表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/32

第1話 空前絶後の記事

 プロペラが風を切る音が、上空から鳴り響く。


『ご、ご覧ください……。こ、これは……!?』


 常にカメラ目線を心がけている、熱心なリポーターでさえ、この光景には息を呑んで唖然と下を見下ろす。


 そこには、商店街やビルが並ぶ、いつもののどかな光景は存在せず、

 まるで隕石が激突したかのように、円形に地面が隆起し、その中央には巨大な建造物が。


 ――ダンジョンだ。

 

 まるで古代のピラミッドの様に、まるで世界遺産の大山脈の様に、圧倒的な存在感。

 しかし、その程度では、これほどリポーターは驚かない。真に彼の心を揺さぶっているのは、その入り口にいる"人影"の存在だ。


----------------------------------------------------

  ●ここって、S級モンスターのいるダン

ジョンであってるよな……?

   ●誰だあの男。情報キボンヌ

     ●今北産業。…………いや、三行

じゃなくてもいいわ。何が起こってる?


      ●バ ラ ン ス 壊 れ る

●いまさっきの光って、あいつがやったの?


  ●こんなすごい探索者いたら、今までの

配信者終わるだろ

●すげええぇえぇええぇえぇええぇえぇ!?

----------------------------------------------------



 その様子を公開していた、某有名配信サイトのコメント欄が、まるで奔流の如く流れる。

 喫驚(きっきょう)煽動(せんどう)の書き込みが入り乱れるその隙間から、ダンジョンの前に立つその青年はカメラへと目線を向けた。

 それはまるで、画面のこちら側を見ている様で。


「…………面白い」


 暗闇の部屋の中、配信を見ていた少女は、小さく嘲笑った。




 

「謎の男、最難関ダンジョンを攻略する…………」

 

 寝不足気味で痙攣する瞼をなんとか見開きながら、俺はたまたま見つけた、何年も前の新聞を見ていた。

 ダンジョン、ダンソン、ダンスヨン。

 ダンスよん。


 スーツ姿の俺が、社内の図書館のような施設である、ここ中央資料室で踊りだしたら、流石にみんな俺のことを心配してくれるだろうか。

 『あぁ、ついに彼も正気(まとも)ではいられなかったか』と、昔見た有名なミステリー小説の一節を、この俺にかけてくれるか。

 …………かけてくれるわけないか。精神科へGO! とでも言われて終わりだ。なんなら人生もそこで終わる。


「み、見つけましたよ、上田うえだ先輩……!」


 そんなことを考えていると、突如後ろから声がかけられる。

 見ると、そこには八重歯をむき出しにして、こちらをキッ、と睨む茶色いセミロングの髪型をまとめた少女の姿があった。今まで走ってきたのか、肩で息をしており額やうなじにはキラキラと汗が垂れている。

 

みおか。どうした?」

「闇落ちした私を放ってどこかに行こうなんて、いい度胸ですね」

「すまん、忙しかったんだ。今日中に終わらせないといけない仕事があってな」

「許しましょう」


 "やみおち"している割には、簡単に許される。

 倉敷 澪(くらしき みお)、17歳。ダンジョンが現れてから適用された法律、"早期雇用形態"による新入社員だ。

 小動物を連想させる『守りたくなる女子』然とした、年齢にしては小さな身長に、くりくりとした目、スカートから覗く健康的な素足は、どこぞのアイドルと言わんばかりの魅力を醸し出す。この会社でも有数の美少女だ。美少女なのだが……。悲しいかな。やはり彼女も俺と同様、このブラックな荒波に揉まれ、心が壊れてしまっていせいで、あまり人を寄せ付けるタイプではない。

 

 入社当初は、それはまぁ真面目な少女だった。与えられた仕事を全うしようとし、他の社員の無茶振りにも困り笑顔で対応する、健気な子だった。

 

 だが、お人好しは常に搾取される。それは、この会社でも例外ではない。


 次第に彼女の心は蝕まれていき、今やパワハラを行ってくる上層部に対し復讐を誓う、彼女曰く"やみおち"(?)状態になってしまったのだ。え、そうはならんやろ? うん、ならんよな、普通。でもなってる。

 

「それよりも……っと、聞いてくださいよ、先輩」


 そんな彼女が、ずいずいっ。と、俺が座る狭い長椅子に何度も体を押して無理やり詰めさせて座る。

 その時に、女の子らしい小柄で柔らかな体の感触と、丸い顔が近づいた時に良い香りが微かに鼻孔をくすぐって、なんとも言えない気恥ずかしさから、思わずドキッとしてしまう。


「こんな腐った会社、復讐したくないですか」


 ニヤァリ。と擬音が鳴りそうな悪い顔で、コソコソと話してくる澪。前言撤回、全くドキドキなどしない。


「……今度は何を思いついたんだ?」

「ふっふっふふ、この恐ろしさ、聞いても失神とか失禁とか、しないでくださいよ? 私、先輩をベッドに運んで濡れタオル額に置いて、おかゆあーんまでしかしませんからね……?」

「至れり尽くせりじゃねえか……」

 

 特徴的な笑い方はともかく、若干やみおちする前の名残で良い子ムーヴが出てる。

 しかし、そんな彼女は小悪魔的な影のある笑いを浮かべて、ごそごそとポーチから小さな黄色い果実を取り出した。

読んでいただきありがとうございます!


もしこの物語が面白いと思っていただけたなら、この後書きの↓にあるブックマークや、評価の★をクリックしていただけたら嬉しいです!


ほんっ……

 とに嬉しいです。跳ね上がります。


また、何か物語について感想その他諸々がありましたら、そこから更に↓の感想に書いていただけたら幸いです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