第一話 打ち首になった
暇なので書いてみました。
面白そうだったらブクマよろです。(第一話だけどプロローグみたいなもんです,
プロローグだけど第一話みたいなもんです)
俺の名前は平良双葉。一応、俗にいう一流企業に勤める28歳だ。
入社して数年で社内ではそこそこの評価を受け、自分で言うのもなんだが部下からも慕われている、今の日本にしては上等な社会人ライフを送っていた。
はずなんだが、、、、ある日の朝、俺は異世界ファンタジーみたいな世界に召喚されてしまった。俺が死ぬほど嫌いな異世界に。
世の中に蔓延っているような、異世界転生、召喚系の小説や漫画を見るたびに
吐き気を催すレベルで嫌悪感を抱いている世界に、まさか俺が召喚されるなんて
思ってもいなかったのだ。
一応、休日は小説家として活動をしていた俺は、推理モノや恋愛ものなど。王道な作品を自己満足で書き上げ、それを投稿サイトにあげ、一定数のファンがつくほどには人気があったのだが。そんな中、同サイトのランキングは、大半が異世界ファンタジーが占めるという狂気。
テンプレートとなっている型に、少しオリジナリティを入れ込んだだけのモノを
堂々とアップロードし、それに大勢のファンが狂喜乱舞している姿。
人気小説家とか呼ばれてる異世界系の作家のサイン会で、中指を平気で建てられるほどには嫌っていた。
だがしかし、そんなことを言っていても仕方がない。今はこの事実を甘んじて受け入れよう。
召喚を行ったのは王都クレセールとかいう国だった。
俺の顔を見るなり「成功です!」ってすっげぇ喜んでた。
どうやら、クレセールでは異世界(俺が居た世界)から召喚によって、世界を救ってもらう為の勇者を集める儀式を行っていたそう。
俺含め4人の勇者たちを集めて、この国を蝕もうとしている奴らを討伐してもらいたいと。
王様が言うには、
・この世界にはいくつか主要都市があり、その中で最も力があるのがクレセールである。
・この世界には魔王と呼ばれる魔族の長がおり、それを討伐してほしい。
・魔王はクレセールを含めた国々を手中に入れ込もうとしている。
・クレセールは何とか自国の民を護っているが、他国は厳しい現状にある。
・王国の力も貸すので、何とかしてくれないか
とのこと。なんとも自己中心的な奴らだ。
俺らは突然、なんの説明もナシにここに召喚されたのにも関わらず、この国を救ってくれだと。
まぁしかし、魔王を倒さなければ、元の世界に帰ることはできないとか言い出したもんだから、最早脅しだろ、と思いつつ話を聞くことにした。
しかしながら、召喚された俺らには特別な力が付与されているようで、
王様曰く、その能力があれば魔族にも十分対応できるだろう、とのこと。
正直、そんな力を付与できるのであれば自分たちで解決してもらいたいものだ。
何でこんなに俺が非協力的なのか。
それは、そんな危機的な状況にも関わらず、これでもかという程に
装飾されつくした王宮の内装。なんだよあの壁についてる宝石。
高山〇店でも見たことねぇよ。
それに肥えにこえた王様の体型。生活習慣病まっしぐら、下手したら真っ最中だ。
俺らの周りに立ってる兵士たちも、まともな戦闘経験もないような。
ただボーっと立ち呆けている姿に欠伸が出そうだった。
まぁ、異世界召喚あるあるの非協力的な召喚者、って立ち位置になるのはゴメンだからな。
今は静かに首を縦に振るだけが正解だ。
そんな乗り気じゃない俺をよそ眼に、俺以外の召喚者である3人は
さっそく仲良さげにコミュニティを構築し始めていた。
どうやら、この状況を心の底から楽しんでいるようだったが、
話を聞くに、コイツ等はファンタジーの世界に憧れがあったらしく、
自分たちが当事者になれたことが大変嬉しかったそうだ。
歳は下から順に19が二人に21が一人。そら思考に乖離があったって仕方ない。
まだ夢を見る若者と、現実を嫌というほど叩きつけられたリーマンじゃ、
格差ってもんがあり過ぎるからな。
そんなことを考えていると、さっそく王宮の兵士から俺らに声がかかった。
