Triple 変わらぬ愛
○一之瀬 蘭
…明るく元気なバスケ部のエース。感情的なところも
「あれ、今日も蘭お姉様いらっしゃらないんですね?」
長引いた掃除当番を終えてから、早足で特会室へと向かったが、席は一つだけぽっかりと穴が空いている。
「夏の大会前だから。まあ、しばらくはそっちにかかりっきりになるんじゃないかしら」
酒匂桔梗が手作りだと思われるクッキーを皿に出しながらつぶやく。
合同文化祭が終わってから、一之瀬蘭は一度も特会に顔を出していない。合同文化祭後はしばらくあまり仕事がないとはいえ、一応原則参加となっている水曜の定例会議も全て欠席していた。
「でも、球技大会のこともあるし……いい加減顔くらいは出して欲しいのだけど」
桜がホチキスで書類を留めながら、ため息をつく。
「楓は大丈夫なの?あなたも大会が近いでしょう」
「ご心配なく。バスケ部とは違って個人競技だし、その分朝練の時間を多くとってるから」
桔梗の言葉に楓がそう返す。
そんなやり取りの奥で、桜はずっと何かを考え込んでいた。そして、ようやく口を開く。
「……ねえ、紅葉。ちょっと頼まれてくれないかしら?」
運動部の威勢のいい掛け声を聞きながら、グラウンドを迂回して体育館へと足を運ぶ。
体育館の扉に近づくと、中からはバスケ部の練習の声が聞こえてきた。少し緊張しながらその扉を開けると、多くの生徒たちが体操着姿でボールを追っていた。
「あの、すいません」
脇でその様子を見ていた生徒に話しかける。恐らく部長だろうか。真剣な表情に一瞬声を掛けるのを躊躇ったが、桜からの頼まれ事なので勇気を出して声をかけた。
「あら、美濃越の妹さん。どうしたの?」
思ったよりずっと柔らかい声でその人は返してくれた。
「練習中すいません。これ、一之瀬蘭様に渡して頂けますか?」
私は桜から預かった資料が入ったクリアファイルを彼女に差し出した。
「ああ、特会ね。ちょうど今から休憩だから直接蘭に渡すといいわ」
彼女はそう言うと、首にかけていたホイッスルを吹いて部員たちに休憩の号令をかける。そして水を飲んでいた一之瀬蘭に声をかけに行き、私の方を差してこちらに来るように促しているのが見えた。
「紅葉!わざわざごめんね」
タオルを首にかけ、普段はハーフアップにしている髪の毛を一つに束ねた一之瀬蘭の姿は、新鮮そのものであった。
「これ、桜お姉様からです」
「ん、ありがと。……って、何これ」
資料を受け取った蘭はそれを見て眉をひそめた。
「あの、何か……?」
「ん」
蘭が資料に添えられていたメモ用紙を私に見せる。
『部活が忙しいのはわかりますが、資料くらいは受け取りに来てください』
メモ用紙には几帳面な桜の字で、他人行儀な言葉が並べられていた。
それを見た蘭は面白くなさそうに膨れている。
「会長さんに言っておいて。言いたいことあるなら直接私に言いに来い、って」
「ええっ……?」
私の返答を待つことなく、蘭は練習へ戻って行った。
「……とのことです」
桜に伝えるべきか迷ったが、とりあえず私は蘭の言葉をそのまま伝えることにした。
「何それ……感じ悪い」
桜は聞こえるかどうかの小さな声でそうつぶやいた。
「じゃあ、私は生徒会の方に行くから。あとはよろしくね」
皆に聞こえるようにそう言い直して、桜は特会室から出て行こうとした。
「あっ、桜お姉様!リボンが…」
立ち上がった時にテーブルについた手に巻き込まれた制服のリボンが解けていた。
私は桜に駆け寄って、それを手にとって結び直した。そして確かに見たのだ、そのリボンの裏に刺繍してあるはずの彼女の名前がなかったことに。
「ごめんなさい、ありがとう」
