第54話 奴隷
フォルスタッド公爵との、朝の挨拶が、終わった。
ミーサと、ブリーニャは、徹夜で仕事だったので、部屋で休むらしい。
メイサは、ミリガンさんと、今朝のフレンチトーストの手順を確認し、午後には、パン屋のヨーデルさんの所へ、行くらしい。
アイラさんと、アイさんも一緒に行って、自分達で、作ってみた粉の具合を、確かめながら、試すという事になった。
何か、僕は、暇になったな。
そんな時、コマースさんが、
「ライトさん。フォルスタッド公爵様に、目を掛けられるなんて、流石で御座いますね。」
「何か、よく分からないですけどね。」
「ライトさん。今後の相談なのですが、アイラやアイが、錬金を使いこなせるようになったら、カイーデ村に、製造拠点を置こうかと、思っております。」
「カイーデ村にですか?。」
「ええ、あそこは、丁度、王都とデルポートの中間ですし、中継地点には、丁度良いかと。それに、コームギの粉の運搬で、通る途中なので、加工には、丁度、良かったと思います。」
「それじゃあ、村に拠点を作れば、出稼ぎに行かなくても、生活出来るように、なりますね。」
「そうなんです。逆に人を送らないと、足りないかもしれません。で、相談なんですが、.....。」
「どうしました、コマースさん?。遠慮しないで、言ってください。僕に出来る事なら。」
「はい、只の作業なら、人を送ればいいのですが、錬金は、スキルが無いと出来ません。しかし、スキルを鑑定出来るのは、ライトさんしか、いらっしゃらないので。」
「ああ~!。そんな事ですか。構いませんよ。候補の人がいれば、いくらでも、鑑定しますよ。」
「おお~!。そうですか。それは、ありがとうございます。そうしましたら、これから奴隷商に、行きませんか?。」
「奴隷ですか?。」
「奴隷と言っても、借金奴隷、犯罪奴隷がありまして、借金奴隷については、こちらが借金の肩代わりをして、借金分を、働いてもらいます。その後も、雇われて働き続ける者も、多いので御座います。」
「それが、借金奴隷ですか。」
「犯罪奴隷については、犯罪者ですから、信用は、格段に落ちますが、契約魔法で、縛りがありますから、護衛や、単純な労働であれば、可能なのですよ。契約期間を、まじめに働けば、刑期が短縮されたりしますから、まじめに働く事が多いのです。殺人犯は、また、別になりますが。」
「それが、犯罪奴隷ですか。」
やっぱり、この世界でも、奴隷ってあるんだなあ。
「コマースさん、分かりました。行ってみましょう。」
「はい、よろしくお願いします。」
「みゃああああああ~!。」
あれ、サンニャも、行きたいみたいだね。
「コマースさん。サンニャを、連れて行ってもいいですか?。」
「大丈夫だと思いますよ。奴隷には、獣人もおりますし。」
僕は、サンニャを、肩に乗せて、コマースさんと、奴隷商に向かった。
いつも思うけど、落ちないんだよね。
コマースさんは、外通りを過ぎて、外壁沿いまで来た。
外壁に沿って進んで行くと、どんどん寂しい場所に、なっていく。
「コマースさん、この辺は?。」
「ライトさんは、初めてですね。王都は、外壁に近くなるにつれ、治安が悪く、スラムがあったりするのです。奴隷商の店も、そんな場所にあります。」
へえ~、そうなんだ。
王都でも、スラムってあるんだな。
「ここで、御座います。」
何か、普通の汚い、アパートって感じだけど。
コン!、コン!。
コマースさんが、ノックをする。
「どちらさんで?。」
「コマースだ。」
ガチャッ!!。
鍵が開く音がして、扉が開いた。
「これはこれは、コマース様。いつもお世話になります。」
「ザビールさん、今日は、また、奴隷を、ちょっと、見させてもらいに来ましたよ。」
「本日は、どのような奴隷を、お探しで。」
「一つは、警護、護衛。一つは、商品を作る作業をさせる為ですね。」
コマースさんが、ちらっと、僕を見た。
「こちらの方は?。」
ザビールという人物が、僕を見る。
「ああ、紹介が遅れましたね。こちらは、ライト様と仰って、今、私どもと一緒に、仕事をしていましてね。」
「どうも、ライトです。」
「これは、ライト様、この奴隷宿の店主ザビールと申します。以後、お見知りおきを。」
僕達は、ザビールさんに案内されて、建物の奥に通された。
「特定の条件があれば、こちらで相応な奴隷を選んで、お部屋で面通しをして頂くのですが、今回は、特に条件は無い、という事で宜しいですか?。」
「うん、まあ、そうなりますな。」
コマースさんが、チラチラと、僕を見てるけど。
「ザビールさん、僕が、鑑定持ちなんですよ。だから、コマースさんは、条件を出していないんです。」
「おお~!。ライト様は、鑑定持ちだったのですね。」
「一応、こちらでも、奴隷の情報は、調べておりますが、ご自分で確認されるという訳ですな。」
