第拾七話
「ん…?知らない天井だな…。」
戒翔はいつの間にか寝ていたのか目が覚めると見覚えのない天井が目に入る
「戒翔様、気が付かれましたか?」
その横でリアがパーティードレスから戒翔と最初に出会った時と同じ服で戒翔の手を握っていた。
「俺は…う…頭がイテェ…。」
戒翔は頭を軽く押さえながら部屋の窓から覗く三つの月が外に浮かび地上に向かってその光を惜しげも無く降らしていた。
「あまり御無理をなさらないで下さい。アレは我が国のワインの中でも度数の強い部類の物で少しづつ飲むものですから。」
「そんなものを俺は一気に飲んだのか、まったく酒は初めて飲むが良いものではないな。」
「初めてお飲みになったのがあのワインでは仕方ない事だと思いますよ?」
「それでも…だ。」
「そうですか。直ぐにお水をご用意しますね。」
リアはそう言うと席を立って机に置いてある水差しと水の入った木のカップを手に戻ってくる。
「戒翔様、お水です。」
「ありがとう。」
戒翔は水を貰いながらリアに礼を言う。
「いえ、お気になさらないで下さい。私も何度か経験していますし、その度にお母様や、サラに姉上にも迷惑を掛けていましたから」
そう言うリアは若干だが頬を赤らめて自身の失敗談を話す。
「リア王女もその様な事があったのですね…。」
「当たり前です。私だって初めての事は幾つもあります。勿論、恋だって」
「…?すまない、最後の方が聞き取れなかったのですが?」
「き、気にしないで下さい!」
最初はむくれた表情だったリオだが、最後の方は下に俯きながらか細い声でそう零すが戒翔はそれが聞き取れなかったのか聞き返すが、それをリオは必至に誤魔化す。
「それと、今の時間は?そろそろ相棒の所に戻って今回の処遇について話して置かなければいけないのだが?」
「その事は既にサラに言付けをさせています。戒翔様は酔いが冷めるまでという事で今晩はこの部屋でお休みになって下さって構いませんよ?」
サラの言葉にベッドから起き上がろうとしていた戒翔の動きを止めるには十分な物だった。
「一晩この部屋で寝て構わないのか?」
「元々この部屋は戒翔様に宛がわれたお部屋なのですもの。」
サラの言葉に戒翔は
「この部屋にいると物の価値が庶民の俺には判りそうにも無いし理解出来そうにも無いな…。」
「調度品はなるべく外させたのですがお気に召しませんでしたか?」
戒翔の言葉にリアは不安な表情になる。
「違うよ。そう言った意じゃなくて雰囲気の様なものだよ。」
「そうなのですか?」
「一時的な事だったが、孤児院出の俺にはこの部屋は眩しく感じてしまっているのかも知れないな。その後に養子にしてもらった家も普通じゃなかったがな…。」
戒翔の言葉には嘲笑と悲観の色が強かった。その事にリアは不思議に思ったが今の自分ではその場所に踏み込むには戒翔の信頼を十分に得ていない事なので口出しできそうにない事に歯噛みする。どうしてその様な哀しい顔をして泣きそうな声をだすのかと
「戒翔様…」
「スマナイな。この上から目線の性格は少なくとも実家になった所が起因なのだ。」
「御実家…ですか?」
「今は話せないが話せるときにはちゃんと話す。それまで待ってくれるか?」
戒翔の言葉にリアは笑顔で告げる。
「戒翔様がその事をお話になられる時まで私は何時までも待ちますわ。」
「ありがとう。」
「それでは、私はそろそろお部屋に戻ります。何か御用がありましたら手元のベルを鳴らしてくだされば近くにいるメイドが来ますので。」
「わかった。迷惑を掛けてすまない。」
「いえ、迷惑だなんて…。それではお休みなさいませ。」
「おやすみ。」
お互いにそう言葉を交わして戒翔は再び横になり、リアは部屋を出て行くのであった。
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