桜は私の手を握って礼を言った。それは私を制するようにも見えた。
「あーあ……」
桜がいなくなったのを確認してから、藤がわざとらしくぼそりとため息をつくのが聞こえた。
「紅葉さ、桜と蘭が喋ってるの見たことある?」
「へ?……あ、そういえば……ない、気が」
会議の形式的な会話以外で二人が喋っているところは見たことがない。というより、それすらない気がしてきた。
「……今年はここ十年で一番仲が悪い特会だからな」
と、藤はつぶやいた。
「あれ?ひまちゃん」
夕食を食べた後、週替わりの食堂掃除当番を終えた私が部屋に戻ろうとして階段を上っていると、見知った顔が踊り場の壁にもたれかかっているのを見つけた。
「紅葉ちゃん」
クラスメイトである津波ひまわりだった。
消灯まであと一時間を切っているのに、部屋の外に生徒がいるのは珍しい。津波ひまわりは寝巻きを着て一人でそこに佇んでいた。
「どうしたの?」
「んー、避難中、かな?」
ひまわりは困ったように笑ってみせる。
「蘭お姉様の機嫌がね、よくないから。こういう時は触らぬ神に祟りなし、ってね」
「……原因は?」
「うーん、紅葉ちゃんなら心当たりあるんじゃないかしら?」
心当たり、といえば先日の資料を渡しに行った時くらいである。あれから一之瀬蘭には一度も会っていない。
「ただでさえ大会前で気が立ってるのに、その件で火に油を注いだ感じね。しばらくお姉様が迷惑をかけるかもしれないけど、よろしくね?」
ひまわりは私の手を握って苦笑いを浮かべながら軽く頭を下げたのだった。
「げっ」
特会室の扉を開くと、二人の人影が見えた。
「おいおい、まるで歓迎されてないなぁ、桔梗?」
「あら、どういうことかしらね」
笹月藤と酒匂桔梗の二人が席に着いてお菓子を食べていた。
「今日はお二人なんですか?」
藤の相方の桐の姿は見えない。珍しい組み合わせだが、なんとなくあまり関わりたくない組み合わせでもある。
今日は定例会議の日ではないので、集まらなければいけないという決まりはない。私が暇を持て余しているのと同様に、二人も特に用事はないのであろう。
「部屋より勉強しやすいから、と思って来たのだけれど。藤が邪魔ばかりしてきて困るわ」
「おいおい、誤解を招くようなことを言わないでくれ」
そう言って、藤は机に向かって問題集を広げている桔梗の顔に手を添えて自分の方へ向ける。
そして、そのまま唇を重ねた。
「……は?」
当然のように行われたその行為にぽかん、と口を開けながら私は持っていた鞄を床に落とした。
「藤のキスは乱暴だから嫌いよ」
「じゃあ誰ならいいんだ?」
そんな私をよそに、二人は何事もなかったかのように会話を続ける。
「あの、えっと、その……私はどうすればいいんです?」
耐えきれず声をあげる。
藤と桔梗はふふっ、と笑いながら
「おいで」
と、私を手招きする。
私は恐る恐る二人に近づく。そしてそのまま藤に手を引かれ、いつの間にか立っていた彼女に前から抱きしめられるような形になった。
「そんな顔しないでくれよ。別にファーストキスもまだな仔猫ちゃんを襲ったりはしないから」
怪訝そうな顔で藤を見上げる私に、彼女はそうやって諭した。
「桐には内緒、な?嫉妬深いから、こんなこと知ったら大泣きするだろうし」
「じゃあしなきゃいいんじゃ……」
「その背徳感がたまらないんじゃないか」
呆れる私に、藤は清々しいほどの笑顔でそう言ってみせた。
「ひどい話よね。藤ったら、私や蘭のことを何だと思ってるのかしら」
「……今さらっととんでもないこと言いませんでした?」
「あら」
わざとらしく桔梗は自身の口に手を当てる。
「蘭お姉様のこと、聞いてもいいってことです、か?」
