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第23話 騎聖アーシャとミーサ




 ミーサは、デルポートを出て、南の国境にある街、アムステッドへ向かった。


 そう、その街こそ、師匠である騎聖アーシャが、居る街であった。

 デルポートからは、飛ばして、十日の距離である。


 ミーサは、肉体強化のスキルを使い、飛ばした。

 何を、焦っているのか、自分でも、思うところがあったが、急いだ。


 一日でも早く、このモヤモヤした気持ちを、何とかしたかったからだ。



 アーシャは、前王時代から、王に、使える騎士の中の重鎮であった。


 まだ、隣国との争いが、絶えなかった時代に、王に、使える騎士を引っ張り、前線で活躍した。

 女性であったアーシャは、男の中に混じり戦った。


 一対一の戦いで、負けた事の無いアーシャを、何時しか人は、騎聖と呼んだ。


 兵士の中でも。アーシャが、来れば負けない。

 そんな伝説めいた話を、兵士や、騎士達は信じ、戦い、今の平和を、手に入れたのだ。


 隣国との争いが、無くなり、アーシャは、引退を申し出た。

 しかし、現王は、認めなかった。


 それは、今までの功績と、伝説としての彼女の偉業を、称えたい事もあり、騎士として留めた。


 その代わりアーシャは、田舎で、のんびりと過ごせる地域への、赴任を申し出た。

 王は、それぐらいならと、アーシャの申し出通り、赴任させたのである。


 その赴任先が、隣国との境にある町、アムステッドであった。



 ミーサは、出発して、十日目に、アムステッドに、着いた。

 着いたその足で、直ぐに、騎士の詰め所に、向かった。


「すいません。アーシャ様は、いらっしゃいますか。」


「あなたは?。」

「はい、ミーサと申します。アーシャ様に、ミーサが来たと、伝えて頂ければ分かります。」


「少々、お待ちください。」


 しばらくすると、突然、後ろから、声を掛けられた。


「あんたが、来るなんて、始めてじゃないかい。」


 ミーサは、驚いて、振り返った。


「アーシャ様!。」

「そんな顔するんじゃないよ。あたしゃ、あんたの母親じゃ、ないんだよ。」


 そう言ったアーシャも、にっこりとして、満更でもなかった。


 アーシャは、騎士に、命を懸けた。

 結婚する事も、無かったアーシャは、唯一の弟子を取った。

 それが、ミーサであった。


 戦いに明け暮れたアーシャであったが、ある時、訪れたデルポートで、慰問した孤児院。


 その中に、ミーサが、居た。


 他の子供達が、

「アーシャ様、アーシャ様。」

と騒ぐ中、部屋の隅から、自分を、じっと、見つめる子供が居た。


 それが、ミーサだった。


 しばらく、子供達と触れ合ったいた時、ふと気づくと、ミーサが、近くに居た。


 ミーサは、

「アーシャ様は、強いんでしょ。私は、強くなりたい。誰よりも。だから、弟子にして下さい。」


 アーシャは、不思議な子供だと思った。


 アーシャは、

「もう少し大きくなったら、騎士見習いに、応募しなさい。そうしたら、強くなれるから。」


と普段、騎士に、憧れている子供達に、話すように返事をした。


 その言葉を聞いて、ミーサは、立ち去った。


「ふふ、子供ね。」


 その時、アーシャは、普通の子供だと思っていたが、.....。


 しかし、ミーサは、違った。


 デルポートの詰め所にある、隣接している宿舎に、泊まっていたアーシャに、朝早く連絡が入る。


「子供が、詰め所の前で、土下座をしている?。」


 アーシャは、直ぐに、詰め所の入り口に行った。


「まさか!!、あの子じゃ。」


 アーシャは、あの時、普通に受け答えをしたが、子供の目が、気になっていた。

 大人でも、なかなか見ない、本気の目。

 そんな子供だったからだ。


