第74話 交渉
アルフォード邸に向かった僕たちが見たのは、お城だった。
「あれが、アルフォード邸?。」
「そうニャ。」
そうか、流石に侯爵なんだな。
それにしても、王都のすぐ近くにお城って、......。
「ライト、昔の戦争の名残よ。何もないと直ぐに王都まで攻められちゃうから、少し離れたところに、出城みたいな感じで立っているの。」
「はあ、なるほどね。」
「この東のお城が、王都には一番近いお城ね。他の門の先にもあるのよ。」
「でも、なんでアルフォードがここに?。」
「聞いた話だと、他の国と争っていた時の褒美で、授かったらしいわよ。」
はあ~、凄いんだね。
感心している場合じゃないけど。
いやあ~、そんな人が相手なんて、大丈夫か、僕。
アルフォード邸であるお城の門まで来ると、昨日会ったセバスさんが立っていた。
「これはこれは、皆さま、ようこそおいで下さいました。」
「セバスさん、昨日の話をみんなで相談して、先ずは、お話を伺ってから決めることにしました。」
「そうですか。それでは、こちらにどうぞ。」
セバスさんを先頭に、僕たちはお城の中に入っていく。
「セバスさん、さっきの門で警護していた人って、騎士や兵士の人と格好が違いますよね。」
「ええ、こちらは、アルフォード様、個人の所有物なので、私兵で警護しております。」
「私兵って、侯爵様が雇っているってことですか?。」
「左様です。」
やっぱり、凄いね。
貴族って。
「皆様、こちらが中庭になっておりまして、訓練等で使用しております。」
中庭って言ったって相当広いよね。
お城と反対側に、幾つかの建物が立っていた。
「あちらの建物は、宿舎になっておりまして、参加される方々が宿泊される施設になります。」
「前より建物が、増えてるニャ。」
「そうで御座いますね。例の81階に向けて、人員を増やしておりますから。」
やっぱり、侯爵は、本気で攻略を狙っているのか。
「それでは、こちらにどうぞ。」
僕たちは、お城の中に案内された。
通路を進んでいくと、一番奥の豪華な扉の部屋の前で止まった。
「侯爵様、ミーサ様、ご一行がお見えになりました。」
「入れ。」
「それでは、皆さま、中にどうぞ。」
僕たちは、セバスさんが空けた扉から、中に入った。
そこは、まさに、前世で見たヨーロッパのお城の中の部屋、そのものだった。
「ささ、皆さま、こちらにどうぞ。」
中に入ってからも、セバスさんに案内されて、応接家具がある部屋の中心へ通された。
そこには、既に一人、中年の男性が座っていた。
「君たちが、ミーサ、カエデ、トメ、ピピ、ポポ、ライトの6人パーティーかね。」
「はい。」
「私が、アルフォードだ。宜しく。」
「それでは、皆さま、こちらにお座りください。」
ここは、ちゃんと形式ばって、名前が呼ばれた順番で、座ったほうがいいよね。
なので、僕は一番、最後に座った。
「ミーサ君、キングを攻略するというのは本当かね。」
「はい、アルフォード様。」
「そうか、率直に言おう。今の君たちで、81階は難しいだろう。」
「はい、それは。大量のゴーレムとなると、どうするものかと悩んでおりました。」
「そうだろう。どうかね、うちの攻略部隊に参加してみては。」
「はい、それは、そのう、........。」
「侯爵様、宜しいでしょうか。」
「ん!、君はライト君と言ったかな。」
今、嫌そうな目したよね。
「はい、一番ランクの低い身で侯爵様とお話しするのは、申し訳ないのですが。ミーサ様に代わって、お話をさせて頂いても。」
「ライト、余計なことを。」
「しかし。」
「まあ、ミーサ君、いいじゃないか。」
「で、ライト君、何かね。」
「はい、侯爵様。ミーサ様は、迷っておいででして。」
「迷ってる?。何に?。この人数での攻略にかね。」
「いえ、丁度、悩んでいる時に、セバスさんにお声を掛けて頂いたので、良かったのですが、失礼ながら、侯爵様の評判が宜しくないことを聞いております。ミーサ様は、それを心配されておりまして。申し訳ございません。」
「ほう、噂ねえ。だが、君たちは高額の引き受け金を払って、ピピとポポを引き取ったのだから、話は聞いているんじゃないのかね。」