「なんのことかしら」
「もう……」
桔梗は意地悪く笑う。
「冗談よ。まあ紅葉も今の蘭の身勝手な行動には割りを食ってると思うし……」
あれから一之瀬蘭は特会と完全に距離を置き始めた。会議に参加しないだけではなく、校内で鉢合わせた時もぎこちない。原因が光田桜にあるのは明らかではあったが、私はそれを知らなかった。
「ひまわりやすずなと仲良いんだろ?むしろ知らなかったことに私たちは驚いたけど」
「ひまちゃんとすうちゃんと仲良くなったのは去年とかからなんで……クラスもずっと違ったし。あ、すうちゃんとは一年生の頃は一緒だったかも」
津波ひまわりとは今年も同じクラスである。神宮すずなというのは通常生徒会の副会長であり、去年同じクラスになって仲良くなった友人である。
「蘭とひまわり、桜とすずな、それぞれ寮で同室なのは知ってるわよね?」
「はい」
「原則同級生が同室になるはずなのに、二組のイレギュラー。……まあ、この学年はイレギュラーだらけなんだが」
そう言いながら、藤は横目で桔梗を見る。
「うるさいわね。今は私のことはいいでしょう」
桔梗が不機嫌そうな声で眉間にしわを寄せる。
「まあ、お察しの通り……元は蘭と桜、ひまわりとすずなが同室だった」
光田桜と一之瀬蘭と言えば、その学年では有名な仲の良い友人同士であった。スポーツマンであった蘭を支える桜の構図が、先輩後輩問わず密かな人気を誇っていた。
長身で整った顔立ち、誰に対しても癖のない接し方をする蘭。日本人離れした瞳の色と色素の薄い髪色をした優等生の桜。このペアは何かとハイスペックすぎた。
それが更に表立ち始めたのは、四年生になった光田桜が先輩からの推薦を受けて生徒会入りを果たした頃であった。
バスケ部のホープとして注目されていた蘭と、生徒会役員になって人目に触れる機会の多くなった桜の二人は、嫌でも目に付くようになる。それはまた、妬みの対象にもなった。
「特に桜の方は、正義感は強いんだけど……割と強引なとこもあるじゃない?クラスで浮き始めてたのよね」
桜と蘭は別のクラスであったため、蘭はそのことに気づくのが遅れた。その頃から二人の気持ちはすれ違い始めた。お互い忙しかったこともあり、その溝はじわじわと広がっていった。
「私は桜と同じく生徒会に入ってたから、桜の方の気持ちが離れていたのは気が付いていたのだけど」
「問題は蘭の方だったんだよな。蘭はそれでも桜のことが好きだったからな」
そんなある日、二人が大喧嘩をした。元からよく喧嘩はしていた二人だったが、それまでとは深刻さが違った。
「当時の寮長や寮監も頭を抱えていたわ。めったなことでは部屋替えとかしないんだけど、異例の措置よ。で、同学年で変わってくれる生徒がいなくて、一個下のひまわりとすずながその役を引き受けてくれたの」
それ以来、桜と蘭は冷戦状態である。特会に選ばれてからも一切言葉を交わしていない。
寮に帰ると、ちょっとした騒ぎになっていた。
食堂に入ると、生徒たちは皆ひそひそと何かについて話していて、少し普段と違った異様な空気であった。私は日替わり定食の乗ったお盆を持って、空いている席を探す。
程なくして、楓を発見した。
「何かあったの?」
「少し、面倒なことになった……」
楓は苦虫を噛み潰したような顔をした。黙々と夕食を食べる楓を見ながら、話を聞くタイミングを窺った。こういう時の楓は、話す内容を頭の中で整理している最中であるため、何も聞かずに待機しているのが正解なのだ。私も同じく黙々とご飯を食べた。
ちょうど食べ終わった頃、桔梗が私たちを呼びに来た。どうやら予想通り、この騒ぎは特別生徒会に関係があることらしい。
