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第二話「金髪ンツンツインテール」

 「えッ……」 


 俺は驚きのあまり声を発していた。

 俺の声によって女の子は石化から解放される。


 「え、あ、いあ、うあぅ……」


 まだ今の状況を女の子は整理出来ていないのかよく分からない奇声を発しながらあたふたしている。可愛い。


 女の子は今の状況を整理出来ていないようだが既に俺は今の状況を整理し把握していた。



 「わたしの朝は男子更衣室でひとりでえっちなことをすることから始まります。そうすることでスッキリとした心持ち(からだ)で今日という一日を迎えられるからです」


 こんなところだろう。

 俺は変態……いや、みんな変態だが俺は紳士でもある。わざわざ指摘することもあるまい。


 おそらく、事を済まし男子更衣室から出ようとしたところで俺の足音が聞こえたのだろう。そして焦ってロッカーの中に隠れた。静かになったので俺が消えたと勘違いし男子更衣室から出て来たところを呆気なく俺に目撃されたという流れだろうか。


 実に愉快……否、ファンタスティックだ。


 「……フフ……フハハハハ」


 思わず笑いがこぼれてくる。

 俺の計画にここまで相応しいパートナーはいるだろうか。変態オナニっ子の金髪ツインテール。


 ──素晴らしい!


 俺のその不気味な笑いに女の子は何か勘違いをされていると気付く。


 「な?! べ、別に変なことしてたわけじゃないんだから!」


 彼女のその発言がさらに俺に火をつける。


 「誰がいつそんなことを言ったのかね? フハハハハ」

 

 俺は自分の名推理と彼女のその反応に興奮し片手で顔を覆うようにして嘲笑う。


 彼女の顔がどんどん真っ赤に染まっていく。


 「だ、だから違うって言ってんでしょ!」


 「言い訳が苦しいよ、金髪ンツンオナニっ子ちゃん」


 彼女の横に垂らしたツインテールが怒りと羞恥でわなわなと揺れる。


 「だ、黙れ変態モヤシやろう!」


 「変態に変態って言われたくないなー。それに変態は俺にとって褒め言葉ですから」


 俺は手をヒラヒラと広げて見せる。

 彼女は俺の物ともしないドヤ顔に拳を握りしめる。


 俺はゲスな笑みをこぼしながら彼女を追い詰めていく。


 「それじゃあなんで男子更衣室にいたのかなあ?」


 女の子は唇をギュっと噛む。


 「……おまえには関係ない」


 「完全に図星じゃな──」


 次の瞬間、俺の顔面に強烈なストレートが決まっていた。


 俺は恥ずかしい悲鳴をあげ、無様に倒れていく。

 

 あれ、よく考えたら高校生で金髪ツインテールって相当いけない人じゃ……。

 俺はようやく喧嘩を売ってはいけない人に喧嘩を売っていたのに気づいたが時既に遅し、俺の意識は朦朧としていた。


 俺の体が完全に倒れる寸前に彼女が何か言い放つ。

 しかし、俺の意識は飛ぶ寸前で口の動きしか捉えられなかった。



 ──ごめんなさい。



 俺は気を失った。


 

 




 



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