第5話 魔法って
食事も済んだので、パーティーのメンバも揃ってのお話になった。
「ライト君は、何も覚えていないみたいだけど、知り合いだったり住んでいた所とかも、分からないのかい?」
「そうですね。穴の中で気がついて、此処が何処かも分かりませんでしたし。唯一自分が、ライトって言う事だけが頭の中に浮かんで、ライトって何って感じでしたけど。」
「んん~ん。ちょっとこれは重症かもしれないな。一応、目の前で衝撃的な事が起こったり、頭をぶつけたりすると記憶が無くなる事が在るとは、聞いた事はあるんだけどね。」
「はあ。そうなんですね。」
「まあ、自分の目の前で仲間が魔物に殺られたりしたんでしょ。そりゃ、影響あるわよ。私だって、しばらく寝れなかったから。」
エルドさんが聞いてきた。
「そう言えば。戦っている時にライト君が、「ゴブリンメイジが居る。」って叫んでくれたよね。あれは、何で?」
これって、正直に言った方がいいのかなあ。
鋭い所、突っ込まれたよ。
鑑定スキルの話とかをしちゃって大丈夫なのか?
でもなあ、話さないと辻褄が合わないよなあ。
「あの。僕が戦いを別の通路から見ていたじゃないですか。ゴブリンを見ていたら、頭の中にゴブリンの名前とスキルが、思い浮かんだんです。」
「おおっ!、もしかして鑑定スキルか?」
「それで奥から出て来た、見た事が無い奴を見たらゴブリンメイジって、頭の中に浮かんだんです。確か火属性魔法のレベル4とか。」
「えっ!」
「エリン。レベル4だって。」
「彼奴、火属性魔法レベル4だっのね。彼奴、火炎嵐を撃てたわよ。もし撃たれてたら、みんな只じゃ済まなかったわね。助かったわ。」
「そうなんですね。僕が隠れて見ていたら、杖が光り出したから危ないんじゃないかと思って。そうしたら、叫んでたんです。」
「いや。助かったよ。しかし君が鑑定持ちだったなんてね。ギルドで貰った資料にも、書いて無かったよ。」
「自分でも、よく分かってないんです。これって人に言っても大丈夫なんですか?」
「確かに、色々と重宝されるし、鑑定のレベルが高いと悪用されたりもするからなあ。近しい奴にしか言わない奴もいるし。」
「そうなんですね。」
「上流階級何かは生まれた時に、鑑定するんだけどね。一般人から冒険者になった奴で、お金が出来たら鑑定する奴もいるけど。中々、鑑定スキル持ちは居ないかな。」
「じゃあ、ちょっと人に言うのは、気を付けておきます。」
「それに人を鑑定する時は、気を付けた方がいいぞ。スキルが高かったり、気配を探知するようなスキル持ちだと、見られた事が分かるから、貴族や王族なんかにばれたら、不敬罪で死罪かな。」
死刑って。
まじかあ。
怖!!
そうなのか。
人に対して鑑定する時は気を付けよう。
ああ、怖い、怖い。
聞いておいて良かったよ。
「あのう。魔法って言うのはどうなっているんですか?」
「まあ、さっき、レベルの話はざっくりと教えたけど。これは専門家のエリンが教えてやってくれ。」
「ライト君。鑑定も一つの魔法になるんだよ。基本は5つの属性からなっていて、火水木土風が在るのよ。」
「基本て言う事は、それ以外も在るんですね。」
「そうね。例えばさっき言った鑑定。それ以外だと、雷、氷、光、闇、回復、癒し、時ね。」
「結構、色んな種類が在るんですね。」
「そうね。だけど魔法使いでも全属性を使える人って、見た事はないわ。因みに、私は基本5属性と回復と癒しね。魔法でも特に、雷、氷、光、闇、時の5属性は特別よ。使える人って凄く少ないの。」
「魔法って、どうやって使うんですか?」
「これも基本は、先ずスキルが有っても、魔力が無いと使えない。魔法は魔力を放出する事で、効果が表れるの。発動する時には、呪文があるわ。でも自分の中で、効果が想像出来る人は、呪文を唱えなくても発動出来るの。」
そうか。
やっぱり、昔、本で読んだのと同じなのか。
発動には、呪文と無詠唱がある。
僕は、どうなんだろう?
