第6話 天空の城の帰還
翌朝、朝食を済ませると、早速、移動を開始した。
此処から先は冒険者も多くなり、魔物が邪魔になる事も無く順調に進み、午後を過ぎた辺りには、3階まで到達していた。
「よし。後、2階だ。昼食を取らずに一気に行こう。ライト君、大丈夫かな。」
「ええ、大丈夫です。」
僕は密かに、昨日、鑑定した時にコピーした身体強化を付けていた。
だから、特に問題無く移動出来ていたのだったが。
僕達が一階まで来て、後、少しという所で異変が起こった。
ガアン!
グワン!
グワン!
何だ、これは。
僕は急に、眩暈がしてフラフラになる。
「どうした。ライト君、大丈夫か?」
「何か急に、眩暈がして。」
「エリン。ちょっと見てくれ。」
「体温が低いわね。脈も弱いわ。急にどうしたのかしら。もしかして、これ飲んでみて。」
僕は、エリンさんが出した小瓶の薬を飲んだ。
すると、薬を飲んだ途端に、状態が良くなった。
「あれ。急に良くなりました。どうしたんでしょう?」
「ライト君は魔力切れね。多分、記憶が無いから、魔力を使うような事が分かっていなくて、移動する際に、無意識で何かを放出してるんじゃないかな。」
いや、すいません。
身体強化をしてました。
ホント、スイマセン。
「ガンドウ。背負って行ってやれ。」
「ああ、儂は構わんぞ。人、一人ぐらい大した事ないわい。」
「ガンドウさん。スイマセン。」
僕は、背負われたままダンジョンを出た。
僕は、天空の城の皆さんと、報告の為、そのままギルドへ向かった。
いやあ。
これが、この世界の空か。
何時ぐらいぶりだろうな。
空気が美味いなあ。
そんな事を感じていると、あっという間に街の壁が見えてきた。
あれが街かあ。
でも凄い壁に囲まれてるんだなあ。
ガンドウさんの肩越しに、壁の先に人の行列が見える。
天空の城の皆さんは、その横を通り過ぎ、並んでいる列の奥、鎧を着た人の中でも一番立派な鎧の人に声を掛けた。
「天空の城のメンバだが。急ぎギルドへ行きたいんだが。」
「ああ、ギルドから連絡は来ている。確か5名の筈だが。その背負われているのは?」
「彼は行方不明のメンバの生き残りだ。特に持ち物も無いから、問題ない筈だが。」
「一応、確認させてもらう。」
僕は降ろされて身体検査をされた。
「ギルドカードも無いのか?」
「装備とかは此方にあるが、やられたメンバの方も、これぐらいしか残って無かったんだ。」
「ああ、分かった。通っていいぞ。調査した結果はギルドから報告するようにな。」
「了解した。ギルドマスターへ伝えておく。」
何か、大変な事に、なってるんだな。
僕達は街に入った。
うおおおおおお~!!
思わず心の中で叫んだ。
結構、デカい街だなあ。
これがこの世界の街か。
昔の世界の西洋風の街並みに似ているなあ。
昔の世界でも行った事ないけど。
近代というよりも、中世に近いなあ。
転生って、そんな感じなんだな。
「ライト君。あれが冒険者ギルドだよ。」
へえ~。
石造りの結構デカい建物だなあ。
「何か思い出すかい。」
「いえ。初めて来た感じです。」
だってえ~。
本当に初めてだから。
僕達は正面のドアからギルドへ入った。
えっ!
中に居た人が一斉に僕達を見た。
な、何か、凄い視線ですけど。
「おいおい。天空の城が帰って来たぞ。」
「どうなったんだ。無事なのか?」
「背負われている奴は誰だ?。」
何か色々、言われてる。
僕が来る前の事だからなあ。
はあ~あ。
また、何か聞かれるのかなあ。
僕は穴の中と此処までの道で見た事しか知らないんだけど。
とっても憂鬱なんですけど。
「ゴードンさん。お疲れ様です。」
「カペラ。ギルマスは?」
「はい。部屋でお待ちです。」
僕達は2階に上がった。
二階にある一番奥の豪華な扉が、ギルドマスターの部屋らしい。
コン、コン!!
「ギルドマスター。天空の城が帰りました。」
「入っていいわよ。」
えっ!
ギルドマスターって女の人なの?
