第50話 パン屋再び
僕は、ギルドを後にしたのだが、そのまま宿に帰るには、ちょっと、早い時間だった。
「そうだ、昨日、準備したパンの材料を、ヨーデルさんへ渡しに行こう。」
ちょっと、この世界で食べているパンが、イマイチだと思っている僕は、コームギの粉を、錬金で加工した。
何かというと、確か、前世で食べていたパンの材料である小麦粉は、強力粉であると、記憶していたからだ。
それは、母親が、趣味で料理を作り、レシピをとあるサイトに、投稿しているからだった。
家にいる時は、よく手伝わされて、材料についても、あれこれ言われた事が、今となっては、役に立っているのである。
そして、パンを作るのに必要なのは、酵母。
この世界にある酵母の元が、何か分からない。
だから、やはりこれも母親が作っていた時の事を、思い出して、作ってみた。
それは、ヨーグルトをベースに作った酵母だ。
レーズンだったり、リンゴだったり、酵母の材料は知っていたが、この世界で、直ぐに、出来そうな材料を探して、見つけたのが牛乳だったのも、選択した理由だ。
この二つを持って、パン屋に行った。
パン屋は、この国、一番のパン屋と評判の「王都のパン」である。
僕は、店の前で立ち止まり、窓から中を覗くと、先日、初めて来た時にいた、店員さんがいた。
僕が、覗いているのに気付いた店員さんが、出てきて声を掛けてくれた。
「ライトさん、いらっしゃい。どうされたんですか、外で。」
「すいません。あの、猫がいるもので、お店に入ったら、ダメかなあって。」
「あら、そうなんですね。何か、御用ですか?。」
「ええ、ヨーデルさん、いらっしゃいますか?。」
「ええ、いますよ。呼んできましょうか?。」
「すいません。お願いします。」
店員さんが、ヨーデルさんを、呼んできてくれた。
「おっ!、ライトさん。今日はどうした。」
「はい、先日、お邪魔した時に、もっと、いい材料が手に入ったら、使ってみてくれると、おっしゃっていたので、お持ちしてみました。」
「何、もう手に入ったのか。」
「ええ、ちょっと、伝手がありまして、少し分けてもらいました。」
「そうか、そうか、それでパンを、作れって事なんだな。」
「ええ、すいませんが、お願いできますか?。」
僕は、マジックバッグに入れておいた、錬金した強力粉を取り出した。
「これぐらいあるんですが、どうでしょうか?。」
「おお、結構あるな。これだと、パンを6斤ぐらいは、作れるだろう。」
「そうですか。良かった。それで、すいませんが、作るときに、種を使うと思うのですが、いつものお使いの種を使って半分。もう半分は、こちらの種を、使ってもらえませんか?。」
「何、種も手に入ったのか。随分、白くて、ドロッとした種だな。」
「ええ、新種なんで、これを使ったら、どんなパンになるのか、比べたくて。」
「ああ、分かった。半分ずつ使って、作ればいいんだな。」
「はい、すいません。宜しくお願いします。」
「明日の朝、焼く時に、一緒に作ってみるからな。」
僕は、新しい材料を渡し終えると、宿に帰った。
「はあ~、疲れる一日だった。あ、そうだ。まだ、話に行かないと。」
僕は、サンニャを、連れているのだ。
キングキャッスルに入ると、直ぐに、デライトさんの所に寄った。
「デライトさん、すいません。」
「おや、ライト様、どうされました?。」
「いえ、実は、今日、北の森まで行ったのですが。その~、この猫を見つけて、連れて来てしまったんです。この猫を、部屋に連れていっても、宜しいでしょうか?。」
「ええ、大丈夫ですよ。獣人の方もいらっしゃいますし、やはり、貴族の方で、どうしてもと、連れてこられる方も、いらっしゃいますので、事前に、言っていただければ問題ありません。」
「そうですか、ありがとうございます。後、ミーサが、後ほど帰ってきますけど、もう一匹います。すいません。宜しくお願いします。」
「はい、かしこまりました。」
「ふうううう~。これで安心だ。良かったね。サンニャ。」
「にゃああああああ~。」