桔梗に連れられて団欒室に行くと、そこには特会メンバーが集められていた。
中央のソファに座らされているのは桜と蘭だった。
「最近の蘭の態度に桜がさすがに怒って、ひまわりに頼んで寮の部屋まで押しかけたらしい。で、そこで喧嘩勃発。この騒ぎだ」
藤が小声で私にそう説明した。
「……まあ、本当にそれだけだったら苦労しないんだろうけど」
楓がぼそりと呟いた。
「さて、お二人さん。そろそろ大人気ないとは思わない?ましてや特会のメンバー、桜に至っては全生徒の代表である生徒会長。そんな人物がこんなことになるなんて、前代未聞よね」
半ば呆れながらも、桔梗が他のメンバーを代表して口を開いた。
「約三ヶ月間、私たちもあなたたちの関係に気を遣いながら、なんとか上手くやってきたつもりだけど。そろそろ限界よ」
桔梗の責めるような口調に、申し訳なさそうに俯く桜と、煩わしそうに横を向く蘭の姿が対照的である。
「ねえ、あなたたち。特会のことで喧嘩するならまだいいけれど、そうじゃないでしょう?せめてそういうところは公私の区別をつけなさいな。それから、何かあるなら今ここで話しなさい」
桔梗の言葉に、周りのメンバーも小さく頷いた。
「私は……蘭に特別生徒会役員としての自覚を持ってもらいたいだけ。それ以上のことは求めてないつもりよ」
先に沈黙を破ったのは桜だった。そして、想像通りの優等生なセリフが返ってきた。
「なにそれ……私が悪いみたいな言い方。その割にはあのメモとか、最近の態度とか、あんな風にされたら私だって行きたくなくなるに決まってるじゃん」
すかさず蘭が反論する。
「それはあなたが特会の役員としての自覚に欠けていたから、ああいう言い方をしただけよ。身内に厳しくするのは当然のことよ」
「自覚自覚って、それしか言えないわけ?」
段々と互いの声も大きくなっていく。
「いつだってそう、立場とか世間体のことばっか。あんたはそうやって論点ずらすことしか考えてない」
「ずらしてないわ。少なくとも今の論点は蘭の特会に対する態度のことよ」
「だからそういうとこだって言ってんの!全部私が悪い前提で話始めて、その原因とかには興味ないフリして逃げて……あんたのそういうとこが気に食わない!」
蘭が声を荒げる。
「だって……仕方ないじゃない」
桜がぼそりとつぶやいた。
「そうでもしないと……怖いの。私は蘭が怖い。あの日からずっと。だからそうやって取り繕うしかないのよ……!」
桜の頬に涙が伝った。
大喧嘩、というのは半分建前のようなものであった。
少しずつ他人行儀になっていく桜とは対照的に、蘭は日に日に桜への想いを募らせていた。それは友情とは違う、別の感情だった。
キスをして、一緒に風呂に入り、同じベッドで眠る。それはこの櫻華の寮内ではよくあることである。
しかし、その向こうの一線を越えることは容易ではない。桜はそんなことを考えてすらいなかった。だが、蘭は違った。
離れていく桜の気持ちを繋ぎとめようと蘭がとった行動が、結果として二人を引き裂く結果となった。
「……」
桜の涙を見た蘭の顔が、驚きから悲しみに歪むのがわかった。何かを言おうとして引っ込める、そんな感じで口を開けては閉じていた。
「……ずるいよ」
蘭がようやく口にした言葉はそれだった。
「そうやって私のことは拒否したくせに、自分は後輩に手を出して……私のことが嫌いなら、そう言えばいいじゃん」
「違うっ!」
「違わない。すずなだったらよかったんだ。私じゃ駄目なのに」
「だから、そういうんじゃないって……!」
先ほどまでとは違う。諦めたような顔で淡々と蘭は言葉を紡いだ。それが何を意味していたのか、一年前の私だったらわからなかったであろう。
