第33話 カイーデ村
赤い木の実の場所から、また、しばらく歩くと、少し開けた場所に、出た。
村の人が、木を切って、広場にしているようだ。
その場所の周りを見ると、桶が、木の脇に、置いてあり、木の樹液が、桶に垂れていた。
やはり、これは。
僕は、確信した。
「サトウカエデ!!。」
そう、僕の居た世界では、メープルシロップの元になる樹液が、取れる木で有名だった。
「この世界にも、あったのかあ。」
本物は、初めて見たが、飲んだ水は、間違いなく、穂香にメープルシロップの香りがするメープルウォーターだった。
「アイさん。この木って、どれぐらい在るんですか?。」
「数えたことは無いですけど、この辺一帯、全部ですよ。鬱蒼とするので、村の人が、伐採もしてるんです。村の家は、ほとんど、この辺で出た、木材で立てているんですよ。」
「手入れも良いから、ここまで育つんですね。」
「村に、残っている人は、仕事が限られているので、生活を維持する為に、してるんです。」
「アイさん。少し水を、貰ってっても、いいですか?。」
「いっぱいあるので、大丈夫ですよ。」
僕は、水袋一杯に、メープルウォーターを入れて、屋敷に帰った。
屋敷に帰り、三人で、今後の相談をする。
「ミーサ、メイサ。あの水は、僕の世界で、メープルウォーターっていうんだ。あの水を使うとね、凄く美味しい、甘い蜜が、出来るだ。それをメープルシロップって、言ってたんだ。」
「やっぱり、ライト。何か、考えてたんだね。」
「それ、美味しいの?。」
「僕が居た世界でも、ある国の特産物だったはず。独特の香りと、甘さがあった美味しいものだったよ。」
「え~!。食べてみたいなあ。そうか、お菓子って言っていたのは、それの事かしら?。」
「多分、そのシロップを使った、何かだろうね。」
「でも、もう作れないって。」
「それは、やっぱり、あの親子に、秘密があるんだ。」
「錬金ね。」
「多分、お婆さんも、知らず知らずに、スキルを、使っていたんだろうね。」
「だから、他の人じゃあ、出来ないって事なのね。」
「うん。確か、メープルシロップを、作る際に、メープルウォーターを、煮詰めるんだけど、不純物があるって、聞いた事があるんだ。」
「不純物かあ。」
「だから、お婆さんは、知らず知らずの内に、錬金スキルで、それを分離していたんだろうね。だから、お婆さんのは、美味しく出来ていたんじゃないかって。」
「でも、どうするの?。錬金なんて。ライトだって、スキル持って無かったじゃない。」
「大丈夫。さっき、コピーしといたから。」
「でも、コピーしただけじゃ、使えないんじゃないの?。」
「多分、分離だけなら、レベル1か2で、いけると思うんだ。さっき貰った水を、煮詰めるのにも、数時間はかかるから、やってみるよ。」
「流石、ライト。」
「ふふ、ライトが、前の世界でも、美味しいって言うんだから、楽しみね。」
僕は、屋敷の炊事場を借りて、釜戸の一つで、貰ったメープルウォーターを、煮詰める事にした。
鍋に、水袋一杯の水を入れて、かき混ぜながら、錬金スキルでの分離を、念じていた。
煮詰め続ける事、2時間。
大分、煮詰まり、見た目は、メープルシロップ状に、なってきた。
鍋を、混ぜていたヘラから、少し指ですくって、味見をしてみる。
「おおっ!!。ああ~!。懐かしい。元の世界の味を、思い出す。」
これは正しく、メープルシロップだった。
混ぜ続けたお陰で、錬金スキルでの不純物分離も、出来ているようだ。
だが、元が、5リットルぐらいの水袋から、煮詰まったものは、湯呑一杯もなかった。
だいたい、1/40ぐらいだろうか。
まあ、作るのが成功したんだ。
良しとしよう。
出来上がった、メープルシロップを、ミーサとメイサに、見せに行く。
「ミーサ、メイサ。出来たよ。間違いない、僕の世界にあったものと、同じ味で、出来たよ。」
「どれどれ。凄い、いい匂いだけど、......。」
メイサが、キョロキョロして、湯呑を見て
「もしかして、これ?。」
「そう。」
「少なっ!!。水袋一杯で、これだけ?。」
「大分、煮詰めないと、出来ないんだ。さあ、ミーサ、メイサ、味見してみて。」
二人とも、恐る恐る、指ですくってみる。
「茶色で、ドロっとしてるんだね。匂いは、甘い、いい匂いだね。」
「さあ、さあ、味見して。」
二人は、そっと、口に入れてみた。
あれ、あれ、固まった。
「いや、いや、不味かった?。」
こちらの人には、合わないのか。
「あれ、二人共。不味かった?。不味かったら、吐き出して。」
「これ、美~味~し~い。甘~い。いい香~り。」
ああ、美味しいのね。
ほっと。
「ライト。これ凄いよ。こんなの食べた事、無いよ。」
「本当。こんな美味しいものが、あるなんて。」
