第90話 魔法防御の壁
それから、僕は、防御する壁を、自分で、感じ取れるように、一人一人に手を持って、火球を自分の上に、降らして見せた。
「どうだろう。今は、僕が、自分に向けて、撃って見せたけど、なんとなく感覚が、分かったかなあ。」
「一緒にやってみると、確かに、ライトの言う通りね。何かが、周りにあるのは、分かったわ。」
「その何かを、自分で、意識的に、使えるようにして、欲しいんだ。」
それから、みんなは、自分で、魔法を真上に撃って、自分に、当ててみる訓練を始めた。
「よし、僕は、次の段階へ、いくかな。」
僕は、魔法の出力を、操れるようになる事を、考えていた。
そう、それは、魔法防御と、出力の組み合わせ。
「右手で、炎を出して、左手に、当てても熱くない。今は、体に防御壁を張っているからだけど、この防御壁を、少し離れても、出来るようにと。」
僕は、左手に、纏っている防御壁を、体から離して、壁を、維持出来るように、イメージする。
「ふう。なかなかこれは、難しいなあ。」
何か、いいイメージって、ないかなあ。
「離れていく。離れていく。分かれ。分かれ。分かれ。」
そんな時、何故か、前世の会社の先輩の顔が、浮かんだ。
先輩、離婚するかもって、言ってたなあ。
駄目だ。
駄目だ。
集中しよう。
しかし、駄目だ。
休憩しよう。
僕は、一旦、休憩した。
「ふうう、先輩、どうしているんだろう。子供がいて、休みの日には、公園で、遊ぶって言ってたのに。」
僕は、ふっと、映画か、ドラマの1シーンが、頭をよぎった。
親子が、公園で遊んでいて、風船を、飛ばしてしまうシーン!!。
風船!。
「そうだ。風船の様なイメージだ。」
風船の中に、人が入って、空気も入っていなければ、萎んだゴムが、密着している。
だけど、空気を入れ始めると、膨らんで、密着しているゴムが離れて、周りを、風船のゴムが覆っている。
「これだ。このイメージ!。」
僕は、もう一度、右手で、炎を出しながら、左手に当てた。
「よし、風船だ。僕の周りには、風船が付いている。よし、空気を入れて、膨らますぞ。」
「いくぞ。ふう、ふう、ふう、ふう。」
何度かやってみると、イメージ通り、少し炎が当たっている部分に、隙間が、出来始める。
「よし、いいぞ。この調子だ。」
それから僕は、何度か、練習を繰り返し、等々、右手で、炎を出している直前まで、広げる事が出来た。
魔法防御は、みんなが、使えるようになるまでに、そんなに、時間は掛からなかった。
まあ、そうだよね。
みんな、昔から、魔法を使ってるんだもんね。
意識して、感覚さえ掴めれば、出来るよね。
「じゃあ、みんな。今日からは、魔法防御の応用だからね。」
「応用って、どうするのよ?。」
「今は、自分の体に、壁が出来る事は、意識して、出来るようになったよね。」
「ええ。」
「今度は、その壁を、体から離しても、使える様にするんだ。」
「ええっ!。そんな事、出来るの?。」
「じゃあ、ミーサ。こっち来て。」
僕は、ミーサと離れて、向かい合って立った。
「ミーサ。また、僕に向かって、電撃を、撃ってくれないか。」
「ええ、分かったわ。」
「いくわよ。電撃!!。」
僕は、右手を出した。
電撃は、僕が出した、右手の手前で、防御された。
「嘘!。どうして?。」
それを見ていたみんなが、唖然としていた。
「これが、魔法防御を、体から、離すって事。」
僕は、みんなに、練習方法を説明した。
「みんなは、自分の体に、何か、薄い膜が張られていると思って。その膜は、柔らかくて、伸びたり、縮んだりするんだ。その膜の中に、空気を入れたら、どうなると思う?。」
「えっ!。空気を入れるの?。柔らかいんだったら、膨らむ?。」
「そうだよ。カエデさん。膜は、膨らむんだ。だから、みんなは、自分が、膜で覆われているって想像して。右手で、左手に、魔法を出しながら、膜を空気で、膨らませるんだ。そうなれば、どうなる?。」
「空気で膨らんだ膜は、体から、離れるニャ。」
「そうだよ。ポポ。みんないい。膜は膨らむと、体から離れるんだ。」
みんなが、頭の中で、想像出来る様にして、練習を始めた。
