第3話 彼女との出会い
ゴブリンと人間のパーティーの戦いは、まだ続いていた。
「ゴブリンって数が多いなあ。こんな洞窟だから、出てくるゴブリンって多いのかなあ。もしかしてゴブリンの巣だったりして。」
しかし人間のパーティーが倒しまくったお陰で、ゴブリンの数が減りだした。
ん?
あれっ!
彼奴は?
ゴブリンが出てきていた通路の奥から、今まで見た事のない奴が出てきた。
鑑定してみると、
ゴブリンナイト:レベル25 HP 90/MP 160
スキル 剣技 レベル3 盾技 レベル2 統率 レベル2
今までの奴に比べると強い奴やん。
「早速、スキルはコピーさせて頂いて。」
此奴が出てきたお陰で、残っていたゴブリンが盛り返す。
人間側もゴブリンナイトに、集中するようだ。
だがよく見るともう一匹、違うが居る。
ゴブリン達が出てきていた通路側に、人間側から見たら死角にあたる位置に、見た事のない奴が居た。
よし。
此奴も鑑定だ!
ゴブリンメイジ:レベル28 HP 85/MP 160
スキル 火属性魔法 レベル4 水属性魔法 レベル2
土属性魔法 レベル3 統率 レベル2
へえ~。
此奴の方が強そうだなあ。
それにゴブリンって色んなのが居るんだなと感心する。
スキルをコピーしつつ、此奴を見ていると。
ん?
何か口が動いている?
もしかして魔法発動か?
詠唱ってやつかな。
いやいや、そういえば前に本か何かで、洞窟の中で火属性魔法って発動すると、酸欠になるとかって。
でも魔力消費だから、科学の酸素は消費しないとか。
僕はまだ此方の世界の常識が、分かっていない。
悪い方で考えた方がいいんだろうなあ。
何て考えていたら。
もしかしてあのゴブリンメイジ。
火属性魔法を撃つ気じゃないよね。
だから酸欠とか、洞窟が炎で埋め尽くされるとかを仮定してって。
いやいや、おい、おい。
超ピンチじゃん!!
神様、いきなり、そんな場面って頼みますわ。
発動がレベル4の火属性だとして、威力もどんなものかも分かってないから、逃げたほうがいいんじゃないか。
考えれば考える程、嫌な方向に考えてしまい、汗が出た。
でも僕だけじゃなくて人間の人達も、やばいんじゃないのこれ。
詠唱ってどれぐらいの時間が掛るんだ?
僕がそんな事を思っている矢先に、ゴブリンメイジの杖が光りだした。
やばい!!
間に合わないじゃないか。
もう明らかに逃げようにも、走っても無~理~!!な感じが。
場所は人間の人達より、僕の方が近かった。
駄目だ、躊躇っていられんわ。
僕は一か八か通路から飛び出した。
頼む。
投擲のスキルが発動して、当たってくれ!!
僕は心で念じつつ、手に持った石をスポコン漫画並みに振りかぶった。
オラァァァ~!!
ビュッ!!
僕は握っていた石を、ゴブリンメイジに投げつけた。
と同時に人間の人達に向かって叫んだ。
「死角にゴブリンメイジが居るぞ~!!」
ゴブリンも人間も、まさかの部外者登場に、一瞬驚いたが金髪のイケメン剣士が叫んだ。
「エルド!!」
すると後方で弓を射っていた、こちらも銀髪イケメンが僕の方に向かってダッシュ!!
僕との間にいたゴブリン3匹を、何処から出したのか短めの剣で倒しながら、僕に迫ってきた。
思わず、貴方のその速さ、オリンピックで勝てますよぐらいなイメージ。
エルドと呼ばれていた人は、僕の目の前に躍り出ると、いつの間にやら剣から弓に持ち替えていた。
ビュッ!!
