第10話 ミーサとの闘い(1回目)
更に一週間が経った。
まだまだスキルについて、色々と模索していた中、何時もの様に第一孤児院へ、ミーサさんとの訓練に行ってみると。
「ライト。今日は、ちょっと実戦形式で訓練してみましょう。」
そんな事をミーサさんが言ってきた。
ええっ!
「僕に実践何て、まだ早いですよ。」
「でも何時までも素振りや、型ばかりやっていても、本当に実践になった時に、同じ動きが出来るかは分からないわよ。その為に模擬戦をやって慣れないとね。」
そうなんだ。
やっぱり、そうですよね。
「わ、分かりました。お願いします。」
取り敢えず剣技のスキルをセットして。
この時、僕の剣技はレベル4になっていた。
「じゃあ模擬戦をやるけど、怪我しないように、剣先を潰した模擬刀でやるわね。剣は何時ものレイピアで大丈夫?」
「はい。それしか知らないので。」
「これでも刺さりはしないけど、突かれたら相当痛いわよ。」
「分かってます。大丈夫です。」
お互いに向かい合って距離を取った。
「お願いします。」
「お願いします。」
お互いに剣を右手で持ち、正面で剣を立てて挨拶をした。
勝負の開始である。
「さあ、何処からでも、かかって来なさい。」
「はい!!」
僕は正面から踏み込んだ。
剣を、真っ直ぐに伸ばして体を伸ばした。
キイイイイイイン!
剣と剣がぶつかり、擦れ合った時の金属音が響く。
「いい踏み込みね。まだまだ、だけど。」
何度も、何度も、踏み込んでは払われる。
そんな時、急に剣の切れが上がった?
僕は、この戦いの中で、レベルが上がったと感じた。
レベル5。
ミーサも今までと切れが変わった事を感じた。
「この戦いの中で、剣捌きと切れが増した。ライトと練習を始めて、2週間しか経っていないのに、この切れ。只者じゃないわ。」
ミーサは、密かにライトの成長の早さに驚いていた。
「私が何年も掛かったレベルに。」
もう剣を交えて、どれぐらい経っただろうか。
「ライト。貴方どれぐらいのスピードで成長してるの?。でも、まだ負けれないから。」
ミーサはそう言うと、間を取り剣を下げた。
「貴方は素晴らしいわ。こんな才能を持った人、初めて見た。だからそのお礼も兼ねていいもの見せてあげる。これは私が師匠から授かった技。受けて見なさい。」
技?
技って何ですか?
僕にそんな事言われても。
不安と期待、興味、少しは認めてくれた事への感謝。
その時は色んな感情があった。
「はい、受けて見せます。」
何か勢いで返事しちゃったよ。
「百花繚乱!!」
何ですか~、それ。
目の前のミーサが霞んで見える。
一瞬、踏み込んだように見えたが。
その瞬間、無数の花が目の前に咲き誇った。
シュッ!
シュッ!
シュッシュッ!!
どどおおおおおおん!!
僕は成す術も無く、立っていた位置から、数メートル後方へぶっ飛んでいた。
げほっ、げほお。
はあっ、はあ。
痛あああああ~、何だ、今の?
剣先じゃなくて、花に見えたけど。
あれが百花繚乱って言う技なのか。
「ライト、大丈夫?」
「は、は、はい。何とか。」
僕は片膝を着いたが起き上がれなかった。
ミーサさんが手を差し伸べようとした際に、僕は思わず回復魔法を唱えてしまった。
一瞬、体が光を発し回復した。
「あ、貴方。回復魔法?。そんなの出来るの?」
いけない。
シマッタと思ったけど。
「あ、はい。何か出来るんです。」
答えになってないぞ。
「ま、まあ、いいわ。さっきの技が師匠から教わった技よ。」
「凄い技ですね。何が起こったか分かりませんでした。」
「私もそうだった。それから何回も思い出して練習もしたわ。」
「僕にも出来るでしょうか?」
「ライトはもの凄い速さで成長してる。きっと訓練を続けたら出来るわ。」
「はい。ありがとう御座います。」
「じゃあ。今日はこれでお終いよ。」
僕が何時もの様にギルドへ向かおうとすると。
「あれ。ミーサさんもこっちですか?」
「ええ。今日はギルドに呼ばれていてね。」
「そうなんですね。僕は何時も訓練の後は、ギルドに行って採取の仕事を受けて、薬草を摘んで家に帰ったら、魔法の練習をしてるんです。」
「ライト。毎日、それの繰り返しなの?」
「はい。」
「同じ事の凝り返しで飽きてこない?」
「毎日、楽しいですよ。ミーサさんに会って好きな事やって、上達するんじゃないかって思うと。」
「そ、そう。」
「ミーサさんだって、必死に訓練したんでしょ。」
「ええ、そうね。」
「その時、毎日の繰り返しってどうでした?」
ミーサは、
ハッ!!
