第19話 裏切り
あれから、1週間が経ち、僕達は、同じように、巣を取っては、清算していた。
更に、1週間が経ち、また、同じように、巣を取って清算した。
次の1週間も、同じように、巣を取って清算した。
だが、この時、僕は、別に用事があって、アレクに任せたんだ。
それが、間違いだった。
次の週から、薬草採取に、アレクと、クレイの姿が、見えなくなった。
「おかしいな。いつもなら、毎日、来ていたのに。」
等々、一週間が過ぎ、アレク達の姿を、見る事は無かった。
次の週になり、気になった僕は、カペラさんに、聞いてみる事にした。
「あのう、カペラさん。すいません。」
「あら、ライト君。どうしたの?。」
「高ランク対応のカペラさんに、お願いしていいのか、.....。」
「あら、今は、暇だからいいわよ。何よ。知らない仲じゃ、ないじゃないよ。」
「ありがとうございます。あの~。じゃあ、ちょっと、確認したいんですけど。アレクって、最近、来てますか?。」
「アレク、アレク。ああ、よく一緒に、いた子ね。ええ、来るわよ。昨日も、来たはずよ。確か。」
「えっ!、昨日も来た?。」
「ちょっと、待ってね。確認してみるわ。」
カペラさんは、何やら、帳簿を確認していた。
「ええ、間違いないわ。昨日、来て、清算して帰ったわよ。」
「そ、それって、何を、清算したんですか?。」
「あら、蜂蜜よ。ええ~っと、三日に、一回は、来てるわね。」
「薬草とかは?。」
「いいえ、蜂蜜だけよ。いい巣でも、見つけたんじゃない。」
まさか、独り占めしようとか、しているのか。
まあ、別に、僕は、構わないけど。
一言も無いって、どういう事、アレク。
いや、でも、あのアレクが、そんな事するだろうか。
もしかして、クレイが、病気になったとか。
僕は、アレクと、クレイが、心配になった。
アレク、僕は、友達じゃないか。
もし、それが本当なら、何かしてやりたかった。
「あっ、カペラさん。すいません。アレクって、何時ぐらいに、来るんですか?。」
「あら、随分、変な時間ね。朝よ。丁度、みんなが受注して、出発した後ぐらいに来て、清算してるわね。」
朝?、朝か。
みんなが、まだ、薬草採りも始めていない時間に、巣だけを取りに行っているのか。
三日に、一回とすると、明後日か。
「カペラさん、ありがとうございました。」
「え、ええ。またね。ライト君。どうしたのかしら、へんな子ね。」
翌日、僕は、いつものように、過ごした。
「ミーサさん。明日は、訓練を、お休みします。すいません。」
「あら、ライト。どうしたの?。そんなの初めてじゃない。」
「すいません。ちょっと、どうしても、朝から出かけないと、いけなくて。」
「私は、構わないわよ。じゃあ、明後日ね。」
そして、その日、僕は、いつものように、薬草採りに出かけた。
だが、やっぱり、アレク達は来なかった。
僕は、念の為、蜂の巣がどうなっているのかを、確認しに行った。
蜂の巣がある場所は、いつものように巣の蓋は、蔦で縛ってあった。
「変わりないんだけどなあ。一旦、どうなっているか、確認してみるか。」
僕は、蔦を外して、蓋を取った。
そして、中を見て、驚いた。
巣が、残り1/3まで、減っていた。
12層あった巣が、残り4層に、なっていたのだ。
「最初に、1枚採っただろ。その後、二週間は、清算した。で、残りが4枚だ。アレクは、5枚も採ったのか。金貨25枚だぞ。そんな大金、どうする気なんだ、アレク。」
巣の蓋を元に戻し、その日、僕はいつものように、薬草を清算して、孤児院へ帰った。
その頃、別件で、ギルドに来ていたミーサと、カペラが、話をしていた。
「ミーサさん。ライト君、どうですか?。」
「えっ!、どうって?。」
「あら、ミーサさんは、聞いてないのかあ。」
「ライトに、何かあったの?。教えて。」
「いえ、ライト君と、仲が良かった子がいて。最近、会わなくなったみたいで。」
「仲が良かった子と、会わなくなった?。」
「どうも、高級品の事で、何かあったみたいなんですよね。」
「高級品?。高級品って、何?。」
「蜂の巣ですよ。蜂蜜。結構、物が良かったって、清算の人が、言っていたんですけど。一回で、金貨5枚。」
「金貨5枚ですって。その友達って、ランクは?。」
「ライト君と同じで、Eランクよ。いつも兄妹で、薬草摘みを、していた子なの。」
「どれぐらい清算したの?。」
「確か7回で、金貨35枚ね。最初の頃は、一緒に来ていたんだけど。最近は、その友達のアレクって子だけで、清算していて、この間、ライト君が来て、アレク、最近来てますかって?。」
「それで。」
「変な時間に来て、蜂の巣、清算してるわよって、教えてあげたの。」
「最近来たの、何時頃?。」
「一昨日よ。いつもなら、明日、来るんじゃないかしら。」
「それだ!。」
「ありがとう、カペラ。」
「ええっ!。ミーサさんも、どうしたの。何が起こってるの、....。行っちゃった。」