 アーシャが、詰所の入り口から、外を見ると、やはり、あの子供だった。


「あなた、どうしたの?。こんなに、朝早くから。」

「弟子にして下さい。強くなりたいんです。」


「強くなるには、私じゃなくても、いいんじゃない?。」

「いいえ、この国で、一番強い人に、教えてもらいたいんです。」


「どうして?。」

「私が、この国、一番に、なりたいからです。」


「あなた、年は幾つ?。」

「10歳です。」


 10歳と聞いて、アーシャは、驚いた。


 10歳の子供が、この国一番になりたい。

 「なりたいなあ。」じゃなく、なりたいと本気の目で、訴えたのだ。


 アーシャは、言った。


「駄目よ。まだまだ、これから、色々な事があるでしょう。もっと、好きな事も、出てくるかもしれない。だから、もう少し、大きくなってから考えて。今は、帰りなさい。」


 アーシャは、ピシャっと言った。

 そして詰め所に、戻った。


 その日は、午後から天気が悪くなり、土砂降りになった。


「大分、降っているわね。」


 そんな事を、側近と、話している時だった。


「アーシャ様。すいません。あの、.....。」


 入り口にいる受付の兵士が、やって来て、口を濁していた。


「どうしたの、ハッキリ言って?。」


「それが、朝、来た子供なんですが、......。」

「帰ったんじゃないの?。」


「いえ、アーシャ様が、戻られた後も、ずっと、あのままでして。見かねて何度も、帰れって言ったのですが。その、まだ、.....。」


「えっ!!。まだって、この土砂降りで、まだ、居るっていうの?。」

「はい。」


 アーシャは、急いで、詰め所の入り口に、向かった。


 入り口から、土砂降りの中を見る。

 地面は、沼の様になっていた。


 その中に、居た。

 朝と同じように、土下座をしたままだった。


「あ、あんな子供が。この雨の中を、.......。」


 アーシャは、土砂降りの中を、近づく。


「あなた。ミーサと言ったわね。」

「はい、どうか弟子に。」


「ふふ、その根性は、何処から来るのかしら。付いていらっしゃい。」


 その言葉を聞いて、ミーサは、立ち上がろうとした。

 だが、ミーサは、起き上がれなかった。


 長時間の土下座と、雨で、体が冷えた為だった。


「仕方ないわねえ。」


 アーシャは、ミーサを、軽々と抱っこをした。


「ふふふ、軽いわねえ。」


「アーシャ様。宜しいのですか?。」

「いいのよ。私は、この子の面倒を、看ることにしたわ。」


「しかし、........。」

「あなた、10歳で、同じ事が出来た?。」

「い、いえ。とても。」


 アーシャは、ミーサを、宿舎にある自分の部屋に、連れて行った。


「これに、着替えなさい。」


 アーシャは、体を拭いてやり、自分のシャツを出して、ミーサに、着せた。


「ありがとうございます。」


 アーシャは、ミーサの痩せ細った体を見て、よくも、このか細い体でと思った。


「ついて、いらっしゃい。」

「はい!!。」


 アーシャは、ミーサを、連れて、騎士の食堂へ行った。


「この子に、騎士と同じ食事を。」

「アーシャ様、宜しいので?。」

「いいのよ。私が許可する。」



 そう、アーシャは、騎聖の称号と共に、王様から、将軍と同等の特権を得ていた。

 騎士の中で、アーシャが、いいと言えば、ほとんどが通るのであった。


「いい。私が、此処に居なくても、この子に、毎日、食事を、させなさい。」

「分かりました。」


「ミーサ。分かった。毎日、何時でもいい。ここに、食事をしに来なさい。」

「はい、分かりました。」


「まずは、その体を何とかしないと、強くなれないわよ。」


 それを聞いて、ミーサは、にっこり笑った。


 この子が、こんな笑顔が、出来るのかと、アーシャは思った。


 丁度、その頃、アーシャの気持ちが、晴れたように、雨も上がり、今までの土砂降りが、嘘のように、日が差してきた。



