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ダンジョンを魔改造してパチスロダンジョンに  作者: おこげ


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4

腹が鳴った。

石造りの広間に、自分の腹の音がやけに大きく響く。黒川悠真はゆっくりと上体を起こした。天井に埋め込まれた淡い光が、相変わらず一定の明るさで空間を照らしている。昼なのか夜なのかは分からない。ただ、眠くなれば寝て、目が覚めれば起きる。それだけの繰り返し。

だが腹は減る。

喉も渇く。

つまり、自分は死んではいない。

「……ほんとに、なんなんだよここ」

広間の隅に置かれた石台を見る。目が覚めたときからそこにあった、用途不明の台。装飾も紋様もない、ただの四角い塊に見える。

だが、空腹をごまかせるほど悠真は強くなかった。

ゆっくり近づき、そっと触れる。

冷たい。

次の瞬間、頭の奥がじわりと熱を持った。

言葉にならない感覚が流れ込む。意味ははっきりしない。ただ、「使える」という直感だけが残る。

石台の上に、ふっと湯気が立った。

置かれていたのは、硬そうなパンと、透き通った薄いスープ。

悠真は数秒それを見つめ、それから小さく笑った。

「ゲームかよ……」

恐る恐るパンを齧る。固い。味はほとんどない。それでも空腹の胃袋には十分だった。スープも同じ。薄い塩気があるだけ。それでも体に染みる。

二度目を試そうと石台に触れた瞬間、強い脱力感が襲った。膝がわずかに折れる。

「……あ、無理なやつだこれ」

何かを使っている。

体力か、別の何かかは分からないが、無限ではないらしい。

悠真は石台から離れ、広間の中央へ戻る。腹が満ちると、今度は落ち着かなさが込み上げてきた。

広い。 平ら。 無駄に整っている。

まるで作り物みたいだ、とふと思う。

だが、自分は何も分かっていない。この場所が何なのか、どうしてここにいるのか、誰が作ったのか。

ただ一つ分かるのは、触れた石がわずかに“応じる”こと。

悠真は床に手を置いた。

冷たい感触の奥に、微かな流れがある。鼓動のような、波のような、一定ではない揺らぎ。

目を閉じる。

なんとなく、ほんの少しだけ変えたいと思った。

床の一部を、わずかに沈ませるイメージ。

石が小さく軋む。

目を開けると、足元が数センチへこんでいた。

息が止まる。

「……は?」

もう一度触れる。縁を丸く整えることを思い描く。

石がじわりと滑らかに変わる。

同時に、頭が重くなる。

座り込み、荒く息を吐く。

「なんだよこれ……」

理解はできない。だが偶然ではないことだけは分かる。自分の意識で石が変わった。

広間を見渡す。

完璧に平らだった床。その一角に、不自然な凹み。

奇妙な達成感が胸に広がる。

怖さよりも、面白さのほうが勝っていた。

悠真は立ち上がる。

中央の床を、今度は少し持ち上げるイメージを送る。

低い振動。

石がせり上がる。

ほんのわずかな起伏が生まれる。

視線の高さが変わる。立つ位置で景色が違う。

理由はない。ただ、平坦なのが嫌だった。

息が荒くなる。体が重い。限界があるらしい。

それでも、止めようとは思わなかった。

通路へ向かう。

真っ直ぐ伸びた石の道。左右対称で、どこまでも単調。

壁に触れ、ほんの少しだけ角度をずらすことを思い描く。

石が静かに軋む。

通路が、わずかに曲がる。

ぱっと見では気づかない程度。それでも、確実に違う。

悠真は手を離し、しばらくその変化を見つめた。

自分は何をしているのか。

脱出を探すべきではないのか。

それでも、石に触れて形が変わる瞬間のほうが、なぜか強く心を掴む。

広間に戻り、新しくできた段差に腰を下ろす。

背中に冷たい石の感触。

ここが何なのかは分からない。

閉じ込められているのか、選ばれたのか、それともただの夢なのか。

ただ一つ確かなのは、この空間が自分に反応するということ。

悠真は目を閉じる。

次は、どこを触るか。

答えはまだない。

だが石は、確かに応じている。

その事実だけが、静かな熱を胸の奥に残していた。

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