とした。
今でこそ訓練は毎日やってはいるが、昔の自分と比べたらどうだろうか。
只、毎日やっているだけになっていなかったか。
「ふふふ。」
「僕、何か可笑しな事を言いました?」
「いいえ。ライトに言われて、昔の事を思い出したの。ありがとう。」
ミーサはライトと訓練を始めた頃から、何か引っかかる事があったのだ。
それはライトの直向きさと、成長する事への楽しさだった。
今の自分には無いもの。
もう一度此処からやろうと決めた瞬間だった。
Sランクを目指す為に。
そんな会話をしていると、あっという間にギルドへ到着した。
「じゃあ、ミーサさん。僕は受注したら、採取に向かうので。」
「ライト、気を付けてね。」
ミーサは窓口でカペラに声を掛けた。
「カペラ。ギルマスは?」
「ミーサさん。お待ちしてました。案内します。」
ミーサはカペラに連れられて、ギルマスの部屋に行った。
コン、コン!!
「ギルマス。ミーサさんが来ました。」
「入っていいよ。」
「じゃあ、ミーサさん。どうぞ。」
部屋にはギルマスとミーサの二人だけになった。
「ミーサ。あの子はどうだい。」
「はい。何の因果か。今、毎朝一緒に訓練をする事になりまして。今日も一緒にやってきました。」
「訓練かい。お前さんが一緒に何て珍しいね。と言うより初めてなんじゃないかい。」
「そうですね。」
「で、どうなんだい。」
「はい。彼は凄いスピードでレベルアップしてます。今日は模擬戦をやったのですが、レベル4か5の実力まで有りそうでした。」
「2週間足らずだろう。恐ろしいね。」
「はい。それに今日の模擬戦で、百花繚乱を打ち込みました。」
「何!。あの技を。それで。」
「吹っ飛びました。やりすぎたと思って起こそうと思ったんですが、自分で回復魔法を掛けて起きました。」
「な、何!。回復魔法まで。」
「やっぱり只もんじゃないね。剣技に魔法とわ。」
「それって?」
「ミーサは詳しくは知らないだろうけど。ゴードンから鑑定の話を聞いてね。ちょっと調べたんだ。ライトはあの事件の前まで、本当に何も取り柄のない子でね。荷物持ちぐらいにしかなってないんだよ。」
ええっ!!
「でもただ単に、今、才能が目を出したとかじゃないんですか?」
「いいや。今のあんたの話じゃ、剣や魔法だけでも、相当な才能があるね。だが前までは冒険者になって既に3年目。あの遭難したパーティーや孤児出身の奴らが、色々と訓練をしてるんだ。棒術や採取ぐらいだったらしいよ出来たのは。それも最低レベルで。」
「そ、そんなに、酷かったんですか?」
「ああ。事件の様な目に合うから止めろと言う奴も居たとか。でもどうしても恩返しをしないとって言って、止めなかったらしい。」
「い、今の感じじゃ。天才と言ってもおかしくないレベルですよ。それが、......。」
「ああ。不思議なもんじゃないか。ミーサ。悪いがもう少し見ておいておくれ。」
「はい。それは構いませんけど。」
「ああ、そうだ。何か思い出したとかって、言っていなかったかい。」
「いいえ。何もかも初めて見たような感じで、話をしてましたけど。」
「ふう~ん、それも、可笑しな話なんだよ。いくら何でも自分の部屋や、自分の物、街並み、孤児院。何かしらは覚えていてもいいもんじゃないかい。それを全部とは。まるで別人みたいだね。」
ギルマスが言ったこの別人と言う事に、ミーサは引っかかった。
ライトが別人?
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