのでは?


「私、聖女様に憧れて修道女になると決めたんです。もう…十三年も前の話ですね。私と同じ年頃の女の子が馬車から降りて来て、興味本位でその後を付いて行った私が見た…たった一人で十字架の前目を閉じ手を合わせたあの神秘的なお姿…忘れられません」


目を潤ませ恍惚の表情を浮かべるナナちゃんは、見た目からして私と同い年ぐらいだと思う。

…馬車、という事は聖女様とやらは貴族に違いない。私が今十六歳だから、当時の聖女様は恐らく三歳そこら。そんな彼女が、一人で教会で感謝を捧げていた――

ああ…どんな事情かは知らないけど、この城下の外れにある町までわざわざ汚れひとつ無い綺麗な服の幼い女の子が一人、神に感謝を捧げに来る。

確かに聖女と呼ばれておかしくないシチュエーションなのかもしれない。そんな幼い頃から自主的に神様に感謝したいと毎月通う子からして、早々居たものじゃない。普通親御さんと一緒に来るだろうし。


って、違う違う。私は聖女様の話を聞きに来たんじゃない。


「そんな方がいらっしゃるんですね。…話の腰を折って申し訳ないのですが、私が本日此処に来たのは、実はナンシーさんにお願いがあったからなんです」

「え?!…や、やっぱり怪我を?!ち、治療費…先生すみません、立て替えてください!すみません!」

「シスターナンシー、相手の話はきちんと聞きましょう」


落ち着いて嗜めるジャックさんとわたわたナナちゃんを見て微笑ましい気持ちになる。きっとこの二人はいつもこうなんだろう。

もし私の今世の家族にこんな温かみがあったなら、私が平民になりたいと思う事は無かったのか――いや、それは無い。どれだけ恵まれた環境だったとして、自分の立場をレディロのヒロインと気づいた時点で私は絶対に逃げようと思っただろう。

もし私がまたレディロのゲーム内に運命なんて馬鹿げた理由で引き戻されるようなら、私は迷わず国を出てさらにずっと遠くへと逃げる。国の外は危険と謎が多くリスクが高過ぎるから出来れば行きたくないが、やむを得ない。自分に出来る対策は万全にするけど、それでもし死んだとしても。


平民として生きられないなら、私として生きられないなら、生きる意味が無い。生きているだけなんて意味が無い。


「ナンシーさん、私とお友達になって頂けませんか?」

「え?!……はい!」


何はともあれ現在は危険を冒して逃げる程最悪の状況ではないので、素直に今世初友達が出来た事を私は内心で全力で喜びます!!外面はまぁ嬉しい!とにこにこしている程度だけど、内心は今狂喜乱舞ですよ!

この三つ編みダブルしっぽぶんぶんしているかわいい修道女ちゃんはもう私のものだ!焦らず徐々に徐々にデートと貢ぎ物と溺愛により距離を縮めて行き、今後私にメロメロのドロドロにさせる予定だ!誰にも邪魔はさせない!!

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