メキシコのケーキ屋さんで「no comer(食べない)」と言ってしまった話
メキシコ旅行中、友人が「ケーキを食べたい」と言いだした。私は甘いものは好きだけれど、甘過ぎるものは苦手。色々な人から海外の甘過ぎるケーキの話を聞いていたので、ケーキを買う気はなかったけれど、友人の付き添いでケーキ屋さんに行った。
トレイとトングが置いてあって、選んだ品物をレジに持っていく方式。
これなら私がピッタリついている必要はないよね、と店内をウロウロしていた私をレジに行った友人が呼びにきた。なぜか会計してもらえない、と言う。
二人でレジに行くと、レジのお兄さんが友人にした説明を最初からやり直してくれた。
私も単語をいくつか覚えている程度でスペイン語が話せる訳じゃない。それでもレジのお兄さんの身振りを交えた話から「この店には喫茶室があって、会計済みのケーキを持っていって食べられる。持って帰るのか? それともここで食べていくのか?」と訊かれているらしいと察した。
最初から喫茶室に気づいていればもう少し話が早かったかもしれないけど、ちょっとわかりにくい場所にあったのよね。
で「テイクアウト」って言ったんだけど……通じない。
イギリス式に「take-away」と言ってみたけどダメ。
うーん、どうしたもんだろう? とレジのお兄さん共々頭を抱え込んだ。
ポク……ポク……ポク……ポク……あっ!
スペイン語で『食べる』(の原形)は『comer』だっ、と思い出した瞬間
「no comer!」と口走っていた。
そしてその一瞬後、私、今スペイン語で「いいえ、食べません」って言った? そういう意味になっちゃうよね? ケーキ屋さんでケーキを前にして「食べない!」って……。何を言っているんだ私は! と焦りまくる破目に。
でも、ちょっとの間ぽかんとしていたお兄さんが「aquí?」と尋ねてくれた。
『aquí』が『ここ』っていう意味なのは知ってる!
お兄さん、ナイスフォロー。『No comer aquí』なら文法無茶苦茶だけど『ここでは食べない』って意味になるよね?
「Sí! Sí! (そう! そう!)」
と頷くとお兄さんがテイクアウト用のお会計をして、ケーキを箱にいれてくれました。
ちなみにスペイン語で『持ち帰り』は『Para llevar』でした。「Para llevar, por favor(持ち帰りをお願いします)」って言えれば完璧だったんだけど。
勉強不足でごめんね、ケーキ屋のお兄さん。
この旅行の二~三年前に興味本位でNHKラジオのスペイン語講座を聴き始めたんだけど、文法のややこしさに一か月くらいで挫折してた。それでもちょっとは役に立ったってことかな。
スペイン語の動詞は主語によって形が変わる。つまり、「私が食べる」と「あなたが食べる」「我々が食べる」で「comer」という単語がそれぞれ「como」「 comes」「comemos」という風に変化する(だもので主語は省略される事が多い)とかいうので頭がパンクしたんだよね。英語の勉強だけでいっぱいいっぱいだわ、と。
「アキ」が「ここ」という意味だって知ったのはスペイン語講座じゃなくて、ハリー・ハリスン著の「ステンレス・スチール・ラット大統領に」にパライソ=アキ(ここは天国)という名前の惑星がでてきたからなんですが。