みんな思ってたよりも、上手く想像出来るみたいで、徐々に、魔法防御を、離れた場所でも、使用出来る様になる。
みんな流石だな。
ランクが高いって、凄いよ。
それから翌日も、魔法防御の訓練をして、二人一組で、向かい合って、魔法を撃ち、自分の手前で、防御が出来るまでになった。
よし、これで明日から、最終段階だ。
「じゃあ、今日から、最終段階へ進むよ。」
「えっ!、最終段階?。まだ、何も攻略方法、練習してないけど。」
「大丈夫だよ。今までの訓練で、今日からの魔法が習得出来れば、いける筈なんだ。」
「分かったけど。何するの?。」
「今日からも、それぞれが、違う事を、やってもらうから。カエデさんは、火属性が、出来るようになったばかりだから、次の段階は、婆やさんが教えてあげて。二人の攻略方法は、同じだから。」
「分かりました。ライト殿。」
「じゃあ、最初は、婆やさんから、いきましょう。」
「今回は、私が、最初で御座いますね。」
「ええ、カエデさんも、どんな事をするのか、先に、知っておいた方が、良いでしょうから。」
「これを、見てください。」
僕は、右手の上に、小さい炎の球を作った。
「いいですか。カエデさんと、婆やさんは、闇属性が使えないので、火属性だけで、火力を上げる必要があります。だから、この火の玉に、更に魔力を、込めます。」
「色が、変わってきたわね。」
「そうだね。魔力を込め続けると、球の中の温度が上がって、色が、黄色になってくるんだ。これぐらいかな。」
僕は、火の玉を、訓練場の真ん中辺りに、投げた。
ぼんっ!!。
地面に落ちた火の玉は、割れると、火柱を上げた。
「凄い!!。此処からでも、熱さが分かるわ。」
「じゃあ、次はこれね。」
今度は、火の玉より、二回り大きい氷の球を出した。
「この氷の球って、何か分かる?。」
「中に、何かあるニャ。」
「そうだね、ピピ。こっちを投げると。」
僕は、氷の球を、また、部屋の中央に、投げた。
コロン!。
コロン!。
コロン!。
「ライト。何も起きないわよ。」
パチン!!。
僕が、指を鳴らすと、
ピシっ!!。
氷の球が割れる。
そしてもう一度、
パチン!!。
僕が指を鳴らすと、
ぼんっ!!。
ぼおおおおおおお!!。
さっきよりは、小さな火柱が、上がった。
「これも、最初の球と同じで、炎を、仕込んであるんだ。」
「えっ!。でも、何で、氷で囲ってるの?。」
「魔法の防御を使って、包み込んだら、安全なんだけど。間違って、誰かが近くに居たら、大変だからね。それに、ゴーレムが邪魔な時に、二重にしておけば、何時でも、使えると思って。」
「投げるのを失敗しても、誰かが、拾って投げ直しも、出来るのね。」
「そういう事。」
「婆やさん。先ずは、火の玉を作ってみましょう。」
僕は、婆やさんの両手を持って、目の前で、火の玉を作ってみる。
「婆やさん、普通に作ってしまうと、燃えるのが、外に広がってしまうので、炎が、球の中に入っていくように、思って下さい。」
「外から、中にですね。」
「そうですね。そんな感じで、ぐるぐる回る様に。球の中は、常に回っている様に、考えて下さい。」
「それは、何ででしょうか?。」
「これから、魔力を、もっと込めるんですが、外から中に燃えて、更に燃えたのが、また外に来て、中に入って、燃える様な感じです。球であるうちは、回転しながら燃えている様に。中から出て、外に来たら、更に燃えて、中に入って、温度を上げていく様にです。」
「分かりました。」
流石に、婆やさんは、指導していた事もあって、呑み込みが早かった。
「じゃあ、氷の球にしますね。先ずは、魔法防御で囲います。」
僕は、作った火の玉の周りを、魔法防御の壁と、同じ膜で囲った。
そして、氷で囲って球にした。
「簡単に、氷が壊れたらいけないので、倍ぐらいの大きさの氷だと、思って下さい。それを、ぎゅっと、押しつぶした感じです。中は、空洞で作りますが、火の玉は、防御の壁で囲ったので、大丈夫です。氷に、集中して下さい。」
「出来ましたね。ライト殿。」
そこには、綺麗な、透明な氷の球の中に、黄色っぽい塊が、入っていた。
「どうですか。一緒に作った感じは?。」
「ええ、何となく感覚は、分かりました。」




