表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/407

第7話 メイサと過去





 僕はギルドマスターとミーサさんの間で、そんな事が有ったとは露知らず、カペラさんと登録情報を確認していた。



「ライトさん。貴方は、まだ孤児院に住んでいるようですね。」

「孤児院ですか?」


「まだ収入が少なかったり、独立する事が出来ない人は、寝泊まりだけはさせてもらっている人が居るんですよ。」

「そうなんですね。うう~ん、やっぱり思い出せないですね。」


「一度住んでいた孤児院に行ってみたら、どうですか?」

「そうですね。知り合いに会えば、何か思い出すかもしれませんね。」


 いやあ~、そんな事ないんだけどなあ。

 だって転生したから、何も知らんねん。

 はあ~。


 どうすりゃええねん。



「あら、カペラ。ライト君はどう?」

「ミーサさん。一応、第3孤児院に住んでいるようなので、一旦行ってみたらって言う話をしていた所です。」


「第3孤児院までの地図とか有りますか?」

「あら。じゃあ、私が案内してあげるわよ。ちょっと待ってて。」


 ミーサさんが天空の城のメンバの所へ行って、直ぐに帰って来た。


「ミーサさん、大丈夫何ですか?」

「ええ。何時ものお店で飲んでいるって。私はライト君を送ってから合流する事にしたから大丈夫よ。」


「何かすいません。何処って言われても、やっぱり分からなくて。」

「いいのよ。私も孤児院出身だから、ほっておけないし。」


 こうして僕はミーサさんに連れられて、第三孤児院なる場所に向かった。



「街の中を見ても、何も思い出せない?」

「そうですね。さっぱり何処かも分かりません。」


 だから初めて何で全く分かりませんよ。

 そりゃ、そうでしょう。


 街の中を歩いて、お店が立ち並ぶ一帯を過ぎた。

 住宅街に入り、まだ進んで行く。


「この辺が普通の住宅街になるわね。」

「そうなんですね。やっぱり全く分からないですね。」


「そう。よっぽど事件を思い出したくないのかしら。」


 そんな話をしながら進んで行くと、小さな学校のような建物が見えてきた。


「ライト君。あそこが第三孤児院よ。」

「あれですか?。うう~ん。そうなんですね。」


 僕達は第三孤児院の門を潜った。



 外には誰も居なかったので、玄関で声を掛けた。


「すいません。こんにちは。」

「はあ~い。どちら様ですか?」

「あら、ライトじゃない。何してんの?。この綺麗な人は?。もしかして~。」


「私は冒険者でミーサ。院長先生はいらっしゃいますか?」

「えっ!。ミーサさん。あの冒険者の。大変。先生、先生!」



 だだだだだ~。



 走って行っちゃったよ。

 やっぱりミーサさんって有名なんだ。


「何だね。メイサ。痛たたたた~。そんな慌てんでも。」

「私が院長のダイクですが。これはミーサさんご無沙汰ですね。」

「ダイク院長。ご無沙汰してます。」


 へっ!

 知り合いなの?



