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(三日目) 3-2:暗澹

 ところで私たちは常日頃から魔物と戦っているけど、そもそも魔物と戦えるのは私たちのような魔法少女しかいない。


 なぜか魔力は子供にしか定着しないから。定着自体は性別に関係なく起こるのだけど……男の子は魔力の操作が上手くできないことが多い。

 そして魔力があるかないかだと、ある方が魔物に比較的襲われやすいとされている。優先されて認識される、といった感じ。

 そして魔力が定着する状況というのは基本的に、魔物と対峙しているという状況に他ならない。

 定着したてのこの時、少女は感覚的な操作で魔力弾くらいは大抵撃てるけど、少年はほぼ対抗手段がないらしい。

 このことから生存率的な意味で、いわゆる魔法少年はいないこともないけど激レアだ。

 まぁとはいえ定着したてのころに使える魔力弾とかなんか豆鉄砲みたいなもので、例えるならエアガン装備の少女と素手の少年、ぐらいの違いでしかない。

 それで凶悪な暴れ熊みたいなのと対峙してどっちが多く生き残れるかって言われたら、少女はとっさの目眩しが出来るだけまだマシ、程度でしかないのだけども。


 それで、運よく生き残ったとしても少年は細かい魔力操作がほぼできないなら、何ができるようになるのかって言えば、魔力関係のことを記憶できるようになるといったことくらい。

 まぁ一応、生き残り続ければ固有魔法を持つこともある。ちなみにそれは必ず内燃系らしい。


 私の知っている魔法少年は『高速熟考』という内燃系の固有魔法を持っていて、これは思考能力にブーストが掛かって更に考えている間は全然時間が経たないというもの。

 友人の『察知』も同じく内燃系だけど、友人はこっちのが良かったと常日頃から言っている。友人は学校の成績悪いからね……。


 そう。今向かっている協会には、その魔法少年がいる。というより、その人が協会の代表だ。正確には元魔法少年。魔法使いといったほうがいいかもしれない。


 三敷(みしき) (すみれ)という名前で、御年30歳な『熟考』の魔法使い。

 女の子みたいな名前で、実際可愛らしい顔もしているのだけど本人は気にしてて前髪を伸ばして目元を隠してたりする。

 あと本人はまだ若いつもりでいるみたいだけど、ぴちぴちJCの私たちからすればもうおじさんみたいなものなので心の中では菫おじさんと呼んでいる。

 以前うっかり伝わったときなんだか悲しい顔をされたので直接は言わないことにしているけど。


 私たちは今から、その元魔法少年魔法使いおじさんに会いにいくところなのだ。





「そろそろ着きそうだから連絡しよっかなぁ」



(きこえますか……きこえますか……私は今、あなたの頭の中に直接語りかけています)



(毎回そのフレーズから始めるのうざいからやめてって言ったよね?)

(ヒエッ……)





 タイミング良く、思った瞬間にちょうど連絡が来た。相変わらず人をおちょくるようなことを伝えてくる、この人が『伝達』の魔法少女。

 友人はノリがいいので(こいつ……直接脳内に!?)とか(チキンください)とか毎回返してるらしい。優しいね。

 まぁ、この人もこの人で無駄に強いメンタルしててへこたれないので、別にこれくらいはちょっとした挨拶みたいなものでしかない。

 ……実際に面と向かって話すときは猫を被ってもう少し柔らかく喋れるのだけど、脳内でやり取りすると感情がそのまま乗ってしまうのでやはり少し刺々しくなってしまう。


(で、なんの用?)

(え、あ、いや『察知』さんからこっちに来られると聞いたので……)


 なんか一瞬だけ謎にイラッとしたが、友人は協会本部に行くのは初めてだし多分友人から連絡したのだろう。

 あと、地味に質問に答えてない。まぁこの人は具体的に言わないと伝わらないタイプの人間なので仕方ないか……。


(挨拶したかったってわけじゃないよね? わざわざ連絡してきた要件は?)

(あ、はい。別に挨拶がしたかったわけじゃないです)

(……)


 そう、ここでイラついたら負けなんだ。


(えっと。こっちに来られる目的はスミレさんと面会したいということですよね?)

(そうだけど?)


