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第拾話



 「転移完了だな…。」


 戒翔は外に出て周囲を見渡すと城に続く大通りの道の半ば辺りである事を確認する。


 「…本当に転移させたのだな。」


 「俺の言葉が信じられなかったのか?」


 「わたしはこの目で確かめなければ信じられん性質なのだ。」


 「…それは見た目と雰囲気で判るが」


 「こ、この様な王城がお見えになる立派な場所にお店を移して大丈夫なのですか!?」


 「ミレイさん、大丈夫ですよ。過去は最悪だったかも知れんがこれからは最高になるだろう…。あぁ、それと二階の奥の部屋の二つを貸切に出来るか?料金は如何程の物だ?」


 「あ、はい。一泊だけでしたらお1人に付き150Gです。」


 「…安くないか?仮にも王都だぞ?」


 「いえ、私の宿は娘と二人で切り盛りしていますのでその額で十分なのです。」


 「…サラ、今度この店の雇用情報をギルドに張りたいのだが…。」


 「構いません。今回はこの場所に来たのですからお二人だけでは確実に手が足りなくなる筈ですからね。」


 ミレイの言葉に戒翔はサラに相談するとそれにサラは即答で答える。


 「あの…いけませんでしょうか?」


 「あのな?いける、いけないの問題ではない。この場所は見晴らしのいい場所で人もかなり横行する場所だ。確かに他にも宿は幾つも存在するが、仮に他の宿が満室で此方に大量の客が来た場合どうすると言うのだ?」


 戒翔の言葉にミレイがアッと声をだす。


 「…ミレイは何処か天然の気がするな。」


 「…お母様は昔からそうです。」


 ミレイの娘がそう答える。


 「どういう事だ?…お前は」


 「あ、申し遅れました。わたしはキノ、助けて頂きありがとうございます。ご主人様」


 キノと名乗った少女の一言にその場の時が凍る…


 「お、おい?戒翔、ご主人様だってよ。よかったじゃないか♪」


 「…貴様は少し黙って…ろ!」


 戸惑いながらも笑いをかみ殺し切れていない祐樹に対して戒翔はやけにキレのあるボディブローを打ち込み祐樹を地に沈める。


 「ちょっ!?洒落にならないんだけど!」


 「それだけ騒げていれば問題あるまい。して、キノ?何故君は俺の事をご主人様と呼ぶのだ?」


 「それは奴隷同然の扱いをされていたわたし達家族を救ってくれたご主人様にお仕えするためです。それにわたし達家族はフェンリルの末裔です。強い方に従う事はわたし達種族にはよくある事なのです。」


 「待て…フェンリルだと?その種族は」


 「太古の昔に滅びた事は母から聞いています。わたし達はそのフェンリルの血を僅かながらに持っています。」


 「わたしはそこまで強く残っていませんが、娘のキノは先祖帰りか知りませんが色濃く受け継いでいるかと思いますが…ただ、キノの父親でわたしの夫はそれを気味悪がり出て行ってしまいました。」


 「あ~、すまん。なんか言い辛い事を思い出させたな…。」


 伏し目がちにミレイが告げると明らかにバツの悪い顔をして戒翔が謝罪する。


 「いえ、気になさらないで下さい。もう過ぎた事ですので…」


 「…キノには兄弟、姉妹と言うのはいるのか?」


 「いえ、肉親は私一人です。」


 「か、戒翔?何かする気か?」


 「する気もなにもするつもりだ。」


 戒翔の言葉に祐樹が嫌な予感を感じつつも一応聞くと憮然とした態度で戒翔は答える。


 「ギルドに登録が済み次第俺はこの宿の支援を視野に入れて動く。まずは従業員を集めなければならんな…。」


 戒翔の言葉にミレイは驚きを隠せない。


 「なぜ、見ず知らずの戒翔様はそこまで私達にして下さるのですか?」


 ミレイの言葉に戒翔は


 「理由は特にない。そんなに知りたければそこにいる悪友にでも聞くと良い。サラ、俺一人でも王城に向かっても問題ないだろ?」


 「それは…確かに姫様は戒翔殿を指名していましたから問題は無いかと…」


 その言葉に戒翔は


 「…祐樹、お前は今の手元の金で内装を弄って置け。今の店の雰囲気を明るくするための準備に飾り付けの為の調度品がいるだろうからな…。支払いの方は立て替えて置いてくれ。」


 「はぁ~、分かったよ。取り敢えず、この周辺の店で買い揃えれば良いのか?」


 「お前の美的感覚(センス)に任せる。」


 「りょーかい。」


 戒翔はそう言ってサラと一緒に宿を後にする。


 「…戒翔殿は何故あそこまであの親子にそこまで親身になられるのですか?」


 「…深い意味は無い。…が、あのままでは確実に彼女、娘のキノは孤児の仲間入りをしそうだったのでな…。俺も祐樹も元々は孤児院出身の子供(ガキ)だ。そこで俺達は出会い、昔から良くつるんで遊んでいてな?3つの時に出会っているから…かれこれ15年の付き合いだな…。」


 戒翔の言葉が予想外だったのかサラが呆気に取られていた。


 「…どうした?」


 「いえ、先程の言動や態度にその知的な印象が強くて、とても孤児院出身には…」


 「他の所がどうかは知らんが、孤児だという理由で虐めを受ける事があったのでな…馬鹿にされる事のない様に様々な事に手を出していたらいつの間にか今の現状だ。必要に応じてではなく…自身の安全や祐樹をそして…いや、この話はしまいにしよう。つまらんだけだろう。|(それに孤児院であのような(…)事をしていると誰にも言えんしな)」


 戒翔は空を見上げたと思えばそれ以降戒翔は自身と祐樹の事については喋ろうとせず、サラにこの国の事…情勢を軽く聞きながら王城を目指すのであった。


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