「でも、作ってみると、この量だからね。ここにしか無かったんだろうね。」
「じゃあ、ライト。これを、村で、作ってもらえば。」
「いや、まだ、駄目だよ。」
「何で?。」
「作れる人が、分かっている限り、二人しか居ない。もし、広まって評判になったら、二人が、大変な事になるから。」
「そうね。強欲な貴族や、商人が、狙ってくるかもね。」
メイサは、残念そうだった。
「大丈夫だよ。それも、考えてあるから。それで、ミーサ。まずは、コマースさんに、相談しようよ。」
「はあ~、なるほどね。」
僕達三人は、コマースさんの部屋に、行った。
「コマースさん、夜分に、すいません。」
「何か、急用ですか?。その顔は、何か、商売の匂いがしますな。それに、この匂いは、...。」
「まあ、まずは、これを、少し味見して頂けませんか?。」
僕は、コマースさんに、メープルシロップを、差し出した。
「ほほう、これは。いい匂いがしますね。どれどれ。」
あれ、あれ、固まった。
いや、いや、コマースさんまで。
不味かった?。
なんか、鼻息も、荒くなっているような。
「ミーサさん、ライトさん、メイサさん。このコマース。商人ですが、こんな美味しい甘味を、初めて食べましたぞ。」
「何方が、これを?。」
「ライ...。」
とメイサが、言おうとしたのを、
「メイサですよ。」
僕は、言った。
「え、いや。ライト?。」
「メイサが、昼間、水を、飲んだ時に、閃いたらしいんです。それに、昔、お菓子があったという話。」
「そうですか。メイサさんも、只者ではないと、思っておりました。この新しい甘味は、売れますぞ。甘味は、限られておりますからなあ。果物とは違い、甘さが、濃厚ですし、他の物と合わせても、いいかもしれませんな。あの水から、このような物を、見つけてしまうなんて。このコマース、感服致しました。」
「いやいや、ライト。私は、何も、.....。」
僕は、メイサに、人差し指を、口に当て、
「シ~。」
って、やってみた。
「私に、話を、持ってきたという事は、商売ですな。」
「そうなんです。相談とは、今の所、これを、作るのが、非常に大変です。作れる人が、限られてしまうので、表立ってしまうと、狙う奴が、出てくるかもしれません。」
「まあ、これだけの物ですからね。評判になれば、作り方や、引き抜きもありそうですなあ。」
何か、コマースさん、落ち着いてるなあ。
「コマースさん。同業者とか、大丈夫、何ですか?。」
「ハハハハハ!。まあ、商人ですから、毎度の事、なんですよ。まあ、対策は、色々と御座いますから。」
ちょっと、安心。
「もう二つ、相談なんですが?。」
「この件に、関する事なんですね。」
「はい。実は、ある特定の人しか、製造が、出来ないんです。」
「ほほう、それは、また。」
「まだ、本人にも、言ってませんが、アイラさんと、アイさんなんです。」
「なんと、あの親子でしたか。」
「アイラさんは、病気で、高度な魔素中毒です。」
「そ、それは、また。」
「今の状態では、製造するのは、無理でしょう。それで、なんですが、治療費を、出してもらえませんか?。」
「ほほう。ライトさん、そう、きましたか。」
「いきなり、治療費を、出せと言われてもって、感じですよね。では、もう一つ。製造が、上手くいけば、そのままでも、売れるでしょう。だけど、これを使って、もっと、美味しい物も、食べれるとしたら、どうでしょうか?。」
「これを、使った美味しい物ですか?。」
「そうです。デルポートでは、見た事も無いものです。」
「そ、その美味しい物に、これを使えば、これ以上に、美味しくなるのですか?。」
「ええ。」
「そんな物が出れば、それはそれは、評判になって、お店は、繁盛するでしょうなあ。」
「ええ。でも、良い材料が、見つかるかどうか。丁度、これから、王都に行きます。そこで、探してみたいと思ってます。」
「ふふふ、ライトさん。貴方って人は。一石二鳥、いや、三鳥、四鳥まで。これ一つとっても、間違いなく評判に、なるでしょうが。更に、料理まで、提案するとは、貴方と居たら、どこまでも楽しみ、いや、商売の夢を、見せてもらえるんでしょうかねえ。」
「いえいえ、たまたま、ですよ。」
「このコマース、気に入りましたぞ。ええ、ええ、治療費なんぞ、いくらでも、お出ししましょう。」
隣で、ミーサとメイサが、キラキラした目で、僕を、見つめていた。
「コマースさん。では、明日、アイラさんと、アイさん、村長さんにも、お話をさせて頂いても宜しいですか?。」
「ええ、ええ、構いませんぞ。」
「よかった。」
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