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第弐拾四話



 「ギルド長、ギルドカードが出来上がりました。」


 戒翔達があの剣呑とした空気から変わった雰囲気で談笑している所に受付嬢のハクが応接室に入ってくる。


 「おや、もうできたのかい?早いね…。」


 「ギルド長の悪い癖が出ないうちに…と急いだのですが遅かったようですね。」


 ハクはワウの仕草とサラと祐樹の表情を見てある程度の事は察した。


 「人聞きの悪い娘だねぇ。わたしは何も悪いことはしていないよ?」


 「悪戯を思いつく様な方が何をおっしゃるのですか?毎度の事ですが他の人に迷惑を掛けないで下さい!」


 「そんな事「お母さん?」はい…」


 ハクの言葉と途轍もない圧力プレッシャーにギルド長であるワウは素直に返事をするしかなかった。


 「は、ははは…」


 その様子を見ていた戒翔達も冷や汗を流していた。


 「それでは…、ギルドカードの受領となりますので受付にてお渡しします。」


 「ここで渡すって事は出来ないのか?」


 「それでも良いですけど正規の手続きを済ませた事にして表の受付で受け取った方が色々といざこざを起こさなくて済むと思うのですが?」


 「…ふむ、それは言われてみれば確かにそうだな。それにサラもいるんだ。ちょっかいを出してくる輩もそうそういないだろうしな。」


 ハクの言葉に一瞬だが思案した戒翔はそう答えた。


 「それじゃ、私はこの辺でお邪魔させて貰うよ。」


 「もう行かれるのですか?」


 「そうだね。元々、この子達の顔を見に来ただけだったんだけどサラの嬢ちゃんにも会えてよかったよ?」


 「わたしもワウさんに会えてよかったです。女王様にもお元気でしたと伝えて置きます。」


 「それじゃアイツが来たときには上等な酒でも用意しておくかね…」


 そう言ってワウは席を立つと直ぐに部屋を出る。


 「あ、そうそう。そこの戒翔って言ったかい?」


 訳も無く戒翔の名を呼んだ。


 「…なんだ?」


 「アンタのその身に宿った魔力(オド)(オーラ)だけど人にしては異常だから気を付けておきな…。下手に感付かれると他国の連中の良い餌にしかならないからね…。」


 「そうか。胆に銘じておくよ。」


 「それと、祐樹とか言う坊やも気を付けな。戒翔の坊やみたいに規格外な存在ではないにしろ…騎士団長補佐の地位に就く事で色々と問題が出て来るだろうと思うけど気張るんだよ?」


 「ウッス!」


 「こんな所かね?それじゃハク、後は任せたよ?」


 「はい!」


 そして今度こそワウは部屋を出て行くのであった。


 「それでは先程の受付の前にてギルドカードの受け渡しを致しますので外に出て席に座ってお待ちください。」


 そう言って待合室からハクの案内の下でホールに戻った戒翔達はハクの言葉通りにホールに設置された席に座って呼ばれるのを待つのである。


 「それにしてもギルド長が出て来るとはな…?」


 「俺は予測の範囲内だったぞ?そもそも女王の刻印入りの封筒が出てきた時点でトップの人間が来るのは当たり前だと考えていたからな…。」


 「普通の思考だと思いつく奴はいないと思うけどね…。」


 「そうか?」


 「戒翔殿の頭が切れすぎなのだと思うぞ…。」


 『戒翔さん、祐樹さん。ギルドカードを渡しますので受付までお越しになって下さい。』


 ギルド内でアナウンスの様な響きでハクの声が木霊した。


 「出来たのか…。」


 「もうちょっと静かに教えてくれないかなぁ…?」


 「あれは各所に設置された反響型魔導具で広いギルドの中でも知らせが聞こえる様に出来ているのだ。」


 「便利なのか…傍迷惑なのかわからん代物だな…。」


 「ほら、ぼやかないでさっさと済ませようぜ…!サラさんはそこで待っててくださいね~!」


 戒翔のげんなりとした態度をフォロー?するつもりなのか祐樹は戒翔の背を押して受付の所に行く。


 「ども~ハクさん。祐樹です!知らせが聞こえたのでお越しになりましたよ~♪」


 「はい、これがギルドカードになります。このギルドカードは各国に点在する各ギルドでも使用可能で自身の身分も保証する為に紛失しない様にご注意ください。また、盗難防止の為にご本人様の魔力のみでギルドカードの中身を見れるようになっていますので受け渡しが終わりましたら自身のランクと職業(ジョブ)に出身地が分かるように出来ておりますので…。」


