第7話 メイサと過去
僕はギルドマスターとミーサさんの間で、そんな事が有ったとは露知らず、カペラさんと登録情報を確認していた。
「ライトさん。貴方は、まだ孤児院に住んでいるようですね。」
「孤児院ですか?」
「まだ収入が少なかったり、独立する事が出来ない人は、寝泊まりだけはさせてもらっている人が居るんですよ。」
「そうなんですね。うう~ん、やっぱり思い出せないですね。」
「一度住んでいた孤児院に行ってみたら、どうですか?」
「そうですね。知り合いに会えば、何か思い出すかもしれませんね。」
いやあ~、そんな事ないんだけどなあ。
だって転生したから、何も知らんねん。
はあ~。
どうすりゃええねん。
「あら、カペラ。ライト君はどう?」
「ミーサさん。一応、第3孤児院に住んでいるようなので、一旦行ってみたらって言う話をしていた所です。」
「第3孤児院までの地図とか有りますか?」
「あら。じゃあ、私が案内してあげるわよ。ちょっと待ってて。」
ミーサさんが天空の城のメンバの所へ行って、直ぐに帰って来た。
「ミーサさん、大丈夫何ですか?」
「ええ。何時ものお店で飲んでいるって。私はライト君を送ってから合流する事にしたから大丈夫よ。」
「何かすいません。何処って言われても、やっぱり分からなくて。」
「いいのよ。私も孤児院出身だから、ほっておけないし。」
こうして僕はミーサさんに連れられて、第三孤児院なる場所に向かった。
「街の中を見ても、何も思い出せない?」
「そうですね。さっぱり何処かも分かりません。」
だから初めて何で全く分かりませんよ。
そりゃ、そうでしょう。
街の中を歩いて、お店が立ち並ぶ一帯を過ぎた。
住宅街に入り、まだ進んで行く。
「この辺が普通の住宅街になるわね。」
「そうなんですね。やっぱり全く分からないですね。」
「そう。よっぽど事件を思い出したくないのかしら。」
そんな話をしながら進んで行くと、小さな学校のような建物が見えてきた。
「ライト君。あそこが第三孤児院よ。」
「あれですか?。うう~ん。そうなんですね。」
僕達は第三孤児院の門を潜った。
外には誰も居なかったので、玄関で声を掛けた。
「すいません。こんにちは。」
「はあ~い。どちら様ですか?」
「あら、ライトじゃない。何してんの?。この綺麗な人は?。もしかして~。」
「私は冒険者でミーサ。院長先生はいらっしゃいますか?」
「えっ!。ミーサさん。あの冒険者の。大変。先生、先生!」
だだだだだ~。
走って行っちゃったよ。
やっぱりミーサさんって有名なんだ。
「何だね。メイサ。痛たたたた~。そんな慌てんでも。」
「私が院長のダイクですが。これはミーサさんご無沙汰ですね。」
「ダイク院長。ご無沙汰してます。」
へっ!
知り合いなの?
「ライトが何かやらかしましたかの。」
「いえいえ。ライト君は別に。私は送って来ただけですから。」
「はて?。ライトは何時も自分で帰って来ておろうが。何をしておるんじゃ。」
「あの。ちょっとお話をしておいた方がよさそうなので、宜しいでしょうか。ダイク院長。」
「ああ、構わんよ。さあ上がって」
僕とミーサさんは、院長と一緒に奥の部屋に行った。
院長室にはギルドに比べると質素なソファが在った。
僕とミーサさんが座り、院長とメイサという女の子がお茶を持って来て一緒に座った。
メイサという子が小さい声で僕に聞いてきた。
「ライト。何かあるの?」
「あ、いや。あのう、.....。」
「院長、メイサさん。私が説明しますね。」
「あ、はい。よろしくお願いします。」
二人は何が始まるのか、全く想像も出来ない様だった。
「余り遠回しに言っても仕方ないので、率直に言いますね。ダンジョンでゴールドラッシュのパーティーが遭難しました。」
「ええっ!!」
「ゴールドラッシュってゴリー達のですか?」
「そうです。数日前にダンジョンに入って、予定の日になっても戻らず連絡も無かったので、ギルドから捜索に出ました。私の居るパーティーが、丁度、捜索に向かいました。」
「えっ!。ライトが居るって事は無事なんですよね?」
ミーサさんが、首を、横に振る。
「捜索した結果、全滅したようです。装備品等も回収しました。」
「ウソ、ウソ、嘘よ。この前まで「俺たちは一番になる」って、何時も偉そうに言ってたゴリー達が全滅なんて。」
「捜索した結果、ダンジョンの奥でゴブリンの群れに遭遇した様です。その中にはユニークのゴブリンも居ました。多分、その群れにやられたんだと思います。」
「あの馬鹿ども。だから無理するんじゃないって、あれほど言ったのに。何て事だ。」
「ライト。死んだらダメ!!、ダメ、だめ、ダメ!!」
僕の胸を叩きながら涙を流していたメイサ。
院長も涙を流していた。
僕は会った事もないのでどうしたらいいのか、分からなかった。
しばらくして二人が落ち着いた頃。
「ライトは無事だったんですね。」
ミーサさんが首を横に振る。
「ライト君は生きて見つかりました。だけど記憶が有りません。住んでいた所も分からなかったので、ギルドで調べて連れてきました。」
「ウソ、ライト。私よ。私。メイサ。ずっと子供の時から、一緒に居たじゃない。私も分からないの?」
「メ・イ・サさん、分からないです。すいません。」
「子供の時からこの孤児院で、一緒に過ごしたじゃない。私の事も本当に分からないの?」
「はい。院長先生もメイサさんも、此処に居る人、ゴールドラッシュの人、何も分かりません。」
「多分、目の前で大変な事が在った時に、記憶が無くなる事があるそうです。一時的なのか何時までかは分かりませんが、ライト君はそういう状況です。」
わあああああああああ~!!