何やら、俺らに付与されているであろう特別な力。
それを測るための儀式を執り行うそうだ。
それを聞いてパッと思いついたのは、よく見る召喚モノだった。
おんなじことを考えたのか、他の3人も目をキラキラ輝かせていた。
鉄板なもので言えば、このステータス鑑定で召喚者あるあるの最強能力が発覚して、無双状態ハーレムを構築するまでがテンプレ展開だしな。
まぁ最初からぶっ壊れ能力持ってたって、何が楽しいのかさっぱりなんだが。
ド〇クエにポ〇モン世代の俺からすれば、道中でコツコツ努力を積み重ねてこその力に意味があると思うんだが、最近の若い子はより楽な方がいいのかな。
そうして始まった鑑定では、俺以外の3人が先に能力やステータスが判明した。
3人共通して職業は「勇者」。ステータスは予想通り、
平均的な王国騎士の5倍は優にあるらしく、即超人認定されてたよ。
能力に関しても、鑑定士が言うにはありえないレベルのものらしく、
本来、一人の魔術師が一つ持つ属性を複数所持していたり、
スキルに関しても、国が誇る大魔術師を優に超えるような威力の魔法を所持していた。
爆炎操作だの、環境精霊の使役だの、身体能力のバフスキルだの。
名前だけでも分かる、多分強いんだろうな。
それらを聞いて大興奮する3人は、一瞬でその距離を縮めていた。
鑑定士も目をキラキラさせていて、人生でこんなもの初めて見たとのこと。
しかし、目の前で俺の大っ嫌いなチートが発覚する様子は、どんな拷問より効く。
そんな俺の心情も理解しないまま、召喚者の一人である男は俺に対して、
お兄さんはどんな能力が判明するんだろうね!、と。
幼子のようなキラキラした笑顔をこちらに振り舞いた。
彼の名前は四宮ナギというらしい。見た目から分かるほどの可愛い系の青年で、
なんだか頭を撫でたくなるような雰囲気を醸し出している。
あとの二人は釘宮カケルに戌亥シュウというらしく、
どちらも見るからに、な好青年であった。
残念なことに、俺を除いた3人は系統は違えどイケメン揃い。
よくこんなオッサンにそんな顔を向けられるな。
一人だけ乗り気じゃない俺は胸が痛くなる。
そんなこんなで俺の番になり、てくてくと鑑定士の元へ向かうと
満面の笑みで、このような機会に立ち会うことができ光栄です、勇者様。と
告げる鑑定士に対して苦笑いを浮かべる。
ステータス測定は、床に刻まれた魔法陣の上に立ち、鑑定士が詠唱を唱えると
目の前にステータスが表示される仕組みだ。
平良双葉【職業】~勇者~ 173㎝ 体重68kg 年齢28歳
プライバシーの侵害だろ。まぁジムに行ってた甲斐があった。
そして発覚するステータス値。何だかんだ言いつつ、俺も多少は期待してた
しかしこれが悪かった。
ステータス値は王国騎士の2倍程度、他の3人に比べると
どうしても見劣りするような結果になってしまった。とはいえ、王国騎士も
戦闘のエリートであり、そいつらの2倍のステータスとなると
それなりのモノではあるんじゃないか。あからさまに残念そうな顔をする
鑑定士に対し、少しくらい遠慮してくれてもいいんじゃないのか、と思ったのもつかの間。
スキルが表示されるやいなや、それまでにこやかな表情を浮かべていた
鑑定士の彼女の表情は一変し、真っ青な表情を浮かべ、
3秒後には目に大粒の涙を浮かべていた。
一体何なんだ。情緒不安定なのか?と鑑定士の見ているステータスを覗いてみることにした。
そこに表示されたスキルに、俺は顎が外れそうになってしまった。
固有スキル【 】所持魔法【 】総スキル使用【0回】
この瞬間、俺は理解した。自分の立場、そして彼女の涙のワケを。
俺は勇者ではない。
つまりは、勇者に紛れ込んで召喚されてしまった一般人だってわけ。
そのスキルが判明したと同時に、背後に怒号が響き渡った。
目を向けると、そこには顔を真っ赤、どころかドス黒い色に染め上げた国王の姿があった。
こちらにズンズンと歩いてくると、俺の目の前で止まり、
騎士に対してたった一言
「この男は勇者ではない、我々を陥れようとしている魔族だ」
は?
