第1話
宝剣 大神19歳。茶髪で、中肉中背。いつも紺色のスーツを着用している。通称タイガは、この日も、会社で、パソコンの入力をしていた。先輩の残業を押し付けられて、地獄だった。そのうえ、上司にも嫌味を言われたり、パワハラされたりして、社畜だった。
タイガは、会社だけでなく、幼稚園、学校、柔道のお稽古、家族、親戚、近所のやつら、行く先々に、迷惑をかけられてきた。
やっと、仕事が終わって、家に帰った。仕事着のスーツから紺色の上下のジャージに着替えて、部屋を出ると、父親が借金返済で、母親と揉めていた。兄2人は、タイガに近づき、てんでに「タイガ!金を貸してくれ!」と、タイガの給料を当てにしていた。
タイガは、兄たちに「貸しても、返さないのに、厚かましいぞ!」と抗議した。
兄たちは「じゃあ、また貸してくれよ!」とヘラヘラ笑っていた。
タイガは、こんな家で、つくづく、嫌気がさしていた。家を飛び出して、クタクタで、歩きながら、外食をしようとして、歩いていると、急に力が抜けて、道路で倒れた!
救急車が来て、女の人が叫んでいる。「男の人が倒れています!」
そして、タイガは、気がついた。狭い部屋で、椅子に座っている自分がいる。
対面して、女の人がこちらを見て笑っている。
タイガは「は?あんた誰?」
女の人は「あたし?あたしは、女神よ!」
女の人は、女神だった。
タイガは「女神様・・・?ってことは、俺、どうなったの?」
女神は「はい。あなたは、過労死で道路で死にました!」
タイガは「へぇー。って、なんだってー!?マジで、俺、死んだのかよ!!!まだ19歳だぜ!!!」
女神は「『男の人が倒れています』って言われてたのは、あなたのことよ!あの時、死んでしまったのよ!」
タイガは「えええええええ!!!19歳で!?マジで!?まだ、お気に入りのゲームも制覇していない!好きなキャラも集めてないぞ!おまけに、社畜で、家族に迷惑をかけられっぱなしだった!至る所で、いじめを受けただけの人生だった!いいことなんかなかっただけで、死んだなんて・・・。俺、可哀想過ぎるぜ・・・。」
女神は「これから、あなたが行く世界は、異世界のスローライフで、楽しいわよ!」
タイガは「でも、何もできないから、今日から、どうしたらいいかわからない!外国に住むようなもんじゃんか!」
女神は「あなたには、討伐のスキルをあげるわ!」
タイガは「俺、ゲームでも、討伐は、イマイチ腕上げてないしなあ・・・。別のないの?」
女神は「じゃあ、何が好きなの?」
タイガは「俺?チキン南蛮、から揚げ、親子丼、チキンライス、チキンソテー、とか、チキンが好きなんだ!」
女神は「ああ・・・。食べることね。じゃあ、フライドチキンの調理スキルや調理器具や食材召喚のスキルをセットで、あげるわ!」
タイガは「ええっ!?マジで!?俺が料理なんて、作れっこないぞ!」
女神は「大丈夫!スキルだから、作れるようになるわ!それと、最初、討伐に設定していたから、多少は、討伐のスキルの余韻が残っているかもしれないけど、気にしないでね!」
タイガは「それなら、安心だな!日本の生活でないなら、大歓迎だ!憧れのスローライフなら、大歓迎です!ありがとうございます!」
女神は「じゃあ、いってらっしゃい!素晴らしいスローライフを楽しんでね!応援してるわ!」
タイガは「うれしいです!」
女神は「じゃあ、あたしが、異世界に送るわ!」
タイガは「あんたと一緒に行くのか?」
女神は「いいえ。あなた1人よ。」
タイガは「1人だけかよ・・・。まあ、いっかな。」
女神は、呪文を唱えて、魔法陣を発動した。
女神は「じゃあ、この魔法陣の中央に立って!」
中央に立ったタイガは「よく考えたら、お金ないんだよ!貸してよ!あんた、女神だから、お金持ちだろう?」
女神は「あちらの貨幣、あたしは、持ってないの!あっちに行けば、何とかなるからね!頑張って!素晴らしいスローライフを!」
タイガは「ええっ!?まあ、何とかやるわ!」
女神は「さすが!めげない!あなたならやれるわ!じゃあ、いってらっしゃい!」
こうして、タイガは、女神に送られて、異世界に向かった。
ノベルアップ+で2023/5/3 10:15 掲載