第51話 新作のパン
その日の夜には、ミーサは、帰ってこなかった。
「やっぱり、後片づけに、時間が掛かってるのかなあ。」
僕は、パン屋の件もあったので、少し早く起きた。
なんと、そんな時間に、ミーサが返ってきた。
「ミ、ミーサ。お帰り。遅かったね。」
「ただいま。もう徹夜よ。サイクロプスって、ギルマスが思っていたよりも、大きかったみたいで。解体に時間が掛かったの。でも、ブリーニャが居たからかしらね、魔物も現れなかったから、処理は早く終わったわ。ブリーニャ、よしよし。」
「みゃああああああ~!。」
「そうなんだ。大変だったね。こっちも、ちょっとね。実は、ここにフォルスタッド公爵が、泊ってるんだ。」
「フォルスタッド公爵って、あの。貴族の中でも、一番のお方じゃないの。何で?。」
「どうも、お屋敷を、改装しているらしくて、長期じゃないし、たまには、いつもと違う所に、泊ってみたかったらしい。昨日、デライトさんが、言っていたよ。」
その後、昨晩の食事での出来事を、ミーサに教えた。
「そうだったの。で、朝食も新作を、出そうとしてるのね。」
「うん、だから、早く起きて、パン屋に行ってみようかと。」
「ふう~。何か、目が覚めたわ。私も、朝食を食べてから、休む事にするわ。だって、フォルスタッド公爵が相手なんだから、おちおち何て、寝てられないわよ。」
「じゃあ、ミーサは、部屋で待ってて。僕は、パン屋まで、行ってくるから。」
そう言って、僕は、パン屋に向かった。
パン屋の朝が早いのは、前世と同じようだ。
近くまで来ると、パンの焼く匂いが、漂っていた。
店の表は暗く、閉まっている。
僕は、お店の裏に、回ってみる事にする。
店の裏手では、表よりも、もっと、パンの焼く匂いがしていた。
裏手にある扉を、ノックする。
コン!、コン!。
「おう、誰だ。こんな朝早く。」
「ヨーデルさん、ライトです。」
「おう、お前か、ちょっと待て。」
ガチャ、ガチャ!。
扉を開けて、ヨーデルさんが、出てきた。
「おう、どうしたって言っても、パンが、気になって来たんだろ。」
「はい、ちょっと。そのパンが、凄い事になりそうで。」
「まあ、いい。中に入れ。」
僕は、パン工房に入った。
「で、凄い事って何だ?。」
僕は、昨晩の話を、ヨーデルさんに話した。
「おめえ、そりゃ、一大事だな。」
んん!。
何かヨーデルさん、そんなに大事に思ってないような、感じなんだけど。
「で、パンを朝出す事で、話をしてしまったので、.....。」
「そうか。で、心配になって、来たって訳か。」
「はい、すいません。朝早く。」
「んん~ん。」
腕を組んで、悩んでる様子なんだけど。
「なあ~んてな。心配すんな。俺が今まで、どれぐらいパンを、焼いてきたと思ってるんだ。」
「それじゃあ。」
「焼くのは、これからだけどな。おめえ、ありゃあ、凄ええぞ。俺には分かる。材用をこねている時から、まるっきり違うんだ。俺も焼くのが楽しみで、しかたねえ。」
「そんなに、違うんですか?。」
「ああ。特にな、お前から預かった粉と、種の組み合わせだ。粉を変えただけでも違うんだが、生地のまとまりと、弾力が半端ねえ。これを焼いたらさぞかし、ふわっと、焼けるんじゃないかと、思えるんだ。」
「そうですか。良かった。」
やっぱり、前世の記憶で、準備してみたけど、いけそうだ。
「よし、いつもの分が、焼きあがったから、新しいヤツを焼いてみるぞ。」
「お願いします。」
「おい、見ろ!。いつもの生地は、型に、のっぺりした感じで収まるが、こいつらは、生地がしっかりして、真ん丸だ。こりゃあ楽しみだぞ。」
ヨーデルさんが、1種類を3個の型に、それぞれ生地を入れ、合計6個の型を、窯に入れた。
「所で、これが上手く出来たら、どうするんだ。これっきりなのか。なあ、ライト。俺は、パン職人だ。生地だけで、違いは分かる。今後も、このパンを、焼かしてくれないか。」
「ええ、それは構いません。だけど、......。」
「何か、不満があるのか。俺じゃあ、役不足なのか?。」
「いえ、そんな事は、全くないんです。多分、今回のパンでも、まだ、未完成なんです。」
「未完成だと。まだ、何かあるのか?。」
「生地を作る工程が、今までよりも、手間を掛けないといけないと思います。」
「何!。もっと、手間を掛ける必要が、あるのか?。」
「すいません。今はこれぐらいしか言えないんですけど。戻ったら、メイサと相談します。ヨーデルさん、多分、朝が、一番忙しいんですよね。」
「ああ、そうだ。」
「そうしたら、メイサを、お店に来させるので、色々と試してみませんか?。」
「試すだと。」
「そうなんです。僕の考えは、メイサに伝えます。それを元に、ヨーデルさんとメイサで、完成させるんです。」
そんな相談をしていると、パンが焼きあがったようだ。
ヨーデルさんが、パンを、窯から取り出してみる。
窯から取り出したパンの一個を型から出して、ヨーデルさんが、切ってくれた。
まずは、新しい粉と、元々の種の組み合わせだ。
「ハフ、ハフ!。」
出来立てを、食べてみる。
「うう~ん、今までにない、ふわふわの食感で、美味しいですね。」
「おお~、凄いぞ。確かに、今までにない食感だな。こんなにも違うもんか、うんうん。」
今までのパンに比べれば、これでも、十分な気がするが。
「ヨーデルさん、もう一方を、食べてみましょう。」
さあ、種が変わったらどうなるか。
新しい材料同士で、作ったパンを、型から出して、ヨーデルさんが切ってくれた。
「あっ!。これは。はあ~~、美味い。食感、香り!。」
前世で食べていたパンに、凄く近い。
この世界では、雲泥の差だった。
「な、なんだ、これは。こんなパンが、出来るとわ。最高だぞ。ライト!。」
とりあえず、今日は、このパンを、公爵に出そう。
「ヨーデルさん、2種類のパンを、貰っていきます。」
「ああ、分かった。な、なあ、このパンだけでも、店に出せないか?。」
「出来る限り、材料の手配はしますけど、なるべく、少しづつ増やす方向で、お願いします。」
「ああ、分かった。その辺も、メイサと話せばいいのか?。」
「そうですね。お願いします。」
僕は、パンを持って、キングキャッスルに戻った。
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