まさか、ライトが、お金で、揉めてるなんて。
お金に、目が眩むとか、そんな、信じられない。
私も、確かめたい。
何が、起こっているのか。
翌朝、ライトは、開門と同時に、街を出た。
そして、いつもの薬草採りの場所で、待っていた。
その時、そのライトの後を、ミーサもつけていた。
少し離れた場所から、ライトは、薬草の生えた草原で、街から向かって来る方向を見ていた。
しばらくすると、アレクがやって来た。
「やっぱり、アレク。何してるんだよ。」
僕は、アレクが、通り過ぎるのを、待った。
そして、しばらくして、僕も巣に向かった。
僕は、巣の近くまで行き、木の陰から、アレクを見ていた。
やはり、巣を取り出して、袋に詰めていた。
そして、持ち去ろうとした時、僕は声を掛けた。
「アレク!。」
「ら、ライト。どうして?。」
「最近、薬草採りにも、来ないから、心配して探したんだ。どうして、蜂の巣を、持っていくの?。もしかして、クレイが、病気か、何かなのかい。」
「い、いや、違うんだ。ライト、ごめん。今は、何も言えないんだ。見逃してくれ。」
「アレク。僕達、友達だって、言ったじゃないか。」
「ごめん。本当に、今は、何も言えない。」
「困った事があったら、相談してくれよ。友達なんだろ。」
「ごめん。許してくれ。」
そして、アレクは、そう言い残して、走り出した。
「アレク、.........。」
僕は、半信半疑だった。
あのアレクが、.....やっぱり、信じられない。
僕は、スキルに、肉体強化をセットした。
「アレクは、この後、ギルドに行って、清算をする筈だ。」
ギルドで、清算して、そのお金で、何をするのか。
僕は、それを、確かめたかった。
「あの子が、アレクなのね。今日も、巣を採って、何にするのかしら。もう金貨40枚になるわね。そんな大金を、あんな子が。」
ミーサも、ライトを追った。
ライトは、いつもの通りから、遠回りをして、街に帰った。
ライトは、ギルドの入り口が、見える所で、アレクを待った。
しばらくすると、息を切らせて、アレクがやって来る。
「アレク、どうして、......。」
アレクは、そのまま、ギルドに入った。
そして、しばらくすると、出てきた。
「さあ、アレク。何処に行く。」
アレクは、第2孤児院の方向じゃない、門の方へ向かった。
「えっ!、何処に行くの?。」
予想外だった。
「じゃあ、クレイは、病気じゃないのか。」
なんか悔しい気持ちと、まだ、アレクを、信じたい気持ちが、入り乱れて、複雑な感情だった。
「アレク!。」
アレクは、街の中を走り、門へ向かった。
「街の外に、行くのか?。」
そう思った時、アレクが、方向を変えた。
「何処?、アレク、何処に行くの?。」
アレクは、門の手前を曲がって、街の高い壁沿いに進んだ。
「ここは、何処だよ?。」
「スラムよ。」
「えっ!。」
僕は、驚いて、振り向くと、そこには、ミーサさんが、立っていた。
「ミーサさん、どうして?。」
「ふふ、ライトの事が、気になってね。カペラからも、話を聞いたわ。アレクだっけ。彼は、何をしてるのかしらね。」
「見ていたんですか?。」
「ライトの友達なんでしょ。ほら、行っちゃうわよ。」
僕達は、アレクを追った。
「ミーサさん、スラムって事は、治安が悪いんですか?。」
「そうね。犯罪を、する人の割合は多いわね。まあ、そういった人が、住むしかない場所って、所かしら。」
しばらく進むと、アレクが、建物に入った。
「此処に、入りましたね。」
「ええ、ライト。此処で、ちょっと、見張ってて。私は、知り合いに、此処を使っている人について、聞いて来るから。」
「えっ!。知り合いって。見張ってろって、.....。ちょっと、ミーサさん。行っちゃった。まあ、仕方ないか。」
僕は、向かい側の路地から、アレクが、入った建物の入り口を、見ていた。
そして、しばらくすると、ミーサさんが、帰ってきた。
「ライト、不味いわね。あの建物の部屋を借りている中に、不良冒険者がいるわ。」
「不良冒険者って?。」
「クロードって、奴で、多分、仲間も一緒よ。ギルドで、羽振りのいい低ランクの冒険者を狙って、上前を撥ねたり、脅迫したり、噂では、強盗とかもしてるって、聞いて事があるわ。」
「じゃあ、もしかしてアレクも、そいつに目を付けられて?。」
「多分、その可能性が、高いわね。」
「どうすれば。」
「私も一緒に、乗り込んでもいいんだけど、人質が居ると、不味いわね。警備の騎士に、知り合いがいるから、相談してくるわ。ライトは、此処で、見張ってて。早まったら駄目よ。」
「は、はい。見張って待ってます。」
って、言ってもなあ。
ミーサは、直ぐに、騎士の元へ向かった。
ライトが、建物の入り口を見ていると、しばらくして、アレクが出てきた。
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