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(未来の栞) X-4:未来


・・・




 おじさんだよ!


 なんか色々あって萌香ちゃんの家に居候してたよ!

 あと名前も『察知』ちゃんって呼んでたら名前で呼べって怒られたから名前で呼んでるよ!


 まぁ魔法名で呼んでたら、そのうち魔法が消えたら意味わかんなくなるからね。


 決して圧に負けたわけじゃないぞ!



 いやぁ、でもあれだよね。

 今のおじさん、自力でやれることがあんまり無いから色々この子にお世話になっちゃってたけど。

 なんかこう、身も心もニートと化し始めてるというか……ダメ人間になってる気がする。


 なんだろうなぁ。

 せっかくの綺麗なエンディングを、台無しにしちゃってないかなぁ。


 晩節を汚しまくってる気がしてならないんだよね。おじさん汚れちゃった……。



 もうね、変なイベントもいっぱいあって、おじさんの尊厳はもうボロボロだよ。

 尊厳? なにそれそんなのあったっけ、みたいな様相を呈してるよ。

 かなしいなぁ(諸行無常)



 そもそもさ、女子中学生と一緒に暮らすのってやっぱやばいでしょ……。

 おじさんってば、おじさんなんだよ?

 中身男だって言ってるのに何この子。こわい。




 お風呂で上手く身体洗えなくてまごまごしてたら突撃してくるし。


 服着れなくてまごまごしてたら着せ替え人形にしてくるし。


 床で寝ようとしてたらベッドに引きずり込んでくるし。


 ご飯食べるのに手間取ってたらあーんしてくるし。




 なんなのだこれは、どうすればいいのだ!

 今のおじさんはクソザコだから問答無用で抵抗不可能なんだが! 誰か助けてくれ!




 ……。


 でも、まあ……。嫌かって言われたら、そんな嫌ではないんだけど……。



 申し訳ないというか、恥ずかしいというか、でもなんか変な快感みたいな、

 可愛い女の子にお風呂で身体中をまさぐられたりとか、

 手ずからパンツを穿かせてもらってたときなんか、火照って、こう……、

 パンツに関しては最終的にめんどくなったのかノーパン放置されるようになったけど、

 それはそれで、ノーパンでスカートだと、ふとした拍子に見られちゃうかもって思ったり……、




 ……い、いや、いやいや! ダメだダメだ!

 色んな意味でダメな人間になりかけてる! 正気に戻れ! 扉閉まれ!!




 ああ、このままじゃおじさん、春によく出るタイプのおじさんになっちゃうよ……。


 私はノーマル。そう、ノーマルなんだ。だれがなんと言おうとノーマルなんだ。


 一般性癖の擬人化みたいな存在。それがこの私、おじさんなのだから。

 幽霊みたいだけどノーマルタイプでもあるんだ。ゴーストノーマルの複合タイプ。あれ、普通に強くない?


 なんか全体的にわけが分からなくなってきたけど気にしてはいけない。ノーマルってなんだよ(哲学)





 というかね、そうだよ。


 そもそもおじさんが女子中学生の家に居座っていること自体がおかしいんだ。

 だからおかしなことになる。決しておじさんそのものがおかしいわけではないはずだ。








 そういうわけで。おじさん。


 家出してました。








 いやそもそもおじさんの家じゃないんだけどさ。

 おじさんはこの、自堕落な楽園から脱獄するタイミングをずっと計ってて、ついにやったのだ。



 やったぜ。自由だー!(拳突き上げ)









 まあ、過去形なんですけどね。

 半日も持たなかったんだよ。だれか笑ってくれ。



「シテ……コロシテ……」

「なんかころしてって言ってるけど、灯ちゃんどうする?」

「死刑」

「ゆるして」


 羽交い締めにされてたらいきなり殺されそうになった件。許し亭ゆるして。


 ていうかこの子の目、なんかたまにマジなんだよ! 実際コワイ!

 最近すこぶるおじさんへの当たりがきつい気がするし!


 なんでや! おじさんが何をしたっていうんだ!

 何もしてないだろ! いい加減にしろ!



「ホントにこの野良猫は……決意を新たにした途端にこれだもんな……」

「正直すまんかった」


「……なんだろう。今ならこの子、ひっぱたいても許される気がする」

「死刑」

「だめだよ死刑は。百合ちゃんには全力で生き恥を晒してもらわないと」

「じゃあ、恥ずかし刑に処そう」

「それはあり」



 ねぇねぇ。おじさん、君らよりめっちゃ年上なんだが?


 ちょっと扱いが雑過ぎない? おじさん泣くよ?

 最近歳のせいか涙腺が緩くなってるから秒で泣けるよ?



「うーん……センサーならほんの少しわかるようになってきたけど相変わらず見えないなぁ。それに『熱気』のセンサーも感度悪くなってきてるし、一進一退って感じ」

「ん、でも着実に認識阻害が薄れてきてるかな」

「というかペース遅すぎじゃないの?」

「私の勘だとあと1、2年くらいって感じ? ま、気長にやろうよ」


 あ、そうなんだ。思ってたより早いな……もうちょっと心の準備が欲しいんだけど。

 ぶっちゃけ今の状況って、ちゃんと認識されてないから耐えられてるっていうのが少しあって。

 素の状態だと色んな意味でやっていけるのかちょっと自信がないというかなんというか。


 やれるのか、おい!って言われたら咄嗟に「モイスチャーミルク配合」って言っちゃいそう。


 意味が分からない?

