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幸福の道標  作者: Retisia
第一章 生命の渇望
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特定対象


 結論から言うと本の中身はそう大して授業で教わったものと変わりなかった。

期待を寄せていた本に裏切られたレティシアはそれはもういつもの微笑を浮かべられないほどに苛ついていた。


「何故こんな異常性を持っている本の中身がこんな普通なのでしょう?いえ、そもそも魔力を纏っていた原因がハッキリしません。誰かの悪戯?これを?どうやって?いや、違う、違います。纏っていること自体に意味がある?そちらの方が自然です。」


レティシアは魔力を纏っていること自体に意味があると推測する。

この本がしていることは現在の魔法技術出来ないこと、高等技術また失伝技術ともいえるものだ。

この技術が使われていたのは約2000年前、学院が出来上がる以前に国という概念すら無かった時代に体系された。

文献ではこの技術は防御と妨害に適したものだったそうだ。

それを知っているレティシアだからこそこの本に期待したし何もないのが不可解なのだ。


「防御と妨害、これはなにを守って、何から妨害するものなのでしょうか?」


そこが判然としない、レティシアは腹の中の燻るひどく曖昧な感触のする見えない食べ物を食べたような気持ちに眉をひそめながら推測を進める。


「防御とは本の中を守る為ではなかった。そうでなければ私が読めることはなかったでしょう。ならそれは特定の対象(・・・・・)に向けてのものです。ならその対象は?」


レティシアは本をチラリと見詰める。そこには相も変わらずこう描かれている。


”悪魔と天使”


そこで察する。

見てほしくない対象を。

教科書では天使は人間を救う神の御使いと呼ばれ尊ばれている。それに対して悪魔は人を惑わし破滅を招く滅びの獣とされている。

故にまた不可解な事柄が増える。


「悪魔はともかくどうして天使にも見られたくなかったのでしょう。」


そしてまた深く思考に没頭しようとしたその時、


「お~い、レティシア~、どこ~!」


そんな声が聞こえてきた。


(この声は、カルナ、ですね)


レティシアは今日、カルナに図書館にいくことを話していた。きっと両親が心配して居場所を知っていそうなカルナに聞いたのだろう。


(ここまで、ですね)


これ以上心配を掛けるのはレティシアも良心が痛む。

本をもとの場所に戻し、声のした方に歩いていく。怒られることを察しながら。













レティシアが立ち去ったあと本の魔力は急激に高まり始める。


白だった魔力が赤に、黄に、青に、緑、紫、と徐々にいろが濃くなる。なんの反応を示しているのだろうか。それはわからない。

最後、黒色とは言いがたい、それよりも濃く深い漆黒ともいうべき色彩を示す。

そして魔力は衰え消えて行く。やるべきことを終わらせたかのように。

あとにはただ魔力を纏うことのない本だけだった。





 




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