「好きなの……!蘭のことを今でも!でも、だからこそ、怖いのよ……!」
手で顔を覆いながら、震える声で叫んだ言葉は、静まり返ったこの団欒室にゆっくりと響き渡った。
団欒室を出ると、その扉の近くに津波ひまわりと神宮すずながいた。津波ひまわりは普段結っている髪を下ろし、神宮すずなも風呂上がりなのか少しいつものショートカットとはイメージが違った。
すずなはどこか遠くを眺め、ひまわりは座り込んで俯いていた。
「お姉様たちは?」
私を認識したすずながそう声をかけた。
「桜お姉様と蘭お姉様はまだ中にいるよ」
「……そっか」
そう言ってすずなは魂が抜けたように天井を見上げた。
「フられちゃったわね、私たち」
消え入りそうな声でつぶやくひまわりは、いつの間にか目に涙を溜めていた。
「私たちなりにお姉様に尽くしてきたつもりだったけど、それもおしまいかな……嬉しいけど、複雑だな」
いつだったか、桜の制服のリボンの裏の刺繍を見たときに、全てを悟った。自身の名前があしらわれているはずのそのリボンには、桜ではなく蘭の名前があった。
櫻華では口付けを交わした二人のリボンを交換するという、ささやかな儀式が暗黙の了解で行われていた。いくら色恋沙汰に疎い私でもさすがにそのことは知っていたし、桜が蘭のリボンをつけていたということはそういうことだとすぐに理解した。
交換したまま恐らく返すタイミングを見失ったそのリボンを、二年間お互い別のものに取り替えることなく持っていたのだ。
「ねえ、これからどうなるの?お姉様たち……」
「さあ?また部屋替えかな……ようやく自分の部屋に戻れる」
私の問いに、神宮すずなは自嘲の笑みを浮かべながらそう答えた。
その様子を見たひまわりがぽろぽろと涙を流した。
「ねえ、お姉さん」
「なに?」
「桜お姉様と蘭お姉様って結局、どういう関係だったのかな」
自分の部屋に帰る途中、私は楓にそう問いかけた。楓に聞いたところで答えが出るとも思えなかったが、自分ではない他の人の意見が欲しかった。
「さあ……女心と秋の空、って言うし。多分、ひまわりとすずなはその割を食う形になった。傍から見たらとんでもない奴らだけど……まあ、多少なりとも二人を知っていたら情は湧くし。批判はできない」
同級生で同じ特会メンバーである桜と蘭に「情が湧く」と言った楓に、私は少しだけ驚いた。あまり親しくしている風でもないのに、と思わずにはいられなかった。
「そっか……」
「紅葉は、違うみたいだね」
楓は私の曖昧な返事を敏感に察したようだった。
「随分怖い顔してるのね」
特会室に入るなり顔をしかめた私を、一之瀬蘭が煽るようにからかった。
「……ひまちゃんが泣いてたんで」
「嬉し涙?」
「最低……」
私は隠すことなくそう彼女を罵った。
楓が桜と蘭に情が湧いたように、私もひまわりとすずなを友人として大切に思っているのだ。
「冗談よ。ひまわりには悪いことしたとは思うけど……あるべき姿に戻っただけ」
「散々振り回しておいてその言い方って……」
「紅葉がどう思おうが勝手だけど、こっちにはこっちなりにちゃんと筋は通してあるの。部外者にあれこれ言われる筋合いはないわ」
飄々とした態度で蘭は私をかわす。その余裕な物言いに、私は苛立ちを覚えずにはいられなかった。
部外者、だなんてよく言えたものだ。ついこの前までは会議にも顔を出さなかったのに。
「……蘭お姉様にとって、ひまちゃんは一体なんだったんですか?」
「変なことを聞くのね。ひまわりは私にとってバスケ部の後輩で、可愛い可愛い妹よ。今までもこれからも、ね」
蘭はにこやかに微笑んでみせたのだった。