メイサが大きく泣いた。
何で?
「そうですか。事情は分かりました。ミーサさん、態々ありがとう御座いました。」
「遺品をどうするかとか、何かあればギルドにご相談下さい。私はこれで失礼させて頂きます。」
「ミーサさん、ありがとう御座いました。」
僕はミーサさんへお礼を言った。
院長先生が玄関まで、ミーサさんを送った。
部屋に残った僕とメイサは無言だった。
メイサはショックだったのか、まだ、
「ぐすん、ぐすん」
泣いていた。
そして院長先生が戻ってきた。
「ライト。大丈夫かい?」
「はい。体は大丈夫なんですけど。やっぱり何も思い出せないのは、ちょっと。」
「そうか。時間が経てば思い出すかもしれんからな。しばらくはゆっくりしたら、どうだ。」
「そうですね。街の中を見たりしてみます。」
「そうだな。メイサ。ライトを部屋まで案内してやってくれんか。部屋も分からんのじゃろ。」
「はい。メイサさん。すいません。」
「もう、メイサさんって何て止めてよ。気持ち悪い。昔から呼び捨てだったじゃない。」
「そうなんですか?。じゃ、じゃあ。メイサ。お願いします。」
「敬語も気持ち悪い。」
「すいません。」
僕はメイサに案内されて、自分の部屋に行った。
「此処がライトの部屋よ。」
「此処が、.......。」
ガチャッ!
部屋に入ると、其処には何も無かった。
只、ベッドと部屋の隅に大きめのズタ袋が在るだけだった。
「此処が僕の部屋?」
「そうよ。ホント、何にも無い部屋。欲が無いって言うか、お金を貰っても、ほとんどが院長先生に渡しちゃうから。」
「メイサ。僕ってどんな感じだったの?」
「どんな?。どんなって言っても。2歳ぐらいの時に此処に来たわ。私も。院長先生や卒業したお兄ちゃんや、お姉ちゃんに生きていく為に必要な事を教わった。私は料理が好きだったから料理。ライトは、.....みんなに使われてた。」
「そうなんだね。」
「でも文句を言ったり、嫌がったりもしないで、何でも一生懸命やってた。3つ上のゴリー達が12歳になる頃から、冒険者を目指して訓練を始めたの。最初はライトも見ているだけだったけど。」
「12歳か。」
中学校ぐらいで、訓練を始めるのか。
「そうね。ライトも12歳になると、同じようにゴリー達について、訓練を始めたの。何をやっても駄目だったけどね(笑)。それでゴリー達は、16歳で冒険者になって、先輩のパーティーに入ってダンジョンに行き始めた。」
「16歳で冒険者に?」
高校生ぐらいで、冒険者か。
「ライトも16歳になると冒険者になった。その時、丁度、ゴリー達が独立する事になって、ライトもそのパーティーに入る事になったの。半分は強制みたいなもんだったけどね。」
「パーティーか。」
「それから今までゴールドラッシュで、荷物運びや雑用をやっていたわ。」
「そうなんだ。僕って何も取り柄が無かったんだね。(笑)」
「で、でも。ライトは優しかったし、小さい子の面倒も、ちゃんと見てたのよ。それで、ずっとこの孤児院を守りたいって言ってた。」
「そう。メイサ。ありがとう。何となく自分の事が分かったよ。」
「じゃ、じゃあ。私は帰るわね。」
そう言うとメイサは、自分の家に帰っていった。
「此処がライトの部屋か。袋の中でも確認してみるか。」
よいしょっと。
ええ~と。
皮の胸当て、グローブ、ナイフと、ずた袋か。
これだけか。
それも、どれも使い古された物だな。
きっと誰かのお下がりだろう。
ライト、君は何がしたかったんだ?
僕はこれからどうすればいいんだ?
そんな事を思いながら、ベッドに横になった。
「まあ。でも、こうなったら。この世界に慣れて、何とかしなくちゃいけないよな。」
そんな事を思っていたら、いつの間にか寝てしまっていた。
当方の作品をお読み頂いて、感謝の言葉しかありません。
宜しければ、感想や励まし、続きが見たい等お言葉を頂ければ幸いです。
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
素直に感じた評価で結構です。
また、ブックマークをして頂けても幸いです。
何卒よろしくお願いいたします。