 というか年下に常に敬語を使ってるから舐められるのでは?といつも思う。

 この人は一応高校を卒業したての社会人だったりするのだけど……。大人なのは正直、見た目だけ。


(スミレさんは『比重』さんとの打ち合わせが長引きそうで、本日対応できるかわからないのですが……)




 ……ああ、あの人か。


 『比重』の魔法少女。


 彼女はかつてのエース級と呼ばれたとても強い魔法少女だった。けど現在は引退している。

 周囲の重さを操るという非常に強力な固有魔法を持っていて、戦闘力という面では最強格だったのだけど。


 彼女はもう引退してて、今は協会本部の天井で暮らしている。

 これは天井裏にという意味ではなく、逆さまになって文字通り天井で暮らしているのだ。

 そう、彼女は大規模な戦闘で魔力変換を使いすぎて魔力核を壊し、重さを全て失ってしまった。

 空気より軽くなってしまった彼女はまるで重力が反転したかのような状態になっている。

 いや、空気より軽いって生物学的にどうなんだっていうのは少し思うけど、ここでの重さは概念的なもの?らしい。

 よくわからないけど、”空気より軽い”という事実以外に身体は何も問題無いそうだ。


 まぁ……何も問題無いといっても彼女は一生外に出ることができなくなってしまったのだけど……。



 彼女は魔法少女としての戦闘歴が長かったのもあり引退後はアドバイザーとして協会本部に勤めているので、行けば顔を合わせることにはなるだろう。

 なんだか魔法少女の戦いの成れの果てを見せつけられているようで、少し苦手意識があるのだけど……。


 ともかくそんな彼女が、文字通り協会の頭脳である菫おじさんが話し合っているということは、きっと大事な内容なのだろうけど……。




()()()()()()()


(……!)

(調べて欲しいことがあるって伝えて)

(わかりました)




 これまでの実績で友人の魔法はかなり高く評価されている。こういえば少しくらい話はできるだろう。

 ……というか友人はさっきまでこの人とやり取りしてたはずなのに、なんでこの件は伝わってないんだ?

 たぶんなんか、挨拶からの流れで冗談のやり取りしてるうちに、楽しくなってしまって忘れてしまった、とかそんな気がする。

 まぁそういう仕方無いところもあるのが友人だからそこら辺は私がフォローしていけばいいだろう。

 この人もこの人で、多分友人とのやり取りを終えたあとで菫さんが多忙なことに気づいて私に連絡してきたのだろうし。


 と、ふと(魔法通信で先に菫おじさんに連絡しとけば良かったかな?)とか思ったりしたけど、まぁもう近くまで来てしまったし直接会って話した方が良さそうなので気にせず向かうことにする。

 それに魔法通信は便利だけど、できるなら無駄に使ってこの人を消耗させることは控えておきたいだろう。

 私以外はバンバン使っているから無駄かもしれないけど、せめて私くらいは節約しても良いんじゃないか。




 とりあえず足を進めて協会本部に急ぐことにしようか。






・・・

次回『薄命』





>『伝達』の魔法少女

 魔法通信の中継サーバーさん。キャパオーバーでたまに鯖落ちする。実年齢18歳。現役の魔法少女の中では最年長の部類。ちょっと年齢を気にしている。

 協会で情報収集と集められた情報をレポートにまとめて他の人に丸投げするのが仕事。

 人見知りでネガティブだけど低反発メンタル。ボコられて凹んでも秒で回復する。でもボコられた事実は忘れない。

 陰キャ特有の距離感をしており親密度が低い人と高い人との差が激しく、協会のおじさんにはめっちゃボディタッチしてる。

 好きなものはネットサーフィンと家族。嫌いなものは家族を馬鹿にする人と、魔物。

 本名は黄瀬(きせ) 彩芽(あやめ)。陰キャな為よほどのことが無い限り名乗らないので、親しい人以外には魔法名で呼ばれてたりする。

 固有魔法は『情報伝達』で、過去に直接会って話した人と、映像を流すような感じで情報のやり取りができる。

 これを応用して、別の人からの情報を右から左にまた別の人に流す、といった形で魔法通信網を確立させた。

 例えるなら脳内音声チャットルーム。情報が飛んできたら脳内イメージにくっつけて送り主と宛先の人にそのまま流す。

 最初はかなり大変だったものの今では無意識に情報の振り分けができて、ついには寝てても可能となり24時間営業と化す。

 同時接続も10人くらいまでなら対処可能。普通に頭おかしいレベルの作業量だけど、なんかやったらできてしまったのでこれが当たり前になってしまったらしい。

 仕組み的に当然ながらやり取りされる情報を覗き見することも可能で、たまに検閲もしている。

 容姿は色々と発育が良いポニテメガネ。ボンッ、キュッ……?、ボンッな感じの体型。ムチムチしてて若干だらしない。不眠気味で目元の隈が濃い目。

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