第97話 カエデの試練
転移して、屋敷に戻った僕たち。
「カエデさん、しっかりして。」
「まずいは、意識もないわよ。」
僕は、治癒魔法と回復魔法をセットして、
「凍るのよ、治まれ!!。」
「強回復!!。」
カエデは、治癒と回復の魔法によって、凍っていた箇所も治り、回復したように見えた。
しかし、意識は戻らなかった。
「ライト殿。カエデ様は、大丈夫でしょうか?。」
「婆やさん、分からない。治療は、してみたけど。」
「一応、呼吸も、脈も、大丈夫そうだけど。」
「では、何故、意識が戻られないのですか?。」
「うう~ん。分からないなあ。とりあえず、部屋に連れて行って、横にさせよう。」
僕たちは、カエデさんを、部屋に連れていき、ベッドに横にした。
しかし、カエデの意識が、戻ることはなかった。
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「とうとう来たね。」
「はい、もう何百年と待っておりました。」
「お前を、ここに留めておいたけど、これで安心出来るんじゃないか。」
「そうで御座いますね。」
「しかし、娘とは思いもよりませんでしたが。」
「今はそうだね。だけど、本命は次だよ。」
「では、この娘の次に来るものが。」
「来るっていうか、継ぐっていうかかな。」
「そうですか。ありがとうございます。では、わたしは、この娘に伝えれば。」
「そういうことだね。」
ライト、順調そうじゃないか。
僕の思った通り、君はやっぱり、......。
「ん!、ここは、.......。」
「よく来たのう。楓。」
「えっ!、ここは?。みんなは何処?。」
「ここは、彷徨えるものが、来る所じゃよ。」
「じゃあ、私は、死んだんですか?。」
「いいや、まだじゃ。」
「ライトという若者が、ギリギリで救いおった。」
「ライトが、......。」
「だから、もう少しすれば、元に戻るじゃろう。」
「そう言えば、あなたは何方ですか?。」
「そうか、名乗っておらんじゃったのう。わしは、氷雪原玄斎じゃ。」
「玄斎、げんさい、げんさい。もしかして、氷雪源流の創始者様のですか?。」
「そうじゃ。ここで会うとは、お主も縁があるのう。これも、あの若者が影響しとるんじゃろう。楓、儂に聞きたいことが、あるんじゃろう。」
「はい、氷雪源槍術、第5の型。」
「絶対零度か?。」
「そうです。どうすれば出来るのか。」
「ふぉおっ、ふぉおっ、ふぉ。あれはな、死にそうにならんと、無理じゃ。」
「えっ、死にそうに?。」
「そうじゃ。仮死状態というかのう。絶対零度は、一度でも温度が上がれば、出来んのじゃ。だから、体を、0度以下にする必要があってのう。死にそうなぐらいになることを、耐えねばならん。」
「そ、そんな無茶な。」
「だから、今まで出来た奴が、おらんじゃろう。」
「でも、創始者様は、出来たんですよね?。」
「そうじゃ。わしは、雪山で遭難したんじゃ。」
「遭難?。」
「雪崩にあってのう。気づいたら雪に埋もれておった。そして、どんどん体が冷えて動けなくなった。だがな、儂は死なんかったんじゃ。何故か分かるか?。」
「いいえ。」
「自分の体の表面を、自分の魔力で、冷たくしたからじゃ。そして、埋もれた温度と同じになった。そして、長い時間、耐えたんじゃ。その間に、策を考えた。どうやったらここから脱出できるか。その時に、見つけたんじゃ。体の中で、更に温度を下げる方法を。」
「同じ温度?。体の中で温度を下げる?。」
「同じものが、あったとしよう。それが、まったく同じ温度だとすると、二つ足しても同じよのう。」
「はい。」
「だが、片方が、ほんの少し大きかったとしよう。どうじゃ。」
「大きい方の温度に、近くなる。」
「そうじゃ。だから、体全部を0度にするのではなく、半分と少し減らした分を冷たくする。残りは、魔力で、冷たさを通さぬようにするんじゃ。そして、体の冷たい部分を通して、温度を下げることを循環させ、絶対零度を練り上げるのじゃ。」
