第99話 目の見極め
僕は、みんなを集めた。
「みんな、どんな感じだろう。目が分かるようになったかなあ?。」
「まだ、よく分からないけど。」
「難しいニャ。」
「じゃあ、こんな風に考えて。魔法防御を練習したよね。体の弱いところって、防御を強くする感じがしないかなあ。」
「それはそうニャ。守るからニャ。」
「相手の硬氷壁見るのも、同じだよね。弱いところ、薄いところ。魔法防御が強くなってるのと、氷が弱くなっているところ。」
「あっ!!。そうだわ。そうよね。」
「じゃあ、ちょっと見てて。カエデさん、正面に立ってもらっていいですか?。」
「ええ。」
「さっきと同じように、硬氷壁お願いします。」
「分かったわ。」
僕は、硬氷壁に向かって、魔力防御を飛ばした。
そして、剣で突いてみる。
「パリン!!。」
「どうだろう。」
「ワザと魔力防御を飛ばして、弱いところを見るニャ。」
「そうよ、ピピ。防御の特性を利用するんだわ。」
みんなは、納得したように、それぞれ戻って訓練を再開する。
その晩、カエデは、絶対零度の練習を続けていた。
全身から汗が吹き出し、目をつむったまま魔力を練り続ける。
そして、目を見開いたカエデは、
「絶対零度!!。」
「パリン!!」
「出来た。出来たわ。」
今まで、初代しか成しえなかった、絶対零度をやってみせた。
カエデの頬を、涙が流れた。
「やった。やったわ。お父様、楓はやりました。これで、国にも帰れる。」
その頃、別の部屋では、
「うう~!!。何か今日は、妙に冷えるニャ。」
その日、何故か屋敷だけは、真冬のような寒さだった。
翌日も、みんなで、訓練を続ける。
「あれ、カエデさん、何かあった?。」
「えっ!。いいえ別に。」
「そう、それなら。じゃあ、また、続きやろうか。」
僕とカエデさんは、対峙して、カエデさんが硬氷壁を出した。
「えっ!!、カエデさん、その硬氷壁って、随分、透明だし、それに、.........、目がもの凄く小さいんだけど。」
「そうなの。やっぱり、完璧に近いって、そういうことなのね。」
「もしかして、絶対零度。」
「ふふふ、ライトは、誤魔化せないわね。」
僕は、カエデさんに近づいて、手を取って喜んだ。
「そう、そうなんだ。出来たんだね。よかったね。」
あれ、なんか、カエデさんが、真っ赤になって、横を向いた。
どうしました、カエデさん。
それを見ていた、みんなが寄ってきた。
「どうしたの?。ライト。」
「いやあ、カエデさんが、とうとう、絶対零度を完成させたんだ。」
「姫、本当ですか?。」
「ええ、婆や。」
「そうですか、そうですか。とうとう、完成されたのですね。」
婆やさんは、大粒の涙を流していた。
「みんなのお陰よ。この国に来てよかった。そしてみんなに会えて。」
やっぱり、何か背負ってるものがあったんだね。
その日も一日、訓練を続けて、晩御飯が終わった後、みんなを集めた。
「今日の訓練で、大分、感覚が掴めたと思うんだ。」
「また、行ってみるんでしょ。」
「うん、本物でやってみないと、行けるか分からないしね。」
「多分、大丈夫だと思う。」
「カエデさん、それは。」
「この間、戦ったでしょ。あのアイスゴーレムの硬氷壁は、普通のよりは硬いかもしれないけど、絶対零度に比べたら、ぜんぜんよ。だから、みんななら見切れるはず。」
「やっぱり、そうなんだね。」
「わかった。明日、最初はゆっくりと進んで、慣れてきたら一気に行こう。」
明日は、一気に攻略を進めることで、意見が一致した。
その後、僕の知らないところで、こんなことがあった。
「ミーサ、ちょっといい。」
「何、カエデ。」
「大事な話があるの、一緒に来て。」
そして、ミーサとカエデは、訓練場にいた。
「カエデ、どうしたの?。急に大事な話って。」
「これからのことで、聞きたいことがあって。」
「これからのこと?。」
「私は、みんなと出会って、まだ、短い時間しか一緒にいないけど。この短い時間でも大切だと思える仲間に、出会ったと思ってる。」
「私も同じよ。ずっと前から一緒に居るのと、同じだと思ってる。」
「じゃあ、正直に教えて。」
「何を?。」
「ミーサとライトって、どういう関係なの?。」
「えっ!。どういう関係って。」
「えっと、その、好きとか。恋人とか、.......。」
「分かったわ。そういうことが聞きたいのね。今まで、聞かれたことなかったから、誰にも言ってないし、言ってこなかったわね。」
「やっぱり、何かあるのね。」