ゴブリンメイジ目掛けて弓を射った。
それは昔の世界で見た映画の1シーンの様に、シュッと飛んで行った矢が、ゴブリンメイジの眉間に吸い込まれていた。
ゴブリンメイジはそのまま仰向けに倒れて、動かなくなった。
それを見た残ったゴブリンとゴブリンナイトが、更に大きく叫びながら襲いかかる。
だが直ぐにゴブリンナイトも、金髪のイケメンに切り捨てられると、後は統率もなくなり、あっという間にゴブリンは全滅していた。
すると僕の方へ金髪イケメンが近寄ってきて、
「いや~、助かったよ。」
「あっ、はあ。」
「あのまま魔法を使われていたら危なかっよ。僕はこのパーティーでリーダーをやっているゴードンだ。で君は、......。」
「あっ、いや。」
「一人かい?」
「あ、.....、その。多分、一人です。」
やばい、この世界で初めて人と話してる。
何か、凄い緊張する。
「随分、軽装だね。持っているのはその剣だけかい?」
「あ、はい。此処に来る間に拾ったんですけど。ええと、この剣だけです。」
「冒険者何だろ。ギルドカードとかは持って無いのかい?」
「ええと。はい。あの気づいたら其処の先に居て。ええとどうして此処に居るかも分からなくて。」
「ふうん、そうなのか。ちょっとその剣を見せてもらってもいいかな。」
いやあ。
何か落ちていた剣とか拾ったら、不味かったかな。
この世界のルールも常識も知らないんだよなあ。
神様その辺を少し教えて欲しかったです。
トホホ。
でも此処で断ったら怪しまれるか。
もう渡すしかないよね。
「どうぞ。」
ゴードンさんは渡した剣をじっくりと見ながら確認していた。
「うう~ん。やっぱり彼奴らのだな。」
「そう、やっぱり。こんな階層まで来ていたのね。」
声を掛けたのは、ゴードンさんと前衛で戦っていた美人だった。
今、思い起こすとこれが最初の彼女との出会いだった。
「あの~。やっぱりって言うのは何ですか?」
「ああ。僕達は冒険者でAランクのパーティーの天空の城って言うんだ。ギルドから捜索兼調査依頼で、此処まで来ていたんだけど。」
「ギルドの捜索依頼?」
「まあダンジョンの探索で、年に数回は自分達のレベル以上の階層に無理して潜る人がいてね。ギルドに出した予定を過ぎても、帰ってこない事があるんだ。」
「帰って来ないんですか?」
「ああ。そうするとギルドは上位ランクのパーティーに依頼して、探しに来る事になるんだよ。」
「そう言えば君の名前を、聞いていなかったね。」
「あっ、すいません。僕はライトです。」
名前を言うとゴードンさんが、丸められた羊皮紙を出して確認していた。
「んっ。おいおい、君はゴールドラッシュのメンバーじゃないのかい?」
えっ!
急にメンバーって言われても何も聞いてないし、違う世界から来たんで全く分かんないんですけども。
トホホ。
どうしようかなあ。
何とか誤魔化さないと。
嘘をつくのもあれだし。
「すいません。何も覚えていなくて。さっき言った名前しか思い出せなくて。」
今正直に言ってますよ。
この世界では名前しか知らないんで。
「えっ、何があったのか覚えていない?。」
いや~。
だからこの世界に来たばかり何で、何もシ・ラ・ナ・イ・んですよと心の中で思いはするけど。
「ええと。さっきこの先の穴で目を覚ましたんですけど。それでウロウロしたら声が聞こえてきたから此処まで来て。」
「この先で目を覚ました?」
「ええと。じゃあ。僕が目を覚ました場所まで、ちょっと付いて来てもらってもいいですか?」
僕はパーティーの人を目覚めた場所まで、案内する事に。
穴まで向かう途中に荷物が散乱した場所も通ったので、ゴードンさん達は落ちている装備品の確認と回収をしていた。
装備品を回収していると、後からゴブリンと戦った場所で、ドロップ品を集めていたエルドさんと女性のエリンさんが合流してきた。
「ゴードン。確認したがやっぱりメイジは、ユニークだったよ。」
「まさかこんな階層でユニーク何て。キングよりはマシだけど、ユニークが生まれる何てな。」
「確かにあのゴブリンの数からしたら、リーダー以上が居るかと思ったがユニーク何てな。」
「だがメイジのユニークが生まれた何て、このダンジョン始まって以来じゃねえか。」
パーティーの人はゴブリンの群れについて話をしているが、全くついていけない。
「今から地上を目指すのは無理があるな。ゴブリンの方は確認出来たし、ゴールドラッシュの荷物も持ち帰るものは回収出来た。ライト君が居た所を確認したら、地上を目指そう。」
ゴードンさんが、仲間に、指示をしている。
「あのゴードンさん、すいません。どういう事なのか僕にも教えて貰えませんか?」
「ライト君。此処はダンジョンの地下10階なんだよ。ライト君を連れて直ぐに地上へは帰れない。途中で一泊する事になるんだ。その時に聞きたい事もあるし、状況を説明してあげるよ。」
「分かりました。よろしくお願いします。」
「じゃあ、君が居た所まで行ってみようか。」
という事で僕達は通路を、更に奥に向かって進んで行く。
僕は自分が目覚めた穴まで、引き返して行った。
僕が最初に通った時はほぼ暗くて分からなかったが、今回は魔法の照明に照らされて状況がよく分かった。
其処は昔の世界で言う鍾乳洞の中、そのものだった。
僕はこれからどうなるんだろうか。
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