 「りょうかいだよ~。俺達の魔力のみって事は他人にプライベート情報が漏れないように出来ている訳なんだね。」


 「その通りです。それとランクごとにプレートの材質が変わりますのでご理解して下さい。下位のランクはGとFはアイアンとなり、E、Dがブロンズで、次に中位となりますがここからはクエストの難しさも変わりますのでご注意ください。そして中位のランクはC、Bでシルバーとなります。そして上位ランクとなりますがAがゴールド、SがプラチナでSSがオリハルコンとなります。上位となりますがSSに関しましては伝説級の冒険者俗に言う勇者や英雄と呼ばれる方がこの地位にいます。どのランクもランクアップの為には自身のランクの一つ上のクエストを三つ成功させる事でランクアップの試験を受けることが出来ます。そしてクエストを5つ失敗しますと逆にランクダウンとなります。またランクダウンから7つ連続で失敗しますとギルドから除名となりますのでご注意下さい。長々とお浚いと説明をしましたがご理解しましたか?」


 「うーん。戒翔は分かったか?」


 「要するにクエスト3つ成功でランクアップの試験を受ける権利を手に入れる事ができ、その試験を合格する事でランクアップとなる。そしてその逆にクエストを5つ失敗すれば降格でさらにその状態で7つ失敗すれば除名となる。」


 「その通りです。それと付け加える事としましてランクアップの為に選んだクエストの場合は5つ失敗するとその現在のランクから落ちますので冷静に自身の実力を見極める事がとても大事になるのでそこの所を意識して下さい。」


 「要点は分かった。それでこれが俺のカードか…。祐樹と一緒で(シルバー)か」


 「なーんか納得できないって顔してるよね?」


 「当たり前だ…と言いたいが貴様とは1ランク違うのだから我慢するとしよう。」


 「アレ…?なんか上から目線なんだけど…」


 戒翔の言葉に祐樹が首を傾げながらそう呟く。


 「昔からのお前に対する対応であろう…。ほら、お前にお客だ。」


 「…ほぇ?」


 祐樹が戒翔の指差す方へ首を向けると


 「よう。新入りの癖に中位クラスの冒険者様か?どんなコネを使ったか知らんが新人は新人らしく先輩に礼をするのが当たり前だろ?」


 すぐ近くとは言わないが扉の方から歩いてくる筋骨隆々とした山男の様な出で立ちをしたサイクロプスの男とモデルの様な容姿の猫人族(ワーキャット)の女性が戒翔と祐樹の所へ近づく。



 「おい…アレって」


 「サイクロプスのドレンと猫人族のサヤ…2人ともCランク冒険者でそれなりに腕が立ちます。」


 戒翔の言葉にハクが登録者の名前と種族を伝える。


 「ねぇねぇ君~?」


 「俺ですか?」


 「違うよ~。そっちのハクちゃんと一緒にいる方ね。」


 「…なんか用か?」


 「わたしがって訳じゃないけどね~。ドレンの方が要件があるみたいよ?」


 そう言ってサヤと呼ばれた女性は傍らに立つ山男…ドレンの方を向く。


 「おい、お前ハクちゃんに馴れ馴れしく近づいてんじゃねぇぞ!」


 「……はい?」


 しかし、ドレンの言った言葉には流石の戒翔ですら間抜けな声を出してしまった。


 「だから!ハクちゃんは俺達冒険者のマスコット的キャラクターであり、みんなのアイドルなんだよ!それなのに貴様はハクちゃんに馴れ馴れしくし過ぎている!」


 男の叫びに戒翔と祐樹、そして遠くで聞いていた筈のサラも呆れてしまった。


 「確かにいきなり冒険者になるくせに何段もすっ飛ばしてB、Cランクなのも気に食わないってのも理由にあるがな!」


 「…で?そこまで言ってお前は…ドレンって言ったっけ?アンタはそれで何がしたい?」


 「それは勿論!一発や百発は殴らないと気がすまねぇんだよ!」


 その言葉を皮切りにドレンがその巨躯からは想像がつかない様な俊敏さで駆けだして戒翔目掛けて拳を振り下ろす。


 「無駄だ。」


 「なぁ!?グバァ!!!」


 しかし、戒翔はその拳を片手でいなすと合気道の要領でドレンの拳を勢いを殺して足払いをして体勢を崩しその場で倒立の様にさせてギルドの床に上半身を埋める勢いで顎の辺りに拳を叩き込む。


 「リアル犬神家…。戒翔に喧嘩吹っかける方が間違いなんだよね…。」


 その場で下半身を残し上半身は床下に埋まる姿勢のままのドレンに対して祐樹はそんな憐みを込めた言葉を呟く。戒翔と言う人物を知らない者には判らない事だが戒翔にちょっかいを掛けたり怒らせたら命が幾つあっても足りないと思う祐樹なのであった。


遅くなりましたがギルド内でのいざこざはまだまだ続きます。祐樹君の精神が持てばいいのですg(待てコラ!


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