第三話「裏切りのおっぱい」
唐突に俺の下半身──股間の部分に強烈な痛みが走る。
「ぐはッ……ぁぁ…ぁ…」
俺は眠りから跳ね起きると同時に股間を抑えながら悶え苦しんだ。
「やあ、起きたようだね」
そこには研究者と思わしき、白衣を着たどこか血の気のない女性が座っていた。
「何すんだ、てめえ!」 と威勢良く啖呵をきりたいが股間の激痛で顔を見ることしか出来ない。
そんな俺を眺め回すように見ながら白衣の女性は呟く。
「何すんだ、てめえ──とでも言いたそうな顔をしているねえ」
俺は苦虫を噛んだような顔で睨めつける。
その研究者らしき女性は俺の睨みつけをもろともせず、話を続ける。
「生憎、私は人が幸せそうに寝ている姿を見るのが嫌いでね、君の股間にちょいと正拳突きをさせてもらったよ」
白衣の女性は手をおっ広げながら不気味な笑みを浮かべる。
「ちなみにわたしはこれでも保健室の先生だ。 以後よろしく」
──保健室の先生? そうか……俺は金髪の女の子に殴られて倒れたのか。
しかし、今はそんなことはどうでもいい。
俺の脳裏ではどうにかしてこの女を黙らせることしか考えていなかった。
──ん?女……そうか女なら。
俺は獲物を狙う獣のように標的を定める。
「おお怖い怖い。 そんな野獣のような眼光でわたしを見ないでくれ」
──今だ!
瞬間、俺は閃光のような速度で飛びかかり、女の胸を揉みしだいた。
むにゅむにゅ、と俺の手に心地よさが広がる。
大人の女性なだけあってそれなりに胸は大きかった。そして柔らかい。
「俺の息子に馬鹿なことするからだよ! ざまあみ──」
俺は胸を揉みしだきながら女の顔を覗くとそこには表情一つ変えていない女の顔があった。
──!?
あまりの恐怖に俺の顔から血の気が消えていく。
「はっははは、君、おもしろいな。 私の名前は神室弥生。 自分では弥生と書いてヤミと読んでいる。」
俺は弥生の胸から手を引こうとする。
しかし、思い虚しくガシッと止められた。
「おっと待ちたまえ。 もっと揉んでくれて構わないんだぞ。」
「い、いや、結構ですって」
俺は弥生の手を振りほどこうとするが見た目とは裏腹に信じられない力で抑えられる。
「君もいい年の男のだ。 溜まってたんだろ?」
怖い。怖すぎる。胸を揉まれて無反応の奴とかいるのか?
俺が今まで見てきたマンガやビデオの中でもそんな女性は見た事がなかった。
「は、離せ!」
「触りたかったんだろ? もっと頑張って揉みたまえよ」
恐怖からどうすればいいかわからない。
タイミングよく鳴ったチャイムをゴングと捉えた俺はわけわからないまま再び胸を揉み始めた。
しかし、彼女は声を上げることも表情も変えることもない。
俺の揉みは次第にヒートアップしていった。
──弥生が含み笑いをしたのに気づかずに。
「くっそおおおおおお」
「先生、さっき運んだ男の人の病態はどうです──」
ガラガラとドアが引かれた。
もちろん、今、俺の手は弥生の胸。どうしようもない状況に俺は冷や汗を流す。
今さらだがチャイムが鳴っていたのを思い出す。
「やあ、金髪ツインテールちゃん。 彼は見た通り元気だよ。」
──金髪ツインテール? ま、まさか?!
俺は勢いよく振り返る。そこには先ほどの金髪ツインテールの女の子が立っていた。
当初は一応俺の様子を見にくるのが目的だったのかもしれない。でも既に完全に目が据わっていた。
俺は再び弥生に向き直る。
弥生は笑っていた。俺には悪魔にしか見えなかった。
「は、ハメやがったな!」
弥生は小さなため息をつき、首を横に振りながら答える。
「いったいなんのことだい?」
冷や汗が流れ落ちる。と、同時に後ろから勢いよく床を蹴る音が聴こえる。
何がどうなるか俺は理解していた。
理解しながらも後ろを振り返るとそこには予想通りの光景が映し出されていた。
そこには腕を思いっきり後ろに引いて拳を握りしめながらこちらに向かってくる少女の姿があった。
弥生はヒョイと立ち上がりその場から少し距離をとる。
俺は声を上げる間も無く殴られた。