何か会話は出来ているけど、字とかは読んだり書いたり出来るのか?
読めないとなると、想像して無詠唱かな。
「呪文て言うのは、どうやって覚えるんですか?」
「普通は、魔術師に弟子入りして、師匠に教わるか。貴族なんかは、基本は学校で教わるわね。後は自分で本を読むっていうのも在るんだけどね。でも読んだだけだと、効果が想像出来ないから、発動するのが中々難しいのよ。」
「と言う事は、魔法を使う時に一番大事なのは、効果を想像出来るって事ですか?」
「そうね。例えばさっきの戦いで、メイジが呪文を唱えたとして、魔物だからどれぐらいの効果かを思い浮かべて何て、考えて発動してないわ。」
「そうなんですね。」
「多分、見える範囲を焼き尽くすぐらいの魔法を、発動している筈よ。でも、もし私が発動するのであれば、味方を傷つけるような範囲では発動しない。効果を抑える事が出来るのが魔法使いよ。」
成程。
範囲や威力も自分のイメージなのか。
「ライト君は何か魔法に、興味が有るみたいね。」
「何か色んな事が出来そうで、自分でも出来るんじゃないかと思ってしまって。」
「あら。心配しなくてもライト君なら出来るわよ。鑑定が出来るぐらいだから、魔力はあるわね。後は使える属性が何に適応出来ているかかしら。」
「それって、どうすれば、分かるんですか?」
「属性は生まれ持ったスキルとして在るか。誰かが使った魔法を見て、想像しながら発動の練習をして、スキルが生まれるかね。」
「今持ってなくても、練習すれば魔法のスキルも増えるんですか?」
「ええ。潜在的に才能が有ればね。無かったら一生、練習しても使えないわよ。そうそう。ライト君が鑑定して見ているのは、今持っているスキルだから、次に見たら増えているかもしれないからね。」
そうか。
言われてみれば、そうだ。
努力をしている人なんかは、増えているかもしれないって事か。
「さっき言っていた魔法を使う時の魔力って、増やせるんですか?」
「そうね。経験値を上げてレベルを上げるか。魔力操作の練習をすればね。でも、これもどれぐらい上がるかは才能によるのよ。何処まで増えるかは分からないわよ。」
「魔力の練習って、どうするんですか?」
「やり方は二種類あるわ。最初から実際に発動してみる。それで何度も練習すると、体に魔力が流れている感覚が分かるの。もう一つは学校とかで基礎から勉強して、頭の中に考え方を教え込む。」
僕だとやってみるしかないって事か。
「後は魔力が感覚的に分かったら、発動させずに、全身で魔力を巡回させてみて、それを増幅していく練習をするの。」
「増幅ですか?」
「ほら、想像してみて。川のように小さい川が、どんどん流れて行くにつれて、大きくなって海に流れ着くでしょ。魔力も同じように、体の先から、段々と流れるように考えて、巡らせる量を増やしていく。それが慣れてくると、魔力も増える事になるわ。」
「成程、エリンさん、ありがとうございました。大変、勉強になりました。」
僕は話を聞いて、前の世界で大食いのテレビ出演者が、大会前にトレーニングしている姿を思い出した。
胃袋を大きくする為に、大量の水を飲んだり、食道を通過し易くする為に、体を鍛えて飲み込んでみたり、そんなイメージだった。
「エリンさん。ちょっと鑑定してみてもいいですか?」
「いいわよ。どうぞ。」
エリン:レベル68 HP 230/MP 583
スキル 火属性魔法 レベル6 水属性魔法 レベル8
木属性魔法 レベル8 土属性魔法 レベル5
風属性魔法 レベル7
回復魔法 レベル7 治癒魔法 レベル6
棒術 レベル5 魔力強化 レベル7
「エリンさん凄いですね。魔術師って感じです。」
「えへへ!。そうかしら~。」
「此奴の家ってのが代々の魔術系だからな。生まれた時からなんだ。今は俺達と修行も兼ねてパーティーを組んでいるが、いずれはどこぞの有名な貴族にでも、仕えるんじゃねえか。」
「やだ。私は自由がいいのよ。色んな所に行ったら、凄い魔法が在るかもしれないじゃない。」
「そんな事言ったらエルドなんか、もっと凄い家系じゃない。」
「おいおい。今は私の事はいいじゃないか。」
