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ひーろー

作者: 八夕 由宇

正義のために悪を倒す

それだけがヒーローではないと思います


誰かを笑顔に

誰かに勇気を

それだけでその人にとっての『ヒーロー』ではないでしょうか

例えその姿が不格好でも

僕はヒーローに憧れた

正義のために悪を倒す、そんなかっこいいヒーローに


『いつか絶対カッコイイヒーローになるんだ!!』

幼い頃はそうやって言うと皆、笑顔になって応援してくれた

特に妹は一番応援してくれた、心底嬉しそうに笑ってくれた

だが現実は残酷だ

歳を重ねるにつれ、いつしか皆が苦笑いを浮かべ始めた

そんな時、悲しい事が起きた

…妹が病気になった

唯一笑顔になってくれる妹が病気になってしまった

病気の進行具合は初期段階で、病気の進行速度は遅いらしい

これだけであればどれ程幸いであったか…

…治療法が見つかっていない

現段階でも数年以上は大丈夫と言われた

だが、たったの数年だ

僕よりも年下の妹が親よりも先に居なくなるなんて…

想像することすら恐ろしい

その日から僕は妹の笑顔のために、より長くいるために妹の傍に居た

そして『ひーろー』の真似事を辞めた

薄々気付いてはいた

幼い頃に憧れたヒーローは作り物だって

ヒーローになんてなれない、と…

現実を見て、妹のために出来ることはなにか

僕は妹に笑っていて欲しいと思った

だから僕は『道化を演じよう』

わざとドジしたように見せる

わざとボケてみる

わざと小芝居をしてみる

妹が笑顔になってくれるならなんだってやった

例え周りがバカ、ドジと嘲笑おうとも


数年の月日が流れると、やはり徐々に元気を失くしていく

後どのくらい一緒に過ごせるのだろうか

そんな不安に駆られながらも、道化を演じる

そんなある日、妹の容態が悪化した

病気はやはり待ってはくれない

残酷にも妹の生命を蝕んでいく

もう残された時間も少ないのだろう

妹は起き上がることすら出来なくなってしまった

顔と腕を軽く動かしたり、弱々しく話すことしか出来ない

そこまで妹の生命を蝕んでいた

だからこそ、励ます意味も込めていつも通りに道化を演じる

少しでも明るくなれるように

笑顔になれるように…

だが妹は自身の死期を悟ったかのように改まって話した

『お兄ちゃんはいつだって…私のヒーローだったよ』

その言葉に僕は涙を堪えられなかった

ひーろーごっこは卒業した

だけど今だけは『もう一度』、なってもいいだろうか

不格好にも涙で顔を濡らしながら名乗る

『正義のひーろー参上!!悪は絶対許さない!!』

幼い頃に考えたカッコイイポーズ、今にして思えばお世辞にもカッコイイとは思えない

だけど妹が笑顔になってくれたひーろーポーズだ

それを見た妹は満足そうに『ありがとう』と呟いた


あれから何日、何週間経っただろうか

妹は旅立った

家族を失った虚無感に駆られながらも前を向く

だってひーろーは挫けないから

哀しみを抱えても前へ

それに今でも妹が見守ってくれてるような気がする

幼い頃に憧れたカッコイイヒーローにはなれなかったけど、妹にとってのひーろーになれただけで十分だ

これからも、妹のためにも『ひーろー』で居続けようと思う

だから僕は今日も『道化を演じる(ひーろーになる)

『なんでこんなところにバナナの皮がぁーーっ!!!』

ドシンッ!と鈍い音が響いた



作品に登場します病気に関して、実在するものをモデルとしてません

架空のものです

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