(未来の栞) X-2:親友
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最近、私には変わった友達ができた。
といっても、目に見えないし、声も聞こえない。
何言ってるんだって言われそうだけど、でも確かにいる。
まあ要するに、幽霊だよね。
うーん、幽霊って本当にいたんだなぁ……。
私は霊感がないんだけど、霊感少女のもにかちゃんに紹介してもらったんだ。
最高に、不思議で貴重で楽しい経験してるって思うね!
「いやぁ、もにかちゃんってすごいよねぇ」
「またあだ名変わってるけど、いや誰だよ、もにかって。もはや別人だろ」
「?」
元の名前に近いから我ながらわかりやすい方だと思うんだけど。わかりにくいかな?
今日は友達みんなで遊ぶ予定だ。
もにかちゃんと、ありすちゃん……もにかちゃんの友達と、幽霊な、ゆっぴー。
ここにせかちゅーも加わるから、けっこう大所帯だね。
せかちゅーは私たちより年下の、いい子で可愛いお姫様で、大切なお友達。
ちょっとだけ家が離れてるから、いまは恭くんと迎えに行くところなんだ。
最近元気なかったけど、友達が増えてからすごく楽しそうでほんとよかった。
そうそう、幽霊なお友達にはまだ名前を教えてもらえてないんだよね。
とりあえず幽霊だからゆっぴーって呼ぶことにして、いつか教えてもらったらまた考えるつもりだけどもさ。
でも本人はこの呼び方をとっても気に入っているみたい。私も結構しっくりきてる。
なんていうか、いんすぴれーしょん、みたいなのがビビッとね。だから教えてもらえるまでは、しばらくゆっぴーのままでいいかもなー。
なんか最初そうやって呼んだ時、ものすごいリアクションで喜んでたらしいし。
もにかちゃんはオロオロ戸惑ってたけど、うーん、一体どんな反応だったんだろ。
私も見てみたかったな。
あと、実のところゆっぴーって本当は幽霊じゃないらしい。
いつかそのうち現実に現れて私たちとおんなじように過ごせるようになるんだそう。
幽霊じゃないならゆっぴーって一体なんなんだろう。不思議だな。
でもまぁ、そうなったらもっと色々なことが一緒にできるね。
うん、すんごく楽しみ!
「いやぁ、楽しみだよねっ!」
「まぁな」
「リアクションが、うっすーい!!」
「いって、叩くんじゃねぇよ」
パシンっと恭くんの背中を叩く。
あー、ほんと平和だなぁ。なんかこう、平和が一番とはよくいうけどさ。
こんな平和な日常を過ごせていることを、たまにすごく不思議に感じたりする。
当たり前のことが、本当は当たり前じゃない、みたいな。意味わかんないけど。
なんだろね、私も恭くんみたいに中二病?にかかっちゃったのかな?