「何言ってんのよ。この国一番の貴族に、仕えてるんじゃない。」
「エルドさんて、そんなに凄いんですか?」
「凄いと言うか私の家族は、代々、有名な貴族に仕えていてね。今は戦争も無いから、私は修行を兼ねて、冒険者をやっているんだ。」
「そう言えば、メイジを倒したエルドさんの弓って凄いですよね。」
「大体、エルフって弓の扱いが、上手いんだよな。特にエルドの家系は、その中でも一番の家系だ。歴戦の戦いでも活躍して、有名なんだぜ。」
「ガンドウだって、歴戦の戦士の家じゃないか。」
「ガンドウさんって?」
「エルドはエルフだけど。ガンドウはドワーフなんだ。」
見た感じからしても凄い筋骨隆々で、更に鎧を着こんでいる。
「ワッハハハハハハハハ!!。そうかのう。儂は全然、気にしておらんぞ。儂は、やりたい事をやっとるだけだ。」
「でも、それを束ねているリーダーのゴードンさんて、何者なんですか?」
「あははははは。急にメンバの話になってしまったね。」
「ゴードンは貴族の次男でな。家を継がないが何かの時には、呼ばれちまう。だから、こいつも修行を兼ねて、冒険者やってんだ。」
「ミーサさん。ミーサさんは、どんな、....。」
「私は、....。」
「ミーサはな。家柄もコネも何も無いんだ。だけどな、この中じゃ一番の努力家だ。」
「私はね。孤児だったの。だから冒険者になって、有名になって出来る所を見せたいのよ。」
「あのミーサさんを鑑定しても、いいですか?」
「どうぞ。珍しい物何て無いわよ。」
ミーサ:レベル72 HP 430/MP 138
スキル 剣技 レベル8 肉体強化 レベル7 雷魔法 レベル7
「レベル72、....。」
「あははははは!。ライト、ビックリしてるな。此奴は子供の頃に、偶然、騎聖のアーシャ様に会ってな。どうしても弟子にしろって、土砂降りの中を土下座し続け、無理やり弟子になったって話だ。」
「ガンドウ。止めてよ、そんな昔の話。何の自慢にもならないわ。」
「弟子になって、どうなったんですか?」
「弟子になってもなアーシャ様は、大変お忙しい身だ。子供を連れ歩くなんて出来ねえ。年に数回、街を訪れた際に、稽古を付けてやったって話だ。」
「そうなんですか?」
「しょうがないわね。大体、合ってるわ。あの頃は何時も、次に来るまでに、これをやれ、あれをやれって、それしか言わなかったわね。」
「でも、ずっとそれを守ってたんだろ。」
「そうよ。強くなりたかったから。ある時、師匠が今日から剣を交えるって言い出して。騎聖に剣を抜いて、掛かって来いって言われたわ。」
「で、どうなったんですか?」
「勝てる訳ないでしょ。相手は騎聖なんだから。こてんぱよ。それで戦った事を思い出して、練習しろって。それからは会う度に、剣を交えたわ。16歳になる時に、3人の騎士を連れて来て、騎士を相手に戦えって。そして卒業だって言われたわ。師匠には、最後まで勝てなかったけど。」
「おい、ライト。此奴、見た目は良いじゃねえか。結構、男が言い寄ってくるんだけど、「私は、私に勝った奴にしか興味はない」とか言ってな断るんだ。でも、たまに本当に勝負する奴がいて、負けた事ないんだぜ。」
まじで。
じゃあ、勝ったら、僕でも興味を持ってくれるのかなあ。
「ははは、ライト君。ミーサはね、確かに、孤児だったかもしれないけど。この年の女性の剣士で、このランクは異例だからね。それだけ努力したって事かな。」
僕はミーサさんを見て、かっこいいと思った。
僕って、前世でも、そんなに努力した事が有っただろうか。
何かに必死になった事が有っただろうか。
僕の目には、ミーサさんが輝いて見えた。
「そろそろ遅くなってきたから、休む事にしようか。」
みんなは、就寝したみたいだ。
僕はこれからどうなるんだろうって、思いながら寝た。
当方の作品をお読み頂いて、感謝の言葉しかありません。
宜しければ、感想や励まし、続きが見たい等お言葉を頂ければ幸いです。
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
素直に感じた評価で結構です。
また、ブックマークをして頂けても幸いです。
何卒よろしくお願いいたします。