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43話 共同戦線




デルタールはアマネの過去。アマネとリアナの知られざる繋がりについて天人とアルトに語り終えると静かに息を吐いた。


「リアナちゃんがいることでカリスはアマネさんを簡単に殺せないはずだわ。だからアマネさんはまだ大丈夫よ。

きっとリアナちゃんがアマネさんをさらったのはキュラにアマネさんを殺させないためよ。

きっとリアナちゃんはどこかでアマネさんのことを母親だと思ってるはずよ」


デルタールは自分に言い聞かせるように天人とアルトに言った。

天人はそれを聞いて、心を決めたようだ。

椅子から立ち上がった。


「アルト、アマネさんを助けに行こう。たとえ、カリスと戦うことになっても」


「ああそうだな。俺はもう逃げるわけにはいかないと誓ったしな」


アルトも天人に頷く。

そこにある男の叫びが切り込んできた。


「おいお前らっ!!」


「えっ、ラメット!?」


それはラメットだった。顔中傷だらけだが、なんとか息を保っている。

店の奥から出てきたラメットは天人たちが座るところまで来ると、突如頭を床に打ちつけ、土下座して叫んだ。


「頼む、俺の友人を……ピットとムンクを救ってくれ!!」


「はっ? どうゆうことだよ」


アルトがそう訊ねると、ラメットは喚き散らすようにその旨を伝え始める。


「俺が"かまいたち"のダリュウズ・アイを奪われたとき、一緒にあいつらも俺を庇って捕まったんだ。

俺はその後、ずっと二人を助ける機会を探ってきた。

でも俺一人では何もできないんだ」


ラメットは床の色が変わるほどに額をすり寄せ、天人たちに嘆願した。

ただそれを含み笑いを浮かべながら笑って見ている天人とアルトに、デルタールは口を挟んだ。


「天人ちゃん、アルトちゃん。昨日瀕死だったあなたたちを"ユニコーン"を使って助けてくれたのはラメットなのよ。

それにラメットは高飛車だけど、決して悪い人じゃないわ」


アルトは助け船を出されてもなお頭をつけたままのラメットを見下ろした。

たしかに今あんなに偉そうだったラメットがあまりいい関係ではなかった自分に助けを懇願している。

アルトはもしかしてと思い、訊ねた。


「なあ、お前がデッドオアマニーとか万引きとかまでして金を稼いでた理由って……」


そう言われ、ラメットはこっくりと顎を引いた。


(やっぱりそうか……)


アルトの思った通りだった。

ラメットはタウンPDの人たちを助けるためにお金を稼いでいたのだ。

その動機と原動力はやはりアマネと似通ったもの、殺された王の息子でありながら、国のために何もできないという後ろめたさからなんだろう。

それらを察すると、アルトはラメットの頭をつかみ、それを床から離した。


「お前の気持ちは俺もなんとなくわかる。俺も元王子だからな。理不尽な理由で親父を殺される理由も分かる」


それを聞き、立ち上がったラメットはアルトの目を凝視した。


「お前も……どこかの国の王の息子だったのか?」


「ああ、そうだ。お前とおんなじで親父を殺した奴に今は権力握られてるけどな」


天人は黙ってその二人を見ていた。

この二人は繋がるものがあるようだった。

そしてアルトはラメットに向けていた視線を天人に移すと、答えがわかっているかのような口調で天人に質問した。


「いいよな、天人。こいつの仲間も助けるってことで」


「うんっ、もちろんだよっ」


断る理由などなかった。

そもそもこの頼みを聞き入れたところでリスクはさほど変わらない。

既に敵対することが決まっているカリスの住む城から、助ける人数が増えただけだ。


「助けるのは助ける。でも、まさかお前が何もしないわけにはいかないだろ?」


「えっ? ……なんだよ、まさか俺もなにか頼まれないといけないのか?」


アルトに言われ、戸惑うラメットに天人は例のものを渡した。


「これ、使ってくれていいよ」


それは"かまいたち"のダリュウズ・アイだった。

勿論、ラメットのものではない。天人が持っていたものだ。

これでラメットにも戦ってもらう。それがアルトの注文だった。

……でも、アルトたちはすっかりその眼に関する事情を忘れていた。


「なっ、なんで……お前がこれ持ってんだよ馬鹿野郎」


「えっ、あっ、そうだ、忘れてた。ラメットっ!

