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魔女の娘の秘密  作者: みあ
本編
7/53

 フィーアには魔女の才能はない。だから母がフィーアに魔女の仕事や力について詳しく説明したことなど皆無と言っていい。

 でも魔女の仕事の一端程度なら、教わらずとも知っている。

 だから、幼なじみのマリーのように貴族や王族やなんかに夢や希望を抱けない。


 もちろんそれには蔑まれた過去の私情もたっぷり含まれている。でもそれ以外に、上流階級の醜さを見聞きしたことも理由に含まれる。

 病弱で滅多に姿を見せないと噂されるお姫さまが本当に病弱なのか、実のところフィーアは疑っていた。






 別に耳に入れるつもりはなくても、王さまがことさら可愛がる愛娘の話くらい辺鄙な場所に住んでいたフィーアでさえ知っている。

 このツァルトの国王陛下の愛娘――つまり王女さまは、下々に王妃殿下と呼ばれる方の娘ではない。三番目のお妃さまの娘で、王さまがその存在をひた隠しにしているのだそうだ。


 噂通りに本当に病弱であれば、どこかに静養に行っているのだろう。

 だけど、そうではない可能性もあるとフィーアは考えていた。


 田舎にさえ国王が娘を可愛がっていると知られているくらいだ。王女に王位継承権がないとしても、正妃である王妃がそれを面白くないと感じているとしたら、密やかに害そうとしても不思議ではない。


 それゆえに本物の王女が隠されているのならば、フィーアの身も安全か怪しい。国王が魔女との間に隠し子を作っていた事実は本物の王女以上に面白くないはずだ。


 その可能性がある以上、のこのこ王妃の前に姿を見せるなんて遠慮したい。どれだけ楽観視して、王妃が王女に好意を持っていると思っても、それがそのまんまフィーアに適用されるだなんてとても考えられない。


 疎まれてはいるが力のある魔女を敵に回すようなことはしないと思うのだが、嫌味の一つや二つはきっと言うはずだ。

 気が重くついでに足取りまで重くなってしまうフィーアと対照的に、アデレイドの歩みはどこまでも軽やかだ。


 一見、アデレイドと二人きりで歩いている。だけど、その背中に文句をつけたくても、王城ではどこに人の目や耳があるかわからない。言えない文句はたまるばかりだ。


 すべてを知っている王妃さま――つまり国王の正妃さまが、フィーアに好意を持って接してくれるとはどう考えても思えない。どれだけ楽観的に構えようと思っても、そうできないのがすでに習い性となっている。この先を考えると、鬱々としてくるだけだった。


(側室の娘ってだけでも十分忌々しいだろうに、その身代わりに出てきたのが隠し子でしかも魔女の娘って……ホントどうなるんだろ)

 つい漏れそうになるため息も、うっかり漏らすわけにはいかない。公爵家のご令嬢という味方を得ていても、魔女の娘なんて後ろ暗い身で隙を見せるわけにはいかないのだ。


 とはいえ、人気が少ないところを選んで通っているのか、二人が通るところにはいつまで経っても人の姿は見えない。アデレイドが道に迷ったのではないかと疑わしくなるくらい似たような場所を、何度も何度も通っている気がするのは気のせいだろうか。


 歩けば歩くほど帰りたい気持ちが募ってくる。もちろん朝までいた屋敷などでなく、帰りたいのはすでに懐かしく思える森の我が家だ。

 現実的に安全に城を出る方法も想像できなければ、着の身着のままで飛びだしても路銀さえないから不可能に近いだろうけど。


(母さんが帰ってきて、私がいないことに気づけばあるいは)

 あの母がやって来たらそれはそれで面倒くさい事態だろうけどとも思いつつ、フィーアが持てる希望はその辺りが一番現実的だった。


 魔女の母なら王城に侵入するのもきっと簡単だし、脱出についても同様だろう。娘の父親を名乗る国王陛下に物おじせずに文句をつけそうなところが難点だが、不敬罪だなどと言われても魔女にそんなことは関係あるまい。


 人の理を抜け出し、魔の力を扱うもの――それが魔女で、それゆえに恐れられ厭われている。それと同時にうまいこと使ってやろうというものが多いのも事実だが、だからと言って好意的に魔女を受け止めるものなんてフィーアの知る限り森のそばに住む純朴な町人くらいしかいない。


 母の力をありのまま受け入れ、特に頼るようなことをしない。おそらくはそれを気に入って、母はあの地に居を構えたのだろう。

 フィーアにとって居心地がいい場所もそこしかない。


 穏便にすべてが終わりますようにと心のうちで祈って、フィーアはとりあえず後ろ向きな思考から気をそらすことにした。

またしてもお久しぶりです。

あと一ヶ月で1話目の投稿から1年経とうとしている事実にちょっと衝撃を受けました。


次の話の目星をつけて半分くらい書きかけてから投稿する方針でやってます><

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