第拾壱話
「此処が…スペンサー城か。」
戒翔とサラの目の前に聳え建つ大きな門は街の入口に建っていたモノとは比較にならない程にその存在を主張するような物では無く威圧感を滲ませるような物だ。
「此処は王城前の門に過ぎない。中に入れば騎士団の者達が鍛錬する場所にもなる広場になっている。」
サラはそう言うと近くに立っていた門番の所に近寄る。
「王女護衛騎士長のサラだ。此処を開けてもらう。後ろの男は姫様の恩人で街のあの者達を捕まえた者だ…女王様への謁見もあるので一緒に通してくれ。」
「はっ、了解しました!」
門番はもう一人の門番に合図を送り、同時に後ろに下がると門が重厚な音を上げながらゆっくりと開く。
「さ、行くぞ。」
サラの先導の下で戒翔は門をくぐった。すると目の前には騎士団が城の入口に列をなして騎士の最敬礼をして待ち構えていた。
「…壮大な歓迎だな?」
「私は何もしていない。おおかた姫様が言ったのだろう…。」
戒翔はそんな感想をサラに言うとサラは自分は何もしていないと否定し、可能性のある人物の名を上げる。
「サラ隊長は随分とゆっくりな御帰還だな?」
「ヴィンセント…また貴様か」
列をなす騎士団の中から現れたのは淡い蒼い色の騎士甲冑を身に着けた若い狼を人型にしたの様な男性でサラはヴィンセントと顔を顰めてそう告げる。
「誰だ?」
「王女近衛騎士団の副団長で私の部下だ。狼人族の男の野心家で良くない噂が後を絶たない者で男女差別をする男だ。」
戒翔はサラに小声で聞くと同じ声量でサラはそう答える。
「女は時間を掛けても文句を言われなくて良いですね…。王女も一人では淋しくて同性を隣に立たせて置きたくもなりますよね?男を知ればそのような事も無くなるのですがねぇ?」
「ヴィンセント、私の事は良いが姫様への暴言は聞き捨てならんぞ!」
「これは失礼しました。何分、嘘を吐けない性分なものでしてね?」
サラの目つきが厳しくなり、語気も荒くなるがヴィンセントは何事も無い様に飄々と受け流す。
「我々は女王様への謁見に赴く…。貴様達は訓練を続けておけ!」
その怒りをサラは戒翔もいる手前でもあるため無理やり押し込み静かな…しかし強い口調でそう告げてその場を離れる。戒翔もそれに続く様に歩きヴィンセントと呼ばれた男の顔を見ると
(まるで自分達種族が優れているとばかりの嫌な笑い方をするな…。胸糞が悪い卑しい笑い方だ)
「そこの男もたかが知れているかも知れんな。巨大蜘蛛なぞ俺ならば一瞬で殺せるな…!」
ヴィンセントの言葉に数名の騎士が笑う。案の定、その騎士達はヴィンセントの取り巻き連中と言う者だそうだ。
「…貴様の言いたい事はそれだけか?」
「か、戒翔殿?」
「貴様が井の中の蛙と言う事を教えてやる…」
ヴィンセントの周りの人がサッと退くのを確認して腰に差した真剣に手を掛けて戒翔がそう告げる
「腰抜けの人族風情が図に乗るな!」
「自身と相手の力量も量れぬか…愚かでしかないな。」
ヴィンセントはその体躯からは想像できない様な身の丈以上の大剣を大上段で振り下ろして来る。
「…剣は業物の様だが担い手が未熟ではその真価は発揮される事はまず在り得ないな。」
キンッと甲高い音と共に鞘に納められている筈の戒翔の刀が横に振り抜かれたままでその姿を露わにしていた。我々が使う無骨な剣とは違い限りなく薄い刀身だが洗練された造りだと見る者になら理解できそうな物だ。そして、私の背後で何かが地面に突き刺さる音がして振り返り絶句する。
「…わたしのアースソードがッ!?」
見ればヴィンセントの地精霊の加護が付与された大剣【アースソード】が半ばから折られているのが目に映った。
「地精霊の加護が付与されていようが俺の刀の前では無意味だ。無銘だが長い間俺の相棒をしているんだ。他にも持ってはいるが貴様には見せても無意味だからな…」
戒翔殿はそう言って刀と呼んだそれを静かに鞘に収めると私の後ろに突き刺さった大剣の破片を拾い上げる。
「こいつもこの様な所で朽ちるのには惜しい武具には違いないな…。」
悲しむような瞳であり、武器に愛情を注いでいる武器職人の様な彼の瞳は次に憤怒の瞳に変わり振り向いてヴィンセントをその瞳で射抜く。
「貴様には武器を扱う資格は無いようだな…。この大剣に住まう精霊が教えてくれた。持ち主を襲い殺して奪った様だな。」
「……はて、わたしには身に覚えがありませんね?」
「よくも抜けぬけと言えるものだな…。俺の断罪対象に確定…だな。サラ、この付近にいる騎士団の連中を直ぐに後ろに下げろ。」
「ど、どういう事だ?」
「派手に此奴を潰すからだ。」
「先程のマグレでいい気になるな!この下等生物がッ!」
戒翔殿の言葉にキレたのかヴィンセントがその身に着た鎧を砕きながら巨大になる。その姿は巨大な狼を彷彿させた。
「なッ!【獣化】だと!?」
サラの言葉に戒翔は凶悪なそれでい冷徹な笑みを浮かべる
「ようやく本性を現したな…。」
「貴様さえ消してしまえば済む話だ!」
「ったく、堪え性が無いな…。」
ヴィンセントがその大木の様になった腕を私達に振るうが戒翔殿は私を抱き抱えて後方に飛ぶ
「サラは此処で証人になってくれるか?」
「…なんの証人になればいいのだ?」
「奴がお客に対して粗相をしたので捻り潰したと」
「…団長の私ならば出来るな。」
「頼むな。」
そう言って戒翔殿は私を降ろして前に進み出る。…って、私は先程の会話の最中は戒翔殿の腕の中だったのか!?
私は1人その場で人知れずその真実に悶絶していた。その時の轟音も気にしている暇などあるか!
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