第拾四話
「…俺に団長補佐官として入れと言うのか?」
「ぶっちゃけてしまえばそうなるな。それにお主が殺したヴィンセントは素行は悪いが仮にも団長補佐を担っていた者だ。欠員が出ればそれに見合う者を補填するしか無いのだ。」
戒翔の言葉にシュウは最初と違い真剣な表情で戒翔にそう告げる。
「…サラにも言ったが俺はギルドに冒険者登録をして世界を見て回ってみたいんだ。だからその件は」
「その件は?」
「俺の仲間の祐樹にやらしてくれるか?」
戒翔は身代わりを使った(笑)
「…祐樹殿か?確かに彼は戒翔殿の様に突出した様な力を持ち合わせていないですが…大丈夫なのですか?」
「あれでも俺の背中を任せるに値する悪友だ。双剣士でLv65で中々にやるぞ?それに管理関係はアイツの得意分野だしな…。向こうの世界でもあいつの節約術の右に出る者はいない程だしな?」
戒翔の言葉に2人は何とも言えない表情をする。
「職業は双剣士で」
「節約上手で」
「管理関係の仕事が得意…」
「「まぁ、適任だな。」」
かくして祐樹のこの世界での役職が決まった瞬間であった。勿論、本人の露知らぬ所で、だ。
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「それでは、戒翔殿はこのまま城の方で歓迎の宴に参加して貰ってよろしいですかな?」
「何故だ?王女様とやらとの謁見の筈じゃなかったのか?」
「それが、先程の広場での戦いを王女様がご覧になったのでなぁ…。お主に興味を持った様子で宴の席を設けたと言う訳なのだ。あの様に嬉々とした王女を見るのは先代の王が御健在の時以来なのだ…。」
「…拒否した所で既に準備し終わっているのだろ?でなければ騎士団のトップが態々この場所に来る事もない。それに拒否したらしたで色々と此方には不利にしか働かないしな」
「ハハハハハ、面白いなお主は!何も話していない筈が既に分かっていたとはな…実に長生きはするものだな!」
「先ずは…お召し物のお着替えをして頂いて貰って宜しいでしょうか?」
サラがそう言って何時の間に用意させられていたのかその手には綺麗に畳まれた黒のタキシードを手渡して来る。
「更衣室は隣の部屋にある。用意出来たらサラと一緒に来ると良い。儂はお主が宴に参加する事をシオン女王に伝えて来るからの。」
そう言ってシュウは部屋の扉を開けてその場で一度振り返る。
「そうそう、サラの嬢ちゃんは二人きりだからと言って良い男だからと襲うでないぞ?」
「シ、シュウ将軍!何を言うのですか!?」
「はっはっは、それではまた会場でのぉ?」
そう言って今度は完全にシュウは部屋から出て行くのであった。
「ま、まったく!あの方は何時も何時もふざけ過ぎでいらっしゃる…」
最初こそ怒りを露わにしていたサラであるが最後の所に至っては何時もの事なのか溜め息を吐いていた。
「あ~、俺は着替えて来るからサラは座って待っていてくれるか?直ぐに済ませる。」
「あ、あぁ、分かった。私は座って待たせて貰うよ。」
そう言って戒翔は応接室の隣合わせの更衣室に入って行く。
「まったく、状況に流されるままって感じが否めないな…。」
鏡台に映る自身を見て自嘲気味に笑う。
「グ…ゥッ!此処に来るまでに蜘蛛に人間に亞人殺し…割と平気な顔が出来ていたが我ながら細い神経をしていたのだな。」
急にこみあげて来たものを口元で抑え込み流し台の所で口内の酸っぱいモノを洗い流しながら不敵に笑う。
「アイツと会う前は殺戮マシーンの様だった俺が今じゃこの有様か…黒逸家最高傑作の俺が。弱くなったものだな」
戒翔は口元を手直にあった布で拭うと手渡されたタキシードに着替える。
「…上流階級の場と言うのには些か抵抗があるが、女王の命令ならば逆らわない方が身のためだし、王女の補佐には祐樹を推薦した事だし問題ないな?」
首元のタイを締めて戒翔は身嗜みの最終チェックをしながら相棒である悪友を思い浮かべる。しかし、その悪友は親友に売られた事は知らないのである(笑)
「俺の職業と同じ奴がいない事を祈るばかりだな…。しかし、この職業はインスピレーションが大事だが聖霊達との再契約が第一の目標だな。今の聖霊具には聖霊の力が宿ってない為に非覚醒状態だからな…。」
自身の腕を一撫でして戒翔は更衣室を後にした。
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