部屋に帰ると、メイサが休んでいた。
「あ、ライト、お帰り。その猫は?。」
「色々あってね。連れて来る事になったんだ。もう一匹いるんだけど、ミーサと、もう一回、北の森に行ってる。」
「ええっ!。また、森に行ってるの。だって、昼間に行ったんでしょ。」
「それも色々あって。どうしても、もう一回、行かないといけなくなった。」
丁度、夕飯の時間になっていたので、アイラさん、アイさんも一緒に食事をする。
「ライト様、本日から、コマース様の所で、錬金の練習を始めました。」
「ああ、そうですね。調子は、どうですか?。」
「自分なりには、出来たつもりなのですが、まだ、感触が沸かなくて。」
「まあ、そうですね。僕も未だに、よく分かってないですが、練習しないと、感覚は覚えないですからね。食事が終わったら、今日の出来た分を、見てみましょう。」
「はい、よろしくお願いします。」
そんな話をしていると、食堂の奥の仕切りから、何か声が聞こえた。
「これを作ったのは誰ですか?。料理長を呼んで下さい。」
ミリガンさん、何か、やらかしたんだろうか。
直ぐに、デライトさんと、ミリガンさんがやってきて、仕切りの向こうに消えた。
僕はメイサに、
「何かあったの?。ミリガンさん、失敗したんじゃ。」
「ふふ、そんな事しないわよ。今日の食後に出す甘味がね。プ・リ・ンなのよ。それも昼間、私と一緒に試した、今日、一番の出来のやつなの。」
ああ、そういう事か。
まあ、僕達は、何回か、食べているからね。
デライトさんと、ミリガンさんが、出てきた。
僕は、そっと手を挙げて、呼んでみた。
「どうでしたか。何か、言われたんですか?。」
「ライト様、見られておりましたか。プリンを、大変、気に入られたようで、是非、レシピを教えてほしいと。」
「そうですか。それで、教えたんですか?。」
「いえ、先日のライト様とのお話であった、キングキャッスルでしか味わえない料理であり、また、足を運んで頂きたいと申して、お断りさせて頂きました。」
「お偉い方、なんですか?。」
「はい、フォルスタッド公爵様です。」
あれ、メイサどうした?。
唖然と、してるけど。
「ラ、ラ、ライト。フォルスタッド公爵って言ったら、貴族の中でも、一番って言われている貴族よ。王様とも親しくて、権力を翳さず、一般の人からの人気も、抜群っていう。」
「メイサ様は、ご存じだったのですね。そうですね。評判もすこぶるよい、大変、ご高名な公爵様です。先ほどの話も、素直に受け取っていただけたのも、フォルスタッド公爵様だからなのです。」
「凄い方も、いらっしゃるんですね。そうだ、プリンの話だけでは申し訳ないので、明日の朝食にも、今までに無いものを、出されては如何ですか?。」
「ライト、何言ってるの。そんなの用意してないじゃない。」
「いや、さっき、頼んできたよ。パンをね。」
「ああ、あれね。ライトが、昔、食べた事があるって言っていた。出来るの?。」
「多分、大丈夫だと思うよ。明日の朝、作ってもらえるんだ。間に合うように取りに、行ってみるよ。」
「ライト様、パンとは、何かあるのでしょうか?。」
「こちらでも、食べているパンがありますね。あれが、もっと美味しくなったら、どうですか?。」
「それは、当然、評判に。しかし、ここで扱っているのは、「王都のパン」の物ですが、それ以上の物なんて。」
「僕が出そうとしているのも、「王都のパン」の物です。でも、...新作です。」
「し、新作ですって。そんなものが、あるんですか?。ここ何年も、変わってない筈ですが。」
「ええ、さっき、材料を渡しましたから。生まれたばかりの新作のパンを、食べて頂く。それも「王都のパン」の物です。貴族にとって、自慢できる事が出来るってのは、如何でしょうか?。」
「ライト様、ありがとうございます。それは是非。」
って言ってしまったけど、ヨーデルさん頼みますよ。
僕の材料が、ダメだったら、スイマセン。
許して。
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