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第43話 聖女ライシール


 僕とコマースさん、アイラさんは、宿を出発して、王城方面に向かい、内通りを周回する形で、王城の北側に来た。


 ライシール教会は、王城の北側の正面にあった。


「これが、ライシール教会になります。」

「大きい教会ですね。さすが、王都にある教会ですね。」


 僕は、入り口にいたお年を召したシスターに、声を掛けた。


「すいません。今日、治療に来たのですが、どちらに伺えば、宜しいでしょうか?。」


「あ、あ、あなたは!。ライトさん、こちらは名誉聖女様ですよ。どうしてこんな所で。」

「いえいえ、たまたまですよ。私が、ご案内致しましょう。」


 僕は、コマースさんに、小さな声で聞いてみた。


「コマースさん、名誉聖女様というのは、どなたなのでしょうか?。」

「現在の最高の地位にいらっしゃるのが聖女様で、代々、継承されておりまして、名誉聖女様は、先代の聖女様ですよ。」


 があ~ん!!。


 一番、偉い人やん。


「あ、あの~、名誉聖女様。先ほどは、気軽に声を掛けてしまい、申し訳ございません。世間知らずの若輩者、お許しください。」

「いえいえ、御気になさらず。既に隠居した身で、御座いますよ。ホホホ。」


 僕たちは、名誉聖女様に案内されて、教会の中に通された。


 礼拝堂を通り、さらに、奥にある部屋に通された。


「これは、祭壇?。」


 治療には、祭壇を使うのか。

 部屋に入ると、ミーサとアイさんが、見知らぬ男の人と、既に待っていた。


「ミーサ、先に着いたんだね。」

「ええ。アイさんのお父さんが働いているお店の人が、丁度、ギルドにいて、案内してくれたから、直ぐに居場所がわかったわ。」


「ライト様、アインと申します。この度は、家族がお世話になり、ありがとうございます。」

「いえいえ、僕は何も。今日、治療が済めば、アイラさんは元気になりますよ。良かったですね。」


「なんと、感謝すればよいのか。出稼ぎに来ていた私が、知らないところで、こんなことになっていようとは、感謝しても感謝しきれません。」

「たまたま、立ち寄った村で、僕が出来ることをやったまでですよ。」


 しばらくすると、奥の扉が開いて、女性が二人、入ってきた。


 一人は、教会の入り口で、お会いした名誉聖女様、そして、もう一人。


「みなさま、本日、治療を行わさせて頂く、当ライシール教会、聖女ライシールで御座います。」


 やはり、この人が、ライシール様か。

 随分、若いな。


 僕と年は、同じぐらいかもしれない。


 ライシール様が、みんなに視線を送るが、僕の所で、視線が止まった。


「あなたが、ライト様ですね。」

「はい、僕がライトですが。何故、僕の名を?。どこかでお会いしましたか?。」

「いえ、本日、初めてお会い致します。」


 初めて会ったのに、僕の名を知っているとは、預言者とか鑑定とか、ちょっと怖!。


「まずは、先に治療を始めましょう。アイラさん、こちらに。」


 部屋の真ん中には、祭壇のような、円形の台があった。


 ライシール様が、アイラさんを、その上に寝るように、指示している。


「やはり、あれに、...。」


 僕は、儀式みたいな場が、初めてだったので、不思議に思って、声が出てしまった。


 いつの間にか、隣に、名誉聖女様が立っていた。


「あれは、儀式用の祭壇なんです。台の上に魔法陣が書かれており、魔力を効率よく、相手にかけることが出来るように、なっております。初代聖女の頃から、使われたものと聞いております。」


「初代とは、随分前からあるのですね。」

「ええ。高位の魔法になると、かける側も魔力消費が大きく、時間がかかると、体力も減り、命の危険が伴います。昔は、今よりも病気の人が多く、治療が必要だったと、聞いております。」


 いよいよ、治療が始まるようだ。


 祭壇の上で、仰向けで横になった、アイラさんの頭の方から、ライシール様が手をかざした。


 治癒魔法の呪文だろうか、唱え始める。


 それに合わせて、祭壇に描かれた魔法陣が、輝き始めた。


「魔力が流れると、魔法陣が光るのか。」


 アイラさんの全身も、光に包まれ始めた。


 しばらくすると、呪文の提唱は終わったが、ライシール様は、魔力を注ぎ続けている。



 どれぐらい時間が、経っただろう。


 ライシール様は、まだ、続けていたが、アイラさんの全身を覆っていた光が、徐々に、弱くなってきた。


「もうすぐ、終わりますよ。」


 名誉聖女様が、声を掛けてくれた。


「あの、随分、時間が掛かるんですね。」


「ええ。魔素中毒は、特に時間が掛かります。魔素中毒は、重症度が高くなるにつれ、体に蓄積された魔素が、濃くなってまいります。一気に魔素を、抜いてしまうことも出来るのですが、人の体は不思議なもので、病気に抵抗するようになってきておりますから、一気に抜いてしまうと、抵抗していた体の中の力や魔力が、一気に変わってしまい、元々、弱っていた体に、負担になってしまうのです。」


「なるほど、それで、ライシール様は、徐々に全身に魔力を掛けながら、治癒されていたということなんですね。」


 魔法が使える世界って、病気なんか簡単に治せるって思ったけど、ここは、そうでもないんだなあ。


 話をしているうちに、治療が終わったようだ。


 ライシール様を見ると、手をかざすのをやめて、

「終わりました。」

 と声を掛けて、こちらに振り向いた。


 だが、その瞬間、よろめいた。


 僕は、すかさず、ライシール様に近づき、彼女を支えた。


「大丈夫ですか?。」

「申し訳ありません。久しぶりに、長い治療を行ったので。ありがとうございます。」


 彼女は、体を立て直して、自立した。


 本当のことは、聖女たちしか知らないが、寝不足が原因の一つである。


「アイラさん、具合は、如何でしょうか?。」


 アイラさんは、手で顔を覆い、涙を流していた。


「はい、大丈夫です。体の痛みも怠さも、ありません。」


「じゃあ、ゆっくりと祭壇から、降りてみてください。そして、ゆっくりと立ち上がってみてください。どなたか、支えをお願いします。」


 アイラさんが、祭壇の端から、床に足をつけて立つ所で、アイさんが支える。


「お母さん、大丈夫。」

「大丈夫よ。今までよりずっと、体が動くから。どこも痛くないわ。」


 アイラさんは、ゆっくりと立ち上がった。

 アイラさんとアイさんは、抱き合って喜んだ。


 お父さんも加わり、家族で、喜びを噛みしめたのだった。




当方の作品をお読み頂いて、感謝の言葉しかありません。


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