「はい。ザビールさんが、宜しければ、こちらで確認させて頂きますが。」
「はい、大丈夫ですよ。気になる奴隷がおりましたら、鑑定して頂いて結構ですよ。」
「ありがとうございます。」
「あの~、ライト様。そちらの猫は、変わった猫ですね。」
「あっ、すいません。連れて来てしまって。一緒じゃ不味いですか?。」
「いえ、中には、獣人もおりますので、こちらは構いません。もし、中で逃げるなりして、何かあっても、責任は負いかねますが、如何でしょうか。」
「それは、大丈夫です。離れませんから。」
「にゃあああああ~!。」
「何か言葉が、分かっているような感じですね。はははははは。」
「それでは、まず、こちらからになります。ここは、個人で、借金奴隷になった者がおります。」
「個人?。」
「ええ。あと家族で、奴隷になった者もおりまして、それは別室におります。家族は家族で、一部屋に入れておりますので。」
「分かりました。」
奴隷だけど、扱いは、それなりなんだな。
「この国では、奴隷と言っても、ちゃんと扱われるように、決まっているんですよ。フォルスタッド公爵が、王様に進言されて。」
「成程。」
フォルスタッドさんて、やっぱり凄いんだな。
この部屋には、30人いたけど、良さそうなスキルの人は、いなかった。
次の部屋も同じようだった。
「この辺の奴隷は、あまり変わり映えは、しませんね。元々が、貧しくて、借金がかさんだ連中なので。次は、家族になります。」
次の部屋に、行ってみた。
ここもあまり変わり映えしないと、思っていた最後の4人家族の所で、僕は止まった。
「こちらの家族は?。」
「はい、こちらの家族は、村で生活できなくて、王都にやってきたのですが、主人が怪我をして働けなくなり、代わって奥さんが働いていたのですが、治療などで、借金がかさんで、奴隷となった家族です。」
「話しかけても、大丈夫ですか?。」
「どうぞ。おい、お前たち、質問には、ちゃんと答えるんだぞ。」
「はい。」
元気ないね。
まあ、しょうがないか。
「どこの村の出身ですか?。」
「はい。王都から、4,5日行った山の中にある、カイーデ村になります。」
やはりそうだ。
あそこの村の住人は、やはり錬金のスキルが、代々ある人が、多いのか。
「そうですか。先日、王都に来る時、カイーデ村に寄ったんですよ。」
「そ、そうですか。何も無い所でしたでしょう。残った者も、生活が、ぎりぎりの貧しい村なので。」
「もし、生活出来る様なら、村に居ましたか?。」
「それは、生まれ育った村ですから。泣く泣く王都まで、出てきております。」
「村に居たアイラさんは、ご存じですか?。」
奥さんは、目を剥いて驚いた。
「ア、アイラを、ご存じなんですか?。私達の隣に、住んでおりました。も、もしかして病気が、悪化したとか。」
「ええ、魔素中毒が、高度まで悪化して、寝たきりのようでした。」
「そ、そうですか。アイラが、.....。」
奥さんは、悲しそうだった。
「でも、安心して下さい。今は、この王都にいて、病気の治療もして、元気ですよ。」
「アイラが、元気に、...良かった。でも、治療って、もしかして、私達と同じように、借金して治療を。今は、奴隷か、何かですか?。」
「いえ、今は、これから仕事をする為に、訓練している所ですよ。」
一瞬、ホッと、安心した顔をしたが、直ぐに、その顔も、また曇った。
その時、奥にいた娘が、話しかけてきた。
「あの~、アイお姉ちゃんは、元気ですか?。」
「アイさんも、元気だよ。お母さんと、一緒に、これからの仕事の準備を頑張っているよ。」
「よかった。また、会いたいな。」
「す、すいません。変な事を。」
「娘さんは、アイさんと、仲が良かったんですか?。」
「はい、いつも、実の姉の様に、慕っておりました。」
僕は、コマースさんに、頷いた。
「ザビールさん。こちらの家族は、幾らですか?。」
「あの~、宜しいんですか?。主人は、怪我が、完治しておりませんが。」
「構いませんよ。幾らですか?。」
「そうですね。金貨150枚ですが、鉱山へ送る手前だったので、金貨120枚で、如何でしょうか?。」
僕は、コマースさんへ、頷いた。
「では、この家族と、契約いたしますよ。」
「ありがとうございます。」
家族は、涙を流しながら、お礼を言っていた。
では、次は戦える奴隷になります。
ここは、全て個人の奴隷だった。
そりゃそうか、家族で居たら、こっちが驚くわ。
武闘派家族とか。
部屋に入ると、アピールが凄かった。
どこぞのダンジョンで、何階まで行ったとか、何の魔物を倒したとか。
でも、鑑定してみても、確かに、そこそこなんだけど、パッとしなかった。
でも、最後に居た二人は、別格だった。
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