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第参話


 「お……い……!」


 「ん…。」


 「おい!起きろって!」


 誰かの声が聞こえて俺は自分の顔を擦りながら起き上る。…顔を擦って?


 「俺は確か部屋にいてオンラインゲームをしていた筈…」


 「戒翔、起きたか?」


 「祐樹?此処は?それに俺達はMagic&swordをしていたんじゃ…」


 「俺もさっき気が付いたばかりなんだけどよ…、周りを見てみろよ。」


 「周り…?」


 祐樹に言われて改めて自身の周りを見ると真っ白の空間の中に何万人と数えきれない程の人間が集まっていた。


 「これはいったい…?」


 「戒翔が寝ている間に聞き込みをしてみたんだが、この場にいる全員があのメールに載ったアイテムをクリックした人間みたいなんだ。」


 「…どう言う事だ?」


 「他の奴らが試したらしいんだけど、ログアウトやスリープが機能しないみたいなんだ。それに感覚がリアルすぎるのも不気味なんだ。」


 「…確かに、感覚をヴァーチャルで再現できる範囲は決まっているし、顔を擦った時の感覚は現実世界となんら変わらない物だったな…。」


 俺と祐樹がそう話しているとこの空間内に声が響く。


 『ようこそ、異世界の人間達。私の空間の中で退屈を持て余していないかな~?』


 「なんだ、この声は?」


 「完全に馬鹿にしている様な気がするんだけど…?」


 俺達がそんな事を言っているとこの人数の中の1人が叫ぶ。


 「なにが目的だ!俺達をこのヘンテコな空間から解放しろ!」


 『それは君達が今から行く世界で目的を達成すれば自ずと帰れるし、留まる事もできる。けど…勝負すら放棄するのであれば…』


 「なんだよ?」


 『死ぬ事になるだろうね?』


 「ヘンテコな空間の次には虚言か?付き合いきれないな!」


 『残念だね…名も知らぬプレイヤーさんが脱落するのは…。』


 その声と同時に叫んでいた男が空中に浮かび上がる。


 「な、なんだ!?」


 『世界を渡る事を放棄した人間の末路…しかと見届けるんだね。』


 その時、男の目の前には真っ暗な闇の口がポッカリと開いていた。


 「ひっ…!」


 『虚構の中で永遠に彷徨い続けると良いよ。』


 「た、助け…」


 しかし、男が命乞いの声が聞こえようとした所で闇の中へと引きずり込まれてしまった。


 「な…何なんだよ、アレは!?」


 『見ての通りよ。君達には選択権は無いの。受けるのであればそう望めばこの場から別の空間に移動する為の扉が開くし、君達が拒否をすれば先程の名も無きプレイヤーの様に現実世界に戻れずに闇の中を永遠に彷徨って貰う事になるだろうね。』


 「か、戒翔…どうする?」


 「退く事は死に直結するんならこのふざけた奴の言う勝負に乗る以外ないだろ?」


 「それしか無いよな~。」


 「分の悪い賭けは嫌いじゃないからな。」


 「それに付き合う俺の身にもなってくれよなぁ…。」


 そんな事を言っていると…


 『早速、覚悟を決めたプレイヤーがいるみたいだね…プレイヤー名はレオンにガイか。君達が勝った時の商品はどんな願いでも叶えてあげる。巨万の富、名声、尽きる事のない命…どんな事であっても叶えてあげるよ。』


 「だってよ。」


 「興味は無いな。俺の求めるのは怠惰に続く日常よりもスリルある非日常だったんだからこれほど楽しそうな事は無い!」


 『君は日常は要らないのかな?』


 「あんな詰まらない毎日が続くよりも心躍る様な冒険があるのなら現実なんかよりもテメェの言う世界に行ってやるよ!BETは自分の命…大いに結構!分の悪い賭けは今に始まった事じゃねぇ!」


 『そうか…なら一番手は君達2人だね。いってらっしゃい…古き世界…剣と魔法の入り乱れた世界…魔族や人族、亞人がいる世界へいってらっしゃい。』


 「最後に良いか?」


 『なに?行く前なら幾つかの質問に答えてあげるよ。』


 「質問は四つだ。俺達の良く世界の名は?そして向こうに行く俺達の肉体は?言語の対応は?そして貴様の目的はなんだ?」


 『世界の名前はオールドランド。君達の肉体は現実世界と仮想世界【Magic&sword】のアバターを合わせた物だよ。言語は向こうに行けば自ずと頭に入るから問題は無いよ。それと私の目的は秘密だね。知りたければ向こうの世界で私の分身たる巫女を見つける事だね。』


 「オールドランド…枯れた大地…、そして巫女か…。」


 『怖気づいたかな?』


 俺はその声に対して口角が上がるのを自覚した。


 「その逆だ。楽しそうな気配しかしないな!」


 『なら行っておいで。そして目的を達成して見せて。行き方は自分の中に扉をイメージしてそれを開ける様にすれば向こうの世界へ行く事が出来るよ。』


 声を聞きながら周囲に目を向ければ周りの連中も覚悟を決めたのか次々と光の中へと入って行く。


 『早くしないと皆行っちゃうよ?』


 「焦らすなよ。祐樹準備できたか?」


 「おう!こっちは何時でも行けるぜ!」


 「それじゃ、声の主。テメェに会える事楽しみにしているぜ!」


 そう言って戒翔は祐樹と共に光の中へと入って行く。そうしてこの空間の中にいた人間が全員この純白の空間から消えると


 『ふふふ…♪楽しみにしているわよ。異世界人の皆さん。』


 そして純白の空間に静寂が訪れる。



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