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キバナカタクリと野薔薇

作者: 朔海恋花
掲載日:2026/11/04


 異世界に転移させられてからどれほど経っただろうか。

 日記を書いたのが数ヶ月以上前だったので、こちらに来てから一年経ったのだろう。


 私は小さい頃から感情があまりないのかもしれない。いや、あるにはあるのだ。よくアニメやドラマで泣いたり、小説を読みながら泣くときだってある。でも現実のことで泣いたりするか、と言われたら否だ。もしかしたら感情がないのではなく、人(・)に(・)対(・)し(・)て(・)興(・)味(・)が(・)な(・)い(・)のだ。


 あれは幼稚園の卒園式のときだっただろうか。同じクラスだった子がみんなと離れるのが寂しくて泣いていた。その子はみんなに注目されていた。私は幼いながらにこういうときは泣いたほうがみんなに見てもらえると思ったのだろう。気付いたら嘘泣きをしていた。全然悲しくなんてなかった。というか何も思っていなかった。その後、当時の同級生に卒園式の思い出を聞くと私がすごく泣いていたことだけは覚えている、と話していた。複雑な気持ちだった。


 私はメンタルが人並みよりかは強い。強くなった理由はいじめ、だったのかもしれない。

 いじめ、と仰々しく言っているが、彼らにとっては単なるい(・)じ(・)り(・)に過ぎなかったのだろう。私はこれに対しても何も感じなかった。


 1度目は少年スポーツクラブでのことだった。1個年下の男子から蹴られたり、殴られたり、下手だと言って罵られたり。文章ではそれだけのことだが、今思い返すとこれが一番酷かった。このスポーツクラブは結局3年で辞めた。でも、3年間耐えたのだ。昔の自分を褒めてあげたい。


 2度目は塾でだった。この塾はスポーツクラブを辞める口実に使った。最初の2年は馴染めず、友達ができなかった。一瞬、仲良かった子はいたのだけれど次の年には塾を辞めていた。私は声が大きかった。大きかったというか、独り言が多かったというか。それが癪に障ったのだろう。当時の塾長に葉月さんがうるさいのでどうにかしてくれ、とそいつらが言ったのだ。そのせいで話し合いになってしまった。そいつらは私が悪いというように盛大に盛って話していた。でも、塾長は私の授業中の姿勢を見てくれていたから、私の肩を持ってくれたことで私は悪くないということになったので良かったのだけれど。そいつとは塾を卒業するまで仲直りできなかった。


 3度目は学校だった。これをいじめと言っていいのかわからないが、最近あだ名がいじめ扱いされているので恐らくいじめだったのだろう。私は同じクラスの男子から毎日のように、ブスと言われていた。今までに着けられたあだ名は進◯の巨人や超大◯巨人、奇行種、ドンキーなど、挙げたらキリがないかもしれない。


 これらのすべてを覚えているように、心の何処かでは根に持っているのだろう。

 今はそれに対して何も感じていない。むしろ、昔の自分の行動を思い出して吐き気がするぐらいだ。

 でも、その行動も孤独になりたくなくてやっていたのだ。

 私は孤独が嫌いだ。


 私だけ見てほしい。誰かにいじめられても、困難があっても、誰かが見ていてくれさえいればそれでいい。


 私は感情があまりない。ツボが深海のように深い。だからいつも愛想笑いをしている。でも、同じことをしている人を見て嫌悪感を感じる。同族嫌悪というやつだ。

 

 私は孤独だ⋯。孤独が大嫌いなのに、いつも孤独を感じる。


 だから私にキバナカタクリと野薔薇の花言葉ほど当てはまるものはないのだ。

 

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