「私が、最初にライトと出会った時に、ライトってあんな感じでしょ。よく分からないし、他には居ない不思議な人でしょ。彼に対して、いろんなこと考えちゃって。最後は、決闘っていうか、対決したの。」
「えっ!。対決って。それで。」
「私は、師匠から貰った技まで出したけど、負けたわ。それで、負けた男の言うことは、なんでも聞くって約束してたから、ライトにも何か言ってくれって言ったわ。そうしたら、結婚してくれって、言われたわ。」
「け、結婚!。」
なんか、カエデが、衝撃を受けたようだった。
「あっ!。でも、ライトったら、結婚してくれって言ったのは、私以外にも、メイサにも言ったのよ。」
「えっ!、メイサにも。」
「ライトが、転生する前に生きていた、本当のライトが、メイサを守ってくれって言ってたとか。そういうことを言っていたわ。」
「本当のライト、.......。」
「見た目は、幼馴染のライトだけど、中身は違う。だけど、それでもメイサは、一緒に居たいって、思ったんじゃないかな。」
「メイサが、.........。」
「カエデ。あなた、ライトが、好きなのね。」
「ミーサが、正直に言ってくれたから、私も言うわ。そうよ。私もライトが好き。あんな人に、会ったことが無いわ。ずっと、一緒に居たいと思える人に、初めて会ったの。」
「そうね。私も、今、思うとそう思うわ。あんな人いない。だから、私も好きよ。ライトが。」
「じゃあ、結婚するの?。」
「ええ、このダンジョンが、攻略出来れば。」
「そうなのね。」
カエデは、残念そうに下を向いた。
「あら、カエデは、それで諦めちゃうの?。」
「えっ!。何で。」
「カエデは、この国のことをあんまり知らないから、教えてあげるけど。この国、一夫多妻制なのよ。だから、私やメイサを気にせずに、カエデだって、この国なら、ライトと一緒になっても、いいのよ。」
「ほ、本当に。でも、それじゃあ、ミーサやメイサに、.......。」
「何、言ってるの?。私は、カエデだったら、歓迎よ。きっと、メイサも大丈夫だと思う。」
カエデの目から、涙が零れた。
そして、ミーサは、カエデに近づき、そっと、抱きしめた。
「カエデ、私はあなたを応援する。」
「ありがとう。ミーサ。」
「でも、あいつ、そういうの鈍感なんだよねえ。」
翌朝、朝食を済ませ、準備に入る。
なんか、ミーサ、メイサ、カエデさん、婆やさんが、妙にテンションが高く、ご機嫌なんですけど。
「じゃあ、準備ができたら、リビングに集合しよう。」
僕は、みんなに声をかけた。
みんなが装備を整えて、集まってくる。
「よし、じゃあ、出発しよう。」
「みんな頑張って。」
メイサが、見送ってくれた。
僕は、転移の魔法陣へ魔力を注いだ。
「ぶわあああああん!!。」
そして、僕たちは、82階へ続く階段の入り口に来た。
僕たちは、階段を下りて行く。
82階に出ると、この間のアイスゴーレムが、うろうろしていた。
「あっ!。そうか。カエデさんを連れて行くのに、倒してなかったね。」
「いいわ。私が倒すわ。」
カエデが、前に出る。
既に、手前の壁画も復活しており、もう一体のゴーレムが現れた。
「カエデさん、.......。」
しかし、カエデは気にもせず、既に居たゴーレムと対峙する。
既に、槍を構えたカエデ。
ゴーレムが、近づいてくる。
「シュッ!!、シュシュ!!。」
カエデが槍を出した。
「パリン!!。」
「ドゴオオオオオオオオン!!。」
「ええ!!。」
最初の一撃で、胸の硬氷壁は壊れ、次の一撃で、アイスゴーレムは砕け散った。
「どういうこと。カエデさん。」
「ふふっ!、ライトが教えてくれたんだけど。」
「えっ、僕が?。」
「そうよ。硬氷壁の目を見極めて、そうしたら只の氷だから、氷も同じように目を見つけたら壊れるわ。」
「ああ、なるほどね。」
「もう一体は、私がやるわ。」
ミーサが、もう一体のアイスゴーレムと、対峙した。
そして、今まで訓練したことで、ミーサも硬氷壁の目を見極めた。
そして、剣でゴーレムを突く。
「シュッ!!。」
「パリン!!。」
ゴーレムの体も、見極めて突く。
「ズシャッ!!。」
ミーサの一撃で、レイピアがアイスゴーレムの胸に刺さった。
「ピキッ!、ピキッ!、ピキッ!、ピキピキピキ!!。」
「ドゴオオオオオオオオン!!。」
アイスゴーレムは、剣が刺さった箇所から、ひびが広がり砕けた。
「よし、みんな。進もう。」
僕たちの82階の攻略が、始まった。
だが、この時、彼らはまだ知らない。
カエデと仲間たちに、自分たちを試される試練が待っていることに。




