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幸福の道標  作者: Retisia
第一章 生命の渇望
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異常予測



人生の意味を考えたことはあるだろうか。


そこにはさまざまな解釈が成され、社会の枠組みに強制的に入れられる。枠組みを外れてしまったものは犯罪者か放浪者程度だろう。


さて、人生にとって必要なものとは何か?

幸福?、確かに必要です。

不幸?、一理あります。

だが、こんな両極端に決めていいものだろうか。そもそも、そんな結果だけの事柄だけに左右されても良いものか。大事なのは結果ではなく過程ではないのか?結果を引き寄せる行動ではないのか?

そう、人生で必要なものとは“積極性”である。

まあ、もっと突き詰めて言えば、幸せであれ不幸であれ求めるならば行動せよ、といったところだ。



「まあ、怠ればそうなるのは当然でしょうけど。」


「あ~~~!」


見ている限り試験は最悪の形で終わったようだ。

まるで死んだ魚の様な目をしながら項垂れている。

実を言うとあれからカルナはそれはもう追い立てられているかの様に全力で勉強していた。

だが無情、そんな程度で済む学院の試験ではなかった。


(私でも少し詰まる部分がありましたから仕方ないでしょうね)


今回出ていた問題は16歳の生徒には難しすぎる。

レティシアは思ったが口には出さなかった。


「あう~~!」


(そちらの方が面白そうですからね)


もう少しこんなカルナを見ていたかったレティシアである。




「そろそろ帰りましょうか。」


「うん、そだね」


散々呻いて、恥ずかしかったのかカルナは顔を隠しながら返事をした。

それを微笑ましげに見るレティシアはすでに頭では今朝の出来事を思い返していた。

一部一部、鮮明に。

それ故に、思う。

あの死体男を誑かした誰かが付いている、と。


(この学院に何の確証も無く侵入するには危険度が高すぎます)


国立ジクニア王国学院はこの世界レヴァニアの大陸の一つ、リーベント大陸で五指に入るほど警備が整っていることはほとんどの者が知っている一般常識だ。事実ここ500年間、学院には誰も侵入した形跡も跡もない。

だからこそ侵入者が出ていることが解せないし、男の目的も不鮮明なまま思考が留まっている状態をレティシアも甘受せざる得ない。


さて、さて、さて、と。

最も(・・)確率的に高いのは学院の図書館を襲うため、と言うのがある。

リーベント大陸にある五つの魔法施設、そこには禁忌とされた魔法などが置かれているらしい。

そしてその魔法施設の一つこそがこの学院だ。とされている。

されている、とはレティシア自身もそんな物見たことがないからだが...。


(まぁ、それらしい場所には心当たりはあるんですけどね)


流石レティシア。

良くも悪くも好奇心旺盛である。


(そこらを”見張って”おけば何か掴めるでしょうか?)


そう一瞬閃くがすぐに霧散した。

そこまで時間を掛ける物事ではないと判断して。


⬛️



あれから一週間ほどたったある時、レティシアは参考になりそうな文献を探しに学院の図書館に立ち寄った。

学院は約1500年という長い歴史があるため、それに比例したかの様に本が見上げるほどにある。


(これだけの本、いったい何時になったら読み終えるんでしょう)


満天の星空を見るかの様に図書館入り口で目を輝かせているレティシア。

丁度出ようとしていたこの学院の生徒らしき男の子はレティシアの美しい笑顔を見てしまい口を大きく開けながら頬を赤く染めた。

だがそんな様も自分には関係ないと言わんばかりに無視する。

そして数分たったあと、ようやくレティシアは動き出した。

その間、男の子はまるでエサを喰い求める金魚の様になったままだった。





ふらふら、

そう言い表せれる動きをしながらレティシアは歩く。

気になる本を見かけたら手に取りそのまま読む。飽きたら戻し、また気になる本を見かけたら手に取る。

それを繰り返し、本の世界に埋まっていくレティシア。

そして・・・・・・迷子になった。


(ここはどこでしょう。)


まさにレティシアはワンダーランド状態。右も左もわからない。

図書館は長年拡張に拡張を繰り返し、ほぼ迷宮の様なものだ。


(確か毎年何十人も迷子になっていると聞いてはいましたが...)


まさか私が、そう思うレティシア。

まだまだ年若い16歳、油断は大敵だ。普通の乙女ならば心細く泣いてしまうかもしれない。それがなくとも不安にはなるだろう。


(ま、いつか出れますよね!)


だが勘違いしては行けない。

ここにいるのは『銀冷姫』レティシア様だ。

こんな状況も何のその、また文献探しをし始める。

カルナがいればこう言っていただろう。

”もっと緊張感もって!?お願い!私を助けると思って!”、と。

だが無情、そんな思いもいなければ伝わらない。





どれだけ時間がたったのだろうか。図書館は天井がガラスで出来ているので外の様子が見れる。見るともう外は真っ黒黒、深夜の深夜といったところだ。

図書館の中は魔力外灯によって常に明るくなっているので視界にはなんの問題もない。

そんなころ、レティシアはある文献を目にした。そこにはこう描かれていた。


”悪魔と天使”


悪魔と天使は誰もが知っている。これだけならばレティシアもたいした興味も湧かずにその場を通り過ぎたろう。

だがひとつ他の本とは違った点があった。


(本が魔力を纏っている?)


それこそ足を止めた理由だ。

ここでわかってほしいのはあくまで本に魔力がついている、ではなく本が魔力を纏っている、という点だ。

魔力をつける程度ならそこそこ魔力を使う人なら誰でも出来る。

だからこそ異常が際立つのだ。


だが思い出だしてほしい。

誰が(・・)この本を見つけたのか。

好奇心に身を任せたが故にここにたどり着いたあの少女が異常極まるあの本を読むことを辞められるだろうか?

無理である。


「ふ~ふふ~ん」


とてもご機嫌に魔力を纏う本を持ちながら近くにあった椅子に座り、読む準備をし始める。もうレティシアには危険なんて言葉も異常なんてレッテルもこの本の期待感を高まらせるスパイスでしかない。


「さて、ではでは」


たった独り、誰もいないその場所で、異常を内包するそのページを今、開く。







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