 大丈夫、おじさんもよく分かってない。



「とりあえずこれ、お兄さんたちのところに連行しよっか」

「いいね、恭さんにナデナデの刑を執行してもらおう」

「ヤメロォ!」

「ん? 嫌なの?」




「え、あ、いやじゃ……ないけど……」




「……この表情で男だって言い張るのはちょっと無理があるでしょ」








・・・








──ごめんね。


 いきなりで申し訳ないけど、私はずっと君に謝りたかったんだ。

 私の代わりに、世界の犠牲になったって聞いてから。ずっと。


 だから君が協会に来るって聞いたとき、居ても立っても居られなくなっちゃった。

 あの子たちやあやめちゃんたちに少し無理言って、君と一対一にしてもらっちゃった。


 私も君のことは見えないし、声も聞けない。

 だからこれは私の一方的な謝罪。懺悔なんだ。



 ……ごめん。少しの間だけ、付き合ってね。



 私はさ、みんなが幸せになればって思ってずっと頑張ってきたんだ。

 辛いこともいっぱいあったし、泥水も何度だって啜った。


 私は、誰よりも力があった。

 だから頑張れば頑張るほど、結果もついてきた。

 自分の思い通りに進んでると、手ごたえを感じた。



 勘違いしてたんだ。女神様だなんて言われるようになって。


 私は単なる、神様気取りの子供でしかなかった。



 全部が上手くいっているように見えてたけど。

 見えてないところで、隠されたところで、私のミスは積み重なってた。


 もっと上手くやれたのに。

 そんなこと、私には過去を変える力なんかないから、あとから言っても意味ないのだけど。



 結局のところ、私は失敗した。

 最高のハッピーエンドを作るつもりだったのに、バッドエンドになっちゃった。



 それどころかたぶん、私は()()()()()になっちゃってた。

 本当に、ごめんなさい。



 魔力を持たないものは魔力関係の記憶を保持できない。

 これはずっと言われてる私たちの常識だけど。


 死んだはずの魔法少女の記憶はどうなるのか。




 あの人は、ほとんど何も覚えてなかったよ。死ぬ前までのことも。死んでる間のことも。

 覚えのない罪の意識と、理由のない思いだけを残して、生き返った。


 罪って言っても、私は私のことに関してはずっと前から許してるから別にいい。

 そもそも他のもみんなが覚えてないのだから、それも文字通り無かったことになってるのだけど。




 ()()()()()()()()()()




 それはつまり、そういうことなんじゃないかな。


 最低だよ。ほんとこの世界って、救いがないよね。




 でもね。そんな世界を、君は完膚なきまでに救ってみせた。本当にすごい。

 私にできなかった幸せな結末を、見事に作ったんだ。



 みんなが幸せになる、問答無用のハッピーエンド。



 だから、君も幸せにならなきゃ、そんなの嘘だよ。

 君にだって幸せになる権利はある。

 いや、幸せになる権利が無い人なんて、この世界に存在しないんだ。



 君が自分のことを認められないってのは、なんとなくわかる。


 だけど、君が作ったエンディングは、信じていい。信じなきゃいけない。

 それさえ忘れなければ、私たちが幸せになったように、君もきっと幸せになれる。





 ごめんね。そして、ありがとう。


 みんなの未来を作ってくれて、ありがとう。


 生きててくれて、本当にありがとう。





 最後の最後に、もう一回だけ、神様気取りをさせてね。



 私は幸せな『未来』に蘇った、『幸運』のつばめ。



 幸せを運ぶ、勝利の女神。








 勝利したあなたの未来の行く末に、どうか幸多からんことを。








・・・








 こんな未来、あってもいいのかなぁ。



 いまだに迷う。『私』みたいな異物がこの中にいてもいいのか。








「ゆっぴー!」


 彼女があの頃みたいに呼び掛けてくることも。




「幽霊さん幽霊さん、おねえちゃんって呼んでもいいですか?」


 妹があの頃みたいに慕ってきてくれることも。




「何してんだ、ほら行くぞ」


 少年が、あの頃みたいに待っていてくれることも。




 全部、全部、叶うはずがなかった未来。

 『私』のポッケにはちょっと大きすぎる未来。


 だけど確かに目の前にある。どこにも消えたりしない、ありきたりな幸せ。


 何の変哲もない、未来が、続いている。




「……行こっか、百合ちゃん」







 みんなが、『未来』の手を引いて、歩いていく。



 きっと、そんな日常がずっと続くのだろう。信じてもいいのかな。



 信じるのはまだ怖いけど。少しずつ、進んでいこう。





 『私』も未来に向かって歩くんだ。


 私はここにいる。エンディングが終わっても、変わらずここに。











 待たせてごめんね、いま行くよ!







・・・

 未来の終わり。そして始まり。


 次回『余談』(一週間後更新)

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