ずっと気になってたのに何かもわからないまま見つからなかった探し物も、いつの間にか気にならなくなったし。
自分のことながらよくわかんないなぁ。まぁいっか。
「あ、恭おにいさん。鈴華さん」
お、せかちゅー玄関で待っててくれてた。ほんといい子だね。
とてとてと駆け寄ってくるお姫様に、思いっきりぎゅっとハグしてあげる。
「うぐ」
「おい鈴華、埋もれてるぞ」
「ん? あ、ごめんごめん」
解放してあげたら、ちょっぴり眉を釣り上げたせかちゅーに胸を軽くはたかれた。
可愛い。
もっかいハグしようと両手を広げたらササッと恭くんの後ろに隠れちゃった。
可愛い。
「アホなことしてないで早く駅前に行くぞ」
「えー、まだ早くない? せかちゅーでもっと遊びたい」
「早くねえよ。お前の時間感覚が遅すぎるんだよ」
「私で遊ばないでください……」
今から向かったら、着くころには大体10分前くらいかな。
あと2、3セットくらいは戯れられただろうけど、しょうがないかー。
「うーん。名残惜しいけど、行こっかー」
「いや名残惜しいとかまだ遊ぶ本番前だぞ。雪花いじるのはまたの機会にしろよ」
「またの機会でもいじらないでください……」
とかいいつつ、私たちが歩き出したら苦笑しながらおずおず近寄ってくる。
なんだこの可愛い生き物は……おそろしい子……。
あ、離れてかないで。ごめん、ごめんて。
駅前には最近できた友達が二人いて。あと見えないけどもう一人いるはず。
「やっほー」
「やっほー」
もにかちゃんがノリ良くやまびこを返してくれた。この子もいい子だ。
となりのありすちゃんもふんわりと笑っている。とっても落ち着きがあって優雅な感じ。
うーん、せかちゅーもそうだけど、やっぱお姫様みたいな美少女は目の保養になるねぇ。
「ん……? なんか疲れてるのか?」
「あー……恭さんも察しがいいね。でも大丈夫、うん」
「えっとね、私たち今度お泊まり会するんだ。それでちょっとお話が長くなっちゃったんだよー」
「言っても言わなくても地獄なのはわかってたけど、苦しい戦いだった……」
「萌ちゃん?」
「なんでもないです」
私にはよくわからなかったけど、何かあったらしい。
でもそんな、喧嘩とかではなさそう。相変わらず仲が良さそうだし。
すごく距離が近くて、わかり合ってるこの感じ。なんだかすごくいいなーって思う。
私って割と人見知りしちゃうから、そんな関係の女友達はいないんだよね。
せかちゅーとは友達だけど、こう、私が一方的に愛でてるみたいな感覚だし。ういやつよのぅ。
今もゆっぴーがどこにいるのか探してキョロキョロしてて、いやぁ、かわいい!
こんな子をさ、いじめてた子がいただなんて信じらんないよねほんと。
それもいつの間にか解決してたみたいだけど、あの時は恭くんと一緒に憤ったもんだ。
なにはともあれ今はなんともないみたいだから、ほんと良かった。
あと、新しいお友達のもにかちゃんとありすちゃんとはまだ付き合いも浅い。
年下だから結構楽に打ち解けることができたけど……ありすちゃんとはまだ距離を感じる。
もにかちゃんともそんな深い関係かって言われると、まだまだだね。
二人とも早くもっと仲良くなりたいなー。
「じゃあ行くか」
「幽霊さんは……?」
「いるだろ、あの辺に」
「うわぁ、すご。ピンポイント。二代目『察知』名乗っていいですよ」
「なんだそれ。あの辺チラチラ視線投げかけてたから、そうかなって思っただけだぞ」
「幽霊さん……!」
とりあえずゆっぴーいる場所がわかったので、確保!
よし、ほんとにいた!
捕まえた胸の中で小さくもごもごする感覚。
集中しないと分からないような、くすぐったい感触。
それに、なんだかちょっとした安心感を感じる。
まるで、前にもこうしたことがあったかのような、デジャブ。
ゆっぴーと友達になってから、こんなことがたくさんあるんだ。
なんだか泣きたくなりそうな、懐かしさ。
もしかしたらだけどさ。
私が探してたのは、ゆっぴーだったのかも。
なんてね。
「あー、埋まってるんので少し緩めてあげたほうが……」
「あ、ごめんごめん」
ハグを緩めた瞬間、逃げられた感覚があってちょっと残念に思いつつ。
去り際に胸をパシパシ叩かれたような感じがして、なんだかせかちゅーに似てるなって思ったり。
もにかちゃんの目線を見てると、せかちゅーの隣に行ったみたいだね。
ニッコニコなスマイルで、パントマイムしてるみたいにゆっぴーと触れ合ってる。かわいい。
微笑ましそうな目をしてるもにかちゃんの様子を見てると、私も早く生で見れるようになりたいなーって思う。
きっと、すごく、すごく、いい光景なんだろうな。
「ほら、アホなことしてないでみんな行くぞ」
・・・
次回『少年』