「はい、それは、聞いておりますが、ピピとポポは、仲間の仇をダンジョンを攻略することで、晴らしたいと言っております。」
「そうなのかね。」
「そうニャ。自分たちだけ生き残ったニャ。仲間の仇はゴーレムニャ。」
「ほう、ゴーレムね。」
「弔いさえ出来ればいいニャ。攻略出来たら、身受け金の金貨2500枚を、ミーサに払って欲しいニャ。」
「なるほど、身受け金をね。それで、チャラにしたいっていうことかね。」
「そうニャ。」
「じゃあ、カエデ君とトメさんについては、どうかな?。」
「私たちは異国から来ております。攻略すれば名が上がり、有名になれると。攻略した暁には、名を残せれば。」
「ほう、名を残したいと。」
「では、ミーサ君は、どうかね。」
「はい、わたしは、Sランクを目指しております。攻略が出来ればSランクも夢ではないと思っております。」
「そうかね。では攻略出来れば、ギルドに推薦して欲しいと。」
「はい。」
「今、聞いた君たちの条件なら、なんら問題はない。攻略出来た暁には、さらに報奨金を出そう。一人当たり、金貨5000枚は出そう。それに、もし、途中の階層で、高価なものが手に入れば、それも分配する。」
はあ~、僕の話は無いんですね。
完全に荷物持ち扱いってことね。
Eランク舐めると後が怖いよ。
たぶん。
「アルフォード様、そんな破格の条件で、宜しいのでしょうか?。」
「セバス、私がいいと言っているのだから、問題ない。」
「はい、承知いたしました。」
「ミーサ君、何か不満かね。」
「いえ、そんなことは、......。」
「ははははは、噂のことかね。噂は噂だよ。どこぞの貴族が、私を貶めようと、良からぬことを流しておるからな。」
「そうですとも、ミーサ様。もし、参加されて何か不満があれば、言って頂ければ対応いたしますし、途中で辞めて頂いても問題ありませんよ。そう、一つだけ参加される際には条件がありまして、攻略の最中は、この屋敷とダンジョンの往復しか外には出ないことが条件です。何分、何処で情報が漏れるか分かりませんので、そこはご了承ください。」
「そ、そうですか。ですが、即答は。」
「そうだろうね。長期にわたってダンジョンに入るんだ。いろいろとあるだろう。戻ってから、もう一度、仲間と相談して、返事をしてくれたまえ。」
「ありがとうございます。侯爵様。」
「あのゴーレムの大群だからねえ。よく考えてくれたまえよ。ははははは。」
僕たちは、一旦、家に帰った。
みんなで、リビングに入ると、
「ああ~、疲れた。もう、ライトが芝居しろっていうから、頑張ったんだからね。」
「そうよ、変なこと言わないように、大変だったわよ。」
「そうニャ、変なこと言わニャいように、大変だったニャ。」
「みんな、お疲れ様。だけど、こっちも言わなかったけど、向こうも、まあ、いいことしか言わなかったよね。」
「そうね。」
「多分、僕たちがどんな条件を出しても、呑むんじゃないかな。」
「えっ!、そうなの。」
「だから、報酬なんて誘い文句だけってことだね。問題は、セバスさんが最後に言った、外に出れないことかな。」
「そっか、連絡も取れなくなるってことね。」
「でも、ライト、参加するにしても、81階の攻略ってどうするき。」
「ゴーレムって、石や土で出来てるんだよね。」
「そうね。ピピ、ポポ、何か変わったところなかった。」
「大きさニャ。」
「大きさって、普通のよりも大きいってこと。」
「そうニャ、二回りぐらい大きいニャ。それに固いニャ。」
「硬い?、硬いってどういうこと?。」
それがどれぐらいか、僕には分からないんだよなあ。
でも、鉱物ってことだよなあ。
なんだっけ、勉強したよなあ。
物質の構成がなんとかって。
はあ、思い出せないぞ。
僕たちは夜遅くまで、話し合いをした。
で、結局、最短で攻略できることを選択した。
それは、アルフォードの部隊に参加すること。
どういう結末が待っているかは、分からないけど、とにかく、利用するなりしても、自分たちで挑んでみるしかないという結論だった。