「失礼します。」
僕達は部屋に入った。
「まあ、掛けなさい。」
其処は、昔の世界の映画で見たような西洋のお城の一室。
コの字型にソファが在って、その向かいにギルドマスタ-のデスクが在る。
ゴードンさん、ミーサさん、エリンさんがソファに掛けて、エルドさん、ガンドウさんはソファの後ろに立っていた。
僕がガンドウさんに下ろされて、じっと立っていると。
「さあ、ライト君も座って。」
「はい。」
僕は、ギルマスのデスクの真向いであるお誕生席に座った。
ギルマスがデスクから立ち上がり、ゴードンさんの向かいに、ギルマスとカペラさんが座った。
「で、どうだった?」
「はい。ゴブリンが沸いていました。」
「ほう、ゴブリンがねえ。場所は。カペラ、地図持っといで。」
「はい。」
カペラさんが地図を持ってきて、テーブルに広げた。
「丁度、10階ですが。最短ルートの通り道からは外れた奥の方です。」
カペラさんが重ねられた地図から、10階の地図を上にして広げた。
「ルートの外れた奥ってえと、この辺かい。」
「もう少し奥の丁度、三又になったこの辺です。」
「そうかい。この最深部には、宝箱が出る事もあるからねえ。欲をかいたね。」
「で、駄目だったんだろ。」
「はい。ライト君だけが生き残っていました。」
「ああ、あんたかい。よくもまあ助かったね。」
「はい。あの。運が良かったのか。良く分からないですが。」
「ん!。彼はどうしたんだい?」
「ギルマス。どうもライト君は、記憶が無いらしいんです。」
「記憶がかい?」
「はい。自分達が見つけた時には、既に記憶が無いようでした。」
「まあ目の前で仲間が死んだりしたら、そうなる事も有るからねえ。どうやって逃げたんだい。」
「確認しましたが、この奥の部分に穴があって、そこに落ちた事が幸いして見つからなかったようです。」
「ほお。穴にかい。運が良かったねえ。まあゴブリンじゃあ、そう言う事も有るかもしれないねえ。」
「で、ギルマス。ゴブリン何ですがユニークでした。」
「ユ、ユニークだってえ!。どいつだい。」
「はい。ゴリンナイトは通常でしたが、ゴブリンメイジがユニークでした。」
「ゴブリンメイジのユニークつったら珍しいねえ。それも10階かい。」
「はい。キングまで生まれていたら大変でしたが、全部始末してきました。後で確認しましたが、メイジまででした。」
「そうかい、そうかい。ならゴブリンは、一旦解決だね。ゴールドラッシュの子達には、気の毒な事をしたね。これからだってのに。だから若いのには無理するんじゃないって、あれほど言っているんだけどねえ。」
はああああ。
何かギルマスは悔しそうだった。
「これが討伐の証と、魔石、遺品も持ってきました。」
「ああ、ご苦労さん。カペラ。清算と報酬を用意してやんな。」
「はい。それでは、しばらくお待ちください。」
「それにしても、ライトと言ったね。あんたは、.....、Eランクかい。まだまだだね。こんな事になっちまって、誰か知り合いでも居るのかい?」
「ええと。思い出せないので、これからどうしようかと思ってます。」
「ちょっと、待ってな。登録した時の情報から調べてやるから。」
「はい。ありがとうございます。」
しばらく待っていると、カペラさんが帰って来た。
「お待たせしました。こちらが今回の報酬と討伐の報酬になります。」
「カペラ。ライトの登録した時の情報から、誰か知り合いが居ないか確認してやんな。」
「了解です。じゃあ、ライトさん。下で確認しましょうか。」
そう言われて僕はカペラさんに連れられて部屋を出た。
「天空の城の皆さん。ありがとう御座いました。」
天空の城のメンバが、手を上げて挨拶してくれた。
「じゃあ、俺達も引き上げるか。取り敢えず一杯やって分配だな。ギルドマスター失礼します。」
「ああ、お疲れさん。」
天空の城のメンバが部屋を出て行こうとした。
「ミーサ、ちょっと。」
「はい、ギルマス。何か?」
「ちょっと、頼みたいんだが。あの子を少し監視してくれんかい。」
「えっ!。彼をですか?。何か不審な所でも有りましたか?」
「いや、只ね。ちょっと気になるんだよ。何故あんな状況で、彼だけが生き残ったか。普通だったら全滅だろうよ。それに穴に落ちたってのもね。」
「まあ、確かに言われればそうですけど。」
「ゴブリンだって、ずっとあそこに居るんだ。近くの道の構造ぐらい調べてるだろう。なのに生き残った。運が良かったのか。生き残って何よりなんだけど、ちょっと不思議なんだよ。」
「分かりました。やってみます。」
「ずっと見張れって訳じゃないよ。時々、様子を見て何か変わった事が無いかを見ておくれ。」
「承知です。」
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