「そ、そんな秘密が、あったのですね。分かりました。」
「いいか、時間を掛ければ、体が弱ってくるぞ。全ての流れを、瞬間的に行うのじゃ。」
「はい。」
「あのゴーレムは、良い試練じゃろう。」
「えっ!、82階のことですか?。」
「そうじゃ。」
「いつか、儂に会いに来れる奴が現れた時の為にな、作ってもらったんじゃ。」
「それじゃあ、私が、.......。」
「そうじゃよ。楓が此処にきたのも、運命じゃろう。おう、まだ、もうすこし時間がありそうじゃ。楓、起きてみよ。」
「えっ!、起きるって?。」
カエデは、いつの間にか、肉体があるがごとく、草原に立っていた。
「ほれっ!。」
正面には、老人が立っており、カエデに槍を投げてきた。
カエデは、それを受け取った。
「時間が無いからのう。楓、構えて、儂を突いてきなさい。」
「宜しいのですか?。」
「まだまだ、お主には負けんよ。」
「それでは、行かせて頂きます。」
「うおおおおおおお!!。」
カエデは、玄斎に向かって行った。
玄斎の胸に、槍が当たる寸前、
「キンっ!!。」
「な、何で!。」
カエデは、玄斎の胸を見た。
「そ、それは!。硬氷壁。」
「そうじゃよ。これは、元は儂の技じゃからな。」
「ほれ、どうした。楓、まだ、終わりじゃないぞ。」
「はい!!。」
カエデは、必死に玄斎に向かって行った。
しかし、ことごとくが阻まれた。
すると、
「楓、何か気づかんか?。」
「何かに気づく?。」
「そうじゃ。」
「硬氷壁は、固い絶対防御なのですか?。」
「ふぉおっ、ふぉおっ、ふぉ。絶対防御かのう。絶対防御は、無いんじゃ。」
「えっ!、では、玄斎様の硬氷壁でも、敗れると。」
「そうじゃ。まあ、見ておれ。」
そういうと、玄斎が楓に向かって、手を翳した。
すると、楓の胸の前に硬氷壁のプレートが出来た。
「では、行くぞ。楓。」
今度は、玄斎が、カエデに向かって攻撃を始めた。
カエデは、玄斎の槍をかわし、かわす。
しかし、玄斎の槍は鋭く、カエデがかわしきれずに、胸の前の硬氷壁のプレートに、一撃を喰らった。
すると、
「パリン!!。」
あっけなく硬氷壁のプレートは、砕け散った。
「こ、これは、.........。」
「楓。何故、儂の一撃は、硬氷壁を砕いたか、分かるか。」
「わ、分かりません。」
「目じゃよ。」
「目?。」
「そうじゃ、目じゃ。硬氷壁はな、氷が出来るのと同じじゃ。最初に出来た部分は固くなってくるが、最後に出来た部分は硬くない。そこが目じゃ。そしてそこを突くんじゃ。」
「でも、どうやって、その目を見極めれば。」
「何度もやって、自分で見極めるしかないのう。」
「はい!。」
それから、カエデは、時間が許す限り、玄斎と槍を交えた。
そして、微かに、目の位置が分かり始めたころ。
「楓、そろそろ時間のようじゃ。」
「えっ!、でも、まだ。」
「あとは、自分で掴むんじゃ。それとな、絶対零度の硬氷壁は、ほぼ完ぺきじゃぞ。」
「あ、ありがとうございました。玄斎様。」
「お前の活躍を、見守っとるぞ。」
カエデは、だんだんと意識が薄れていった。
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「玄斎、どうだった。」
「はい、確かに、類稀な才能かと。」
「そうか。やっぱり、この時代に集まるんだなあ。」
「神よ。この時代に集まるとは?。」
「七聖。そうなんだ。彼の周りには、......。」
「神よ。お願いが御座います。」
「ん!、どうした。」
「今しばらく、留めては頂けないでしょうか。」
「ああ、楓とライト、その先も見ないと安心できないかい?。」
「はい。」
「まあ、今まで待ったんだ。直ぐに、成仏しなくてもいいいんじゃないの。」
「ありがとうございます。」
「今まで通り、見守ってやってよ。」
「はい。」