「ライトが何かやらかしましたかの。」


「いえいえ。ライト君は別に。私は送って来ただけですから。」

「はて?。ライトは何時も自分で帰って来ておろうが。何をしておるんじゃ。」


「あの。ちょっとお話をしておいた方がよさそうなので、宜しいでしょうか。ダイク院長。」

「ああ、構わんよ。さあ上がって」



 僕とミーサさんは、院長と一緒に奥の部屋に行った。

 院長室にはギルドに比べると質素なソファが在った。


 僕とミーサさんが座り、院長とメイサという女の子がお茶を持って来て一緒に座った。


 メイサという子が小さい声で僕に聞いてきた。


「ライト。何かあるの?」

「あ、いや。あのう、.....。」


「院長、メイサさん。私が説明しますね。」

「あ、はい。よろしくお願いします。」



 二人は何が始まるのか、全く想像も出来ない様だった。



「余り遠回しに言っても仕方ないので、率直に言いますね。ダンジョンでゴールドラッシュのパーティーが遭難しました。」


「ええっ!!」

「ゴールドラッシュってゴリー達のですか?」


「そうです。数日前にダンジョンに入って、予定の日になっても戻らず連絡も無かったので、ギルドから捜索に出ました。私の居るパーティーが、丁度、捜索に向かいました。」


「えっ!。ライトが居るって事は無事なんですよね?」


 ミーサさんが、首を、横に振る。



「捜索した結果、全滅したようです。装備品等も回収しました。」

「ウソ、ウソ、嘘よ。この前まで「俺たちは一番になる」って、何時も偉そうに言ってたゴリー達が全滅なんて。」


「捜索した結果、ダンジョンの奥でゴブリンの群れに遭遇した様です。その中にはユニークのゴブリンも居ました。多分、その群れにやられたんだと思います。」



「あの馬鹿ども。だから無理するんじゃないって、あれほど言ったのに。何て事だ。」


「ライト。死んだらダメ!!、ダメ、だめ、ダメ!!」


 僕の胸を叩きながら涙を流していたメイサ。

 院長も涙を流していた。


 僕は会った事もないのでどうしたらいいのか、分からなかった。


 しばらくして二人が落ち着いた頃。


「ライトは無事だったんですね。」


 ミーサさんが首を横に振る。


「ライト君は生きて見つかりました。だけど記憶が有りません。住んでいた所も分からなかったので、ギルドで調べて連れてきました。」


「ウソ、ライト。私よ。私。メイサ。ずっと子供の時から、一緒に居たじゃない。私も分からないの?」

「メ・イ・サさん、分からないです。すいません。」



「子供の時からこの孤児院で、一緒に過ごしたじゃない。私の事も本当に分からないの?」

「はい。院長先生もメイサさんも、此処に居る人、ゴールドラッシュの人、何も分かりません。」


「多分、目の前で大変な事が在った時に、記憶が無くなる事があるそうです。一時的なのか何時までかは分かりませんが、ライト君はそういう状況です。」



 わあああああああああ~!!


 メイサが大きく泣いた。

 何で?



「そうですか。事情は分かりました。ミーサさん、態々ありがとう御座いました。」

「遺品をどうするかとか、何かあればギルドにご相談下さい。私はこれで失礼させて頂きます。」


「ミーサさん、ありがとう御座いました。」



 僕はミーサさんへお礼を言った。


 院長先生が玄関まで、ミーサさんを送った。


 部屋に残った僕とメイサは無言だった。


 メイサはショックだったのか、まだ、


「ぐすん、ぐすん」


 泣いていた。



 そして院長先生が戻ってきた。


「ライト。大丈夫かい?」

「はい。体は大丈夫なんですけど。やっぱり何も思い出せないのは、ちょっと。」


「そうか。時間が経てば思い出すかもしれんからな。しばらくはゆっくりしたら、どうだ。」

「そうですね。街の中を見たりしてみます。」


「そうだな。メイサ。ライトを部屋まで案内してやってくれんか。部屋も分からんのじゃろ。」

「はい。メイサさん。すいません。」


「もう、メイサさんって何て止めてよ。気持ち悪い。昔から呼び捨てだったじゃない。」

「そうなんですか?。じゃ、じゃあ。メイサ。お願いします。」


「敬語も気持ち悪い。」

「すいません。」


 僕はメイサに案内されて、自分の部屋に行った。


「此処がライトの部屋よ。」

「此処が、.......。」



 ガチャッ!



 部屋に入ると、其処には何も無かった。


 只、ベッドと部屋の隅に大きめのズタ袋が在るだけだった。



「此処が僕の部屋?」

「そうよ。ホント、何にも無い部屋。欲が無いって言うか、お金を貰っても、ほとんどが院長先生に渡しちゃうから。」


「メイサ。僕ってどんな感じだったの?」


「どんな?。どんなって言っても。2歳ぐらいの時に此処に来たわ。私も。院長先生や卒業したお兄ちゃんや、お姉ちゃんに生きていく為に必要な事を教わった。私は料理が好きだったから料理。ライトは、.....みんなに使われてた。」


「そうなんだね。」



「でも文句を言ったり、嫌がったりもしないで、何でも一生懸命やってた。3つ上のゴリー達が12歳になる頃から、冒険者を目指して訓練を始めたの。最初はライトも見ているだけだったけど。」


「12歳か。」



 中学校ぐらいで、訓練を始めるのか。



「そうね。ライトも12歳になると、同じようにゴリー達について、訓練を始めたの。何をやっても駄目だったけどね(笑)。それでゴリー達は、16歳で冒険者になって、先輩のパーティーに入ってダンジョンに行き始めた。」


「16歳で冒険者に?」



 高校生ぐらいで、冒険者か。



「ライトも16歳になると冒険者になった。その時、丁度、ゴリー達が独立する事になって、ライトもそのパーティーに入る事になったの。半分は強制みたいなもんだったけどね。」

「パーティーか。」


「それから今までゴールドラッシュで、荷物運びや雑用をやっていたわ。」

「そうなんだ。僕って何も取り柄が無かったんだね。(笑)」


「で、でも。ライトは優しかったし、小さい子の面倒も、ちゃんと見てたのよ。それで、ずっとこの孤児院を守りたいって言ってた。」

「そう。メイサ。ありがとう。何となく自分の事が分かったよ。」



「じゃ、じゃあ。私は帰るわね。」

 そう言うとメイサは、自分の家に帰っていった。



「此処がライトの部屋か。袋の中でも確認してみるか。」


 よいしょっと。


 ええ~と。

 皮の胸当て、グローブ、ナイフと、ずた袋か。

 これだけか。


 それも、どれも使い古された物だな。

 きっと誰かのお下がりだろう。



 ライト、君は何がしたかったんだ?

 僕はこれからどうすればいいんだ?



 そんな事を思いながら、ベッドに横になった。


「まあ。でも、こうなったら。この世界に慣れて、何とかしなくちゃいけないよな。」



 そんな事を思っていたら、いつの間にか寝てしまっていた。




当方の作品をお読み頂いて、感謝の言葉しかありません。


宜しければ、感想や励まし、続きが見たい等お言葉を頂ければ幸いです。


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


素直に感じた評価で結構です。


また、ブックマークをして頂けても幸いです。


何卒よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] とりあえず感嘆符(!)や疑問符(?)の後に句点(。)は必要ありません
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