これは僕が元々……グヒャンッ!」


その瞬間ラメットが天人を殴り、天人の右半分が飛ぶ。

ラメットは床に倒れた天人の胸ぐらを抑えにかかった。

激情するラメットの体を急いでアルトが抱き抱える。


「ラメット、お前こそ馬鹿かよっ! お前の持ってたのとは違うだろっ!? お前右眼左眼の区別もつかないのかよっ!!」


「うっせぇっ! 右眼も左眼も両方大事な形見なんだよっ!!」


「形見……?」


その言葉に天人が反応する。

デルタールは怯えて指をくわえているだけだ。


「ラメット……もしかして君のお父さんもっ」


「いや違う! 親父じゃない」


ラメットは床に転がったダリュウズ・アイを拾うと、それを大事そうにそっと両手で包みながら言う。


「"かまいたち"は……俺の幼なじみが使ったんだ。

そいつは年が俺よりも大分上だったとはいえ、女だった。

けれども、両眼を使ってこの国のために戦っていたんだ。

お前らの師匠だっていうアマネと一緒にな」


「えっ、じゃあその人は……」


天人が恐る恐る聞く。


「そうだ。死んだんだ、カリスがこの国を乗っ取ろうとしたときに真っ先に戦いに出てな」


「そうだったんだ、じゃあ大事なものなんだね」


「ああそう……おいまだ話は済んでねーぞっ。

なんでお前がこれを持ってるんだっ」


「だっ、だから僕はこれを敵から手に入れたんだっ。決してこの国から取ったんじゃないよっ」


「あ〜あ、またこのくだりかよ」


アルトは今にももう一発天人の顔に殴りかかりそうな、ラメットに天人が"かまいたち"を手に入れた経緯を説明した。

でもやっぱり、ラメットは首を傾げたままだった。


「じゃあお前が十歳のときにお前を襲った奴が使ってたダリュウズ・アイが"かまいたち"だってことか?

なんで海を渡ったところにあるユーランド王国って国にこれが移動してるんだよっ?」


「だから僕に聞かれても……僕その日以前の記憶が全部無いし……」


「ちょっとラメット、いい加減天人ちゃんたちを疑うのやめなさいよっ。天人ちゃんたちもあなたの恩人なんでしょ?」


そこでやっとデルタールが言い争いに終止符を打つ。

ラメットもそれを言われると、食い下がるしかなかった。


「わかった。百歩譲ってお前の言い分を信じる。

でも、これはこれは明日の共同戦線が終わっても俺のもんだ、いいなっ」


「ええ〜〜、マリスさんの形見でもあるのに」


「ちょっ、ちょっと待てよ」


アルトがラメットがぼろっととんでもないことを言ったのに気づく。


「明日って何だよ」


アルトがそう聞くと、ラメットはダリュウズ・アイを握りしめて言った。


「明日なんだよ。俺の友人の一人、ピットが公開処刑されるのは……」


ラメットが申し訳ないやら悔しいやらいろんな感情を滲ませながらそう答えた。


「明日、ピットがまず殺され、次の日にムンクだ。

その流れでお前らの師匠も殺されるかもな」


「まっ、待てよ。何でそんなことわかるんだよっ」


「あら、アルトちゃん。今朝の新聞に載ってるわよ」


「えっ、そうなのかデルタール。俺一番最後の面しか見ないから」


ラメットが言う通り、明日彼の友人の一人ピットが公開処刑される。

天人が処刑されかけたカリス城の前にある処刑場で。


「じゃあ、仕方ないよ。明日アマネさんも全員助けないと」


「おい、天人。簡単に言うけどな……」


「ああ天人の言う通りだぜ、馬鹿野郎。どうした、びびってんのかよ、アルトちゃん」


「お前が言うなっ!」


アルトはそんな大事なことを唐突に言われ、怒っているがもう仕方ない。

明日こちらから仕掛ける。それ以外に方法はない。


「あ〜、分かったよ! 明日だなっ、明日なんだなっ」


「そうだよアルト。馬鹿みたいに喚いてもどうしようもないって僕でもわかるよ」


「……お前もお前で俺ごと自傷するなよ天人。なだめてるのかもしれないけど」


天人にも言われ、アルトはやっと落ち着いたようだ。

手をパンパンと叩き、やれやれと振る。


「じゃあ、明日だ。何人も人を殺すことになるかもしれないがお前ら大丈夫か?」


ラメットが改めてそのことを確認する。


「あっ、そうか。普通の兵士の人とも戦わないといけないんだね」


天人はラメットに言われ、今一度そのことを再認識した。

統術師を前にすれば、武器を持った人間など丸腰に等しい。


「何言ってんだよ。そんなの今更大丈夫だ」


天人とは対照的にアルトはそんなこと気にもとめていないようだ。


(今まで何人も死んだのは見てきたからな)


そしてアルトは歴戦の勇者でもあるかのようにこれまで見てきた多くの死を想起する。


「そうだね、僕も大丈夫だよ」


天人もアルトに頷く。

それにラメットは頭を下げた。


「そうか……ありがとうな。お前ら」


「何言ってんだよ、さっきから急にへりくだったりして。

気色悪いぞっ」


態度がコロコロ変わるラメットをアルトがとがめる。


「なっ、何だと、馬鹿野郎!!」


「ラメット、君はもっとボキャブラリーを増やしたほうがいいと思うよ」


その語彙を天人が否定する。

こうしてなんとか共闘するという流れになった三人は明日という日を待った。




また気が向けば書きたいと思います。

ありがとうございました。

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