 二人は、中庭に居た。


「ミーサ。よく聞いて。私が、あなたに教えるのは、突剣技よ。見ていらっしゃい。」


 子供のミーサが見ても、美しくも、隙のない構えだった。

 そして、アーシャが、動いた。


 シュッ!!。


 ミーサは、アーシャが、一瞬、消えた様に見えた。

 次の瞬間には、数メートル先で、剣を伸ばして、アーシャが立っていた。


「こ、これが、突剣技。」

「そうよ。切る剣じゃないわ。突く剣よ。」


 ミーサは、黙って頷いた。


「じゃあ、出かけるわよ。」


 アーシャは、ミーサを連れて、街に出た。


 それは、急ぐお母さんを、一生懸命、追いかける子供の姿だった。

 しばらく行くと、アーシャは、店に入った。


「これはこれは、アーシャ様。今日は、どのようなご用件で。」

「子供用の剣を、見せて頂戴。」


「子供用ですか?。」


 店主は、不思議そうだった。


「ご贈答でしょうか?。」

「いいえ、訓練用よ。」


 アーシャの陰から、子供が、顔を出した。


「こ、こちらのお子様のですか?。」

「そうよ。レイピア系の剣が、いいわ。」


「申し訳ございません。レイピア系では、取り扱いが。」


「そう、何処かに、無いかしら?。」

「王都になら、あるかもしれませんが、この辺では、特注になるかと。」

「そう、分かったわ。」


 アーシャは、ミーサを見た。


「まずは、剣になれさせて、捌きからかしら。」

「じゃあ、両刃の細身の剣は、あるかしら。」


「それでしたら、こちらに。」


 店主は、三本の剣を出してきた。


「ミーサ、この剣を振ってみて。」

「はい!!。」


 ミーサは、三本の剣を、順番に持ち、振った。


「この剣が、よさそうね。」


 それは、銀色に、輝く剣だった。


「これにするわ。」

「アーシャ様、宜しいのですか?。こちらは、ミスリル性で、お値段が。」


「幾らなの?。」

「はい、金貨130枚に、なりますが。」

「そう。後で、詰め所まで、取りに来て頂戴。」


「は、はい。ありがとうございます。」

「さあ、ミーサ。これは、あなたの剣よ。」


 ミーサは、茫然とした。


 金貨130枚なんて、見た事も、聞いた事もなかった。


「さあ、帰るわよ。」

「はい!!。」


 アーシャと、ミーサは、詰め所と宿舎の中庭に居た。


「さあ、ミーサ。構えて。」


 ミーサは、見様、見真似で、構えた。


 アーシャは、基本の構えと、剣の振りを教えた。


「さあ、構えて、振って!!。」


 何度も何度も、同じ事の繰り返しだった。


 どれぐらいの時間が、経っただろうか。

 ミーサが、へとへとになるまで、それは続いた。


「いい、ミーサ。今日、教えた事を、毎日やるのよ。私は、ずっと、此処には、いられないから。」

「はい!!。」


「居なくても、毎日、食事をして、剣を振る。いいわね。」

「はい!!。」


「それから、この剣は、決して、この敷地から、持ち出さない事。」


 そう、それは、高価である事で、ミーサを、危険な目に、会わせない為の、アーシャの優しさだった。


 子供のミーサには、分からないかもしれないが。

 それから、暫くして、アーシャは、街を離れた。

 ミーサは、言いつけを守り、毎日、毎日、訓練を続けた。




当方の作品をお読み頂いて、感謝の言葉しかありません。


宜しければ、感想や励まし、続きが見たい等お言葉を頂ければ幸いです。


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


素直に感じた評価で結構です。


また、ブックマークをして頂けても幸いです。


何卒よろしくお願いいたします。

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