「よってこの男の処刑を実行する」
ちょっと待ってくれ。突然現れて処刑宣言って、こりゃたまげた。
いや分からんでもない、召喚されたとき。あれだけ喜んでいたってことは、
それなりの犠牲の上に、俺らの召喚は成り立っていたってことだろう。
つまり、それだけのコストを支払った代償がただの一般人である、となれば
これだけブチ切れるのも納得だ。
いやでも処刑は納得いかないんですけど!?
処刑宣告と同時に、3人の勇者たちが俺の元に駆け寄り、王に対して抗議を行う。
その中でも人一倍声をあげていたのが、犬系男子、四宮ナギであった。
国王に対しても毅然とした態度で、さっきまでの柔らかい雰囲気とは裏腹に、
目を赤くし、俺の処刑を取り消すよう声を荒げている。
もう嫁にしたいよナギきゅん。
しかし、王の対応は変わらないらしい。俺の処刑は確定事項。
こうゆうのって、大体次の日の朝とか、日を跨いで行うもんだと思っていたんだが。
そこで逃走ルートに入るのが鉄板じゃねぇのかよ。
今回はすぐさま執り行うらしく、俺の手を騎士団が拘束し、玉座の階段の下で
王を見上げる形で正座させられてしまった。
俺の後方では、数人の騎士に押さえつけられている勇者たちが王に対して
声をあげているが、おそらくコイツの耳にそれは届いていないだろう。
淡々と、今テキトーに考えたであろう罪状を述べ、俺を蔑んだ目で見下す王を
ぶすくれた態度で見つめてみる。かわいい顔や、懇願する顔も試したが、
コイツには人の心がないらしい。
最後に、「よって、処刑を行う。」と告げると、
横に立っていた騎士二人が、俺の首をクロスするように鋭利な槍を入れ込んだ。
ヒィッ!!思ってたよりこえぇってコレ!!
「最後に、何か言い残すことはあるか」と、
王が謎の優しさを発揮させる。
なんとも、勇者の、、、いや違ったわ。召喚者の最期にしては呆気なさすぎるモノだ。
俺だって、少しは期待していたんだ。
吐くほど嫌いな世界観とは言えど、非現実的な世界は、
普段の多忙な社会人ライフを忘れることができると、そう思っていたんだが。
非現実は、現実で。現実はそう甘くはなかった。
これが俺の末路。、、、、まぁ仕方がない。
社会だって、実力がない奴はすぐに無能扱い。それがこっちでも
同じだったってだけのお話だ。
別に上司に対して反発するわけもなく、反省し、リトライを繰り返す。
それが社会人としての常識だ。
だが、ここは異世界だ。
上司がいるわけでも、守るべき部下が、家族がいるわけでもない。
理不尽すぎる最期に、俺の人生の最期に。
こんなんで終わるのはちげぇよな。
だから俺は、大きく息を吸い。玉座に向けて唾を吐いて、
「死んどけ、豚野郎」
と、満面の笑みで一言告げた。
同時に、目の前がブラックアウトする。
打ち首になると、数秒間は意識があると聞いたことがあったんだけど。
あぁ、一瞬でよかった。痛くもねぇし。
でもナギきゅんにはキタねぇモン見せちまった。
後の二人にも、わりぃ事しちまった。だが、まぁ。
これでいい。嫌々働かされるのも御免だしな。
じゃ、さいなら。勇者たち。
後は任したよ。
隠し固有スキル【還りし者】を使用します。
、、、、失敗しました。
隠し固有スキルを進化させます。
成功しました。
隠し固有スキル【還りし者】は、固有スキル【復活者】に進化しました。
固有スキル【復活者】を使用します。
、、、、、失敗しました。
固有スキルを進化させます。
成功しました。
【復活者】の進化条件である、心肺停止、及び死亡が確認されました。
よって、【復活者】を進化させます。
、、、、、成功しました。
【復活者】はユニークスキル、【不死者】に進化しました。
心肺停止を確認、よって【不死者】を使用します。
、、、、、成功しました。
使用者の意識がないため、使用者を安全な場所へ転送します。
意識が戻り次第、スキル使用ログを表示します。
それでは、行ってらっしゃいませ。
不死者、平良双葉様。
Hutaba Taira
固有スキル【不死者】所持魔法【 】総スキル使用【1回】