年金受給年齢を伸ばせば率が上がる社会になった場合の話
年金を受け取る年齢が75歳まで伸ばせるようになって久しい。
つまりすぐもらえないほど金額が多くなるという美味い話。
うちの祖父母も65歳になる前に申請していたようだ。
本人たちはすこぶる元気で長生きする自信があったからだ。
しかし75歳になる直前に脳障害を起こして肢体不自由と自律呼吸ができなくなり、食事も胃ろうに頼る生活になった。
声を出せず意思の疎通が全くできないまま現在は自宅で療養という名目で生きている。
費用は高額になった年金の一部と障碍者年金でどうにかなっている。
停電にならない限り生存できる状態。
というか生物学的に生存させることは永久にできるようだ。
つまりこの状態なら死ぬことはできない。
心臓も電気信号で動かせるし、寝ているだけでなので1分に30回ほどで十分らしい。
同じように呼吸も気管から直接送ることができる。
僕らにとって生きているだけで国からお金が支払われる存在。
寝かされている部屋は基本的に灯りは点けないし、換気も日に一回ほど。
生命体を利用した機関室のようだ。
我が家のような状態は珍しくないようで、専門の施設があるようだ。
そこは牧場のような体制で、50人ほどの高齢者を1人で管理できるようになっている。
停電になっても自家発電などが完備されているようだ。
ちなみに早めに年金を受け取った人らは高額受給じゃないので昔ながらの医療で自然死しているようだ。
無理に生存させても足が出るのと、自分で年金を使うことを望んだくらい死生観ははっきりしているようだ。
僕らが受給する頃にはさらに支給年齢は上がっているだろうし、額も期待できないだろう。
もしかすると統計的に平均寿命が延びたことを理由に90歳が支給開始年齢になるかもしれない。
寝たきりとはいえ高齢者は生きているから計算に入るだろう。
もっともその頃には人口構成比が逆ピラミッドになっていて、年金を納める国民はほとんどいない国になっているだろうな。
だから僕ら世代は受給をあてにしていない。
じゃあどうするのか。
祖父母を僕らが死ぬまで生きててもらうだけ。ちなみに僕には兄弟もいないし子供もいない。
この国の最後はミイラばかりで終わることだろう。




