空を飛ぶ鉄塔ワーカー
※おはよう!グライダー、今日も一日がんばろう!
通信が聞こえる。
私は鉄塔ワーカーだ。今日も大地に寒々とそびえたつ鉄塔に登っている。通信本部は私達のことをグライダーと呼ぶ。
今日はとてもよく晴れている。風の音が心地いい、鉄塔を1段づつ、ステップを一本づつ登り、少しづつ高いところに出る。木々が下に広がり、雲がだんだんと近くなっていく気がする。もう春かなぁ、木々も生き生きとしてきてるような気がする。
私の仕事は鉄塔を管理することだ。この鉄塔ってやつは、旧人類が残してくれた最高の遺物なんだな。この鉄塔を伝って人間は生きるすべを伝達する。電気や電子データだけでなく、水や食料などの有機的なインフラも送受信することができる。わたしはその鉄塔を守る大切な仕事をしているんだ。技術の進歩で高所作業にも命綱が不要になった。鉄塔に登るために、高いところに登ることが簡単になった。逆噴射機能と、自動姿勢制御機能を持った安全帯を装着することで、登る途中に万一ステップを踏み外したとしても、地上まで落下することは無い。ごく最近まで、命綱をつけては外し、つけては外しという作業をしていたので、効率は非常に良くなったものだ。それでも、エネルギーの量には限りがある。大切にしないといけないんだ。
私たちは、鉄塔に上り、背部装備の翼を広げて、グライダーの要領で送電線をチェックしてまわる。そして、本部からの指令があれば、その指令に従って敵を倒す。
敵ってなんだって?そうだね、敵はスモークマンっていう、黒い人影だ。一度人類を絶滅寸前まで追い詰めた恐ろしい悪魔だ。旧人類が残してくれたこの鉄塔の周りに、スモークマンが入れないように縄張りを作る。スモークマンってのは、まだ詳しく解明されていないんだけど、石膏ボードで作られた白い壁を越えることができない。昼の間はそれほどうろついていないんだけど、夜になるとたくさん湧いて出る。私たちは、大切な鉄塔の周りに、簡易的な白い壁を築いてスモークマンから守ってる。作業ができるのは、太陽が昇っている間だけなんだ。
本部からの通信だ。
※今日の担当地域は関東S地区。A山からS平野への送電線確認をお願いします!
※A山系のX4鉄塔のバリケードが弱くなっている連絡が住民からありました。補助対応願います!
※A山系のV5鉄塔とV6鉄塔の間の電線の老朽化対策を行います。目視確認後、補修工事用ビーコンの打ち込み願います!
「了解、地図の送付お願いいたします」
私は、地域で一番標高の高い鉄塔のてっぺんに立って、今日チェックする鉄塔の飛行順序を検討する。ただ滑空するだけでもしっかり仕事はできるが、逆噴射エネルギーも限りがあるので、大事に使っていきたい。サーマルと呼ばれる上昇気流をつかんで、クルクル旋回していると、どんどん上昇できる。うまく上昇気流を掴めればいつまででも飛んでいられる。だが、上昇しすぎても鉄塔のチェックができないから、遊んでたらすぐに時間が無くなる。そのへんは難しいところだ。
さて、装備ヨシ、飛行順序ヨシ、天候チェックヨシ、燃料ヨシ風もヨシ。大きく手を広げ、背部装備のグライダーを広げながら落下すると、風に乗って体が舞い上がる。全身で風を受け、鼻を抜ける空気で湿度を知り、脚部の尾翼を腰の動きで調節しながら飛行する。グライダーに乗り始めたときは腹筋の筋肉痛がひどかったものだ。
これから空を飛びながら、鉄塔ひとつひとつをチェックしていく。鳥と一緒になって空を飛ぶんだ。気持ちいいよ。
ゴーグルに地図が表示され、予定している最短距離を指示してくれる。工事用ビーコンの作業を終えるとお昼近くになっていた。次の鉄塔の上でお昼にしよう。
鉄塔の上は、作業しやすいように「あずまや」と呼ばれる小部屋が作られている場合がある。鉄塔の上に、公園にあるような、椅子とテーブルがあるようなイメージだ。眺めを楽しみながら食事ができる。だいたい風が強いので、ゆったりと食事とはいかないけどね。持参している簡易携帯食をポリポリかじり、水分を補給する。空の上は風が強いので身体の水分がすぐになくなる。本当は、もっとこまめな水分補給を義務付けられている。
他のグライダーさんにも会った。グライダーさんはほとんどが女性だ。男性は体重が重いので向かない仕事なのだ。男性は、バリケードを強化したり電線と鉄塔を補修したり、地上でスモークマンと戦う場合が多い。
「今日は良いね、仕事しやすいですね」
「そうですね、いつもこんな風なら良いのですが」そんな挨拶を交わし、休憩を終える。チームが違う人だ。初めて見る顔だなあ。
バリケードが弱くなっている連絡のあったX4鉄塔に近づくと、緊急アラームが表示される。
※近隣の住民がスモークマンに襲われています。スモークマンを倒し、居住エリアのバリケード強化を行ってください。
「オッケーすぐ行きます」
スモークマンは強いモンスターだが、1体1体は石膏弾を打ち込むことで簡単に倒すことができる。ゴーグルに写っているマップに従って、現場に急行する。住民が2名襲われている。ハンド石膏銃を持たずに出たのかな。スモークマンは1体だけだ。グライダーから狙撃はできない、至近距離まで滑空して、ショットガンで対処する。
反動でバランスを崩しそうになった。私もまだまだだなぁ。
「本部、救助依頼のスモークマン討伐が終わりました。けが人なし」
※了解、では作業と巡回に戻ってください。
2名の住民に気を付けてねとハンドサインを送り、上昇気流を探し、再び上空へ向かう。居住エリアのバリケードってどれかな?こればっかりは目視で探さないといけない。しばらく旋回していると、先ほどの住民が地上から大きく手を振っている、バリケード老朽箇所を教えてくれてたみたい。地上まで降り、バリケード補修用グルーガンでバリケードを補修していると、補修担当の職員が来た。
「ここはもう俺がやるから、続き飛んでいいよ」男性職員はだいたいグライダーに優しい。私もそういう男性が好きだ。
居住エリアから近い場所にある鉄塔が、依頼のあったX4鉄塔でもあるようだ。ああ、手間が少なくてすむ。鉄塔周囲を補修して今日は電線伝いで基地へ戻ろう。
ん?
河川敷に・・・人が倒れている。
「本部、応答願います、A川河川敷で人が倒れています」
※了解、位置情報の送信願います、地上からも救助を向かわせます。
「位置情報送付いたします。倒れているのは男性、10代くらいです。1名、流血は無いようですが、服を着ていません」
※了解、バイタルサイン送信後、必要に応じて救命処置願います。
これが、スモークマンの秘密に迫る未来人「トーマ」との出会いだった。
読んでいただきありがとうございました。
そんなストラテジーゲームがやりたいなあというお話です。
導入だけですみません・・・続きはありません!




