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かわいい子(♂)はママになれ  作者: 相当に疲れた人
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ヤンデレのショタにしようと思ったけどいつの間にかただのショタママになっていた

 ○○……大学生でひとり暮らしをしている。

 川田新かわだ あらた……○○の甥っ子。小学五年生になる。栗色の髪に琥珀の瞳が特徴。○○が好きというのは親族も周知の事実。



 午後二時、○○の家のインターホンが鳴る。


○○「あれ、ちょっと早くね」


 ○○は手に持っている漫画を机に置き、玄関に急ぐ。


 鍵を開けるとそこには新がいた。


新「お義兄ちゃん、遊びに来たよ!」


 年相応の快活な笑顔。夏が近いからか、服装は青を基調とした半そでと短パン。


○○「早かったね」


新「うん。久々に会えると思うと嬉しくってさ……」


 恥ずかしくなって新は被っていた麦わら帽子で顔を隠す。


○○「にしても大きくなったな」


 ○○は新の頭をなでようとすると、新は後ろに一歩下がる。


新「汗かいてるからダメ……」


 新の頬はポッと赤くなり、視線が泳ぐ。


○○「よかった……。嫌われたかと思ったよ」


新「そんなことないよ! お義兄ちゃんのことはすごく大好きだよ。ただ、汗臭くって恥ずかしい……」


○○「そういうことか。なら家のシャワー使っていいよ。その間にお菓子とか準備するから」


新「ありがとうお義兄ちゃん!」



 ○○はバスタオルなどを準備して、キッチンでお菓子の準備を進める。


新「お義兄ちゃん。お風呂ありがとう!」


 そこにシャワーを浴び終えた新が、ドアから顔をのぞかせる。


○○「気にするな。後さ、飲み物はオレンジジュースにする? サイダーにする?」


 ○○は左手にサイダー、右手に紙パックのオレンジジュースを持つ。


新「じゃあオレンジジュースがいい!」


○○「分かった。じゃあそこから好きなコップを取って行って」


 ○○が食器棚を示すと、新は食器棚をのぞき込む。


 すると新は動かなくなり、視線が一つにくぎ付けになる。


新「お義兄ちゃん。このマグカップなんで色違いが二つあるの?」


○○「それは元カレと同棲してた時に使ってたんだよ。今はもう使ってないから、それでもいいよ」


新「いいの!?」


○○「いいよ。もう誰のでもないし」


 そう言うと新は目をキラキラと輝かせてコップを見る。


 ○○はそんな嬉しそうな新を見て、幸せそうだ。


○○「新、このタオルで隣の部屋のテーブルを拭いてきてくれない?」


新「分かった!」


 新は○○から渡されたタオルを手に、すっ飛んでいく。


 ○○はその後をゆっくりと歩いていく。手にはオレンジジュースとお菓子ののせた皿。



 新が拭き終わったテーブルの上に○○は皿とオレンジジュースをのせる。


新「ねえお義兄ちゃん。おそろいのマグカップしよう!」


○○「それはちょっと……」


 ○○が断ろうとすると、新は目を潤ませる。


新「僕じゃだめ……?」


○○「いや、そんなことはないけど……」


 新の涙目に心苦しくになり、○○はついに諦める。


○○「分かったよ。ちょっと待ってろよ」


 ○○は立ち上がり、キッチンからあのマグカップを持ってくる。


 居間に行くと、新はおそろいのマグカップに目を輝かせる。


新「一緒だね。これだとカップルみたいだね」


○○「そんなこと言うなら、今から戻しちゃうぞ」


新「嘘だよ。ごめんお義兄ちゃん」


 テヘッと笑いながら、新は自分のマグカップにオレンジジュースを注ぐ。


新「お兄ちゃんも」


○○「え、あ、悪い」


 ○○は新にオレンジジュースを注いでもらい、ソファーに腰掛ける。


 すると新はサッと距離を詰めて、肩がくっつきそうになる。


○○「なんか、近くない?」


新「嫌かな?」


 甥っ子が目を潤ませると、強くは言えない。○○はまだ甘えたい盛りなのだろうと自分に言い聞かせる。


○○「じゃあ、お菓子でも食べながらゲームするか」


新「やった! 久々に大乱戦やろう!」


○○「いいぞ。俺はかなり強いが、腕はどのくらいあげた?」


新「同い年の中で敵なしだよ」



新「また負けた! やっぱりお義兄ちゃんは強いや」


○○「新も腕を上げたな。二戦目なんか負けるかと思った」


 ○○は過去の戦いを思い出し、額ににじんだ嫌な汗をぬぐう。


○○「お、時間もそろそろ都合がいいし、夜飯にするか」


 ○○が言うと、新はあからさまに喜ぶ。


○○「じゃあ、何食べたい? デリバリーするけど」


新「ねえ、毎日それしか食べてないの?」


 新の顔が険しくなり、○○はどもる。


○○「いや、そんなことはないけど……。出来合いのものは多いかな……」


新「もう、よくないよその生活。今日は僕が作ってあげる!」


○○「でも料理できるのか?」


 ○○がそう聞くと、新はむすっとする。


新「お義兄ちゃんよりはできるもん。それに、ちゃんとお母さん手伝いしてるからね」


○○「そっか……。じゃあお願いしようかな。でも、俺が後ろで見守るからな」


 ○○はせめてもの兄としても威厳を見せようとする。


新「はいはい。でも邪魔だけはしないでね」


○○「分かってるよ。俺を信じろ」



 新は冷蔵庫の中を見ると、あからさまに大きなため息をつく。


新「空っぽじゃん!」


○○「しょ、しょうがないだろ! 普段は料理をしないんだから!」


新「もう、お義兄ちゃんにがっかりだよ……」


○○「理想の義兄になれなくて悪かったな」


 ○○は髪をくしゃくしゃとして、ばつが悪そうな顔をする。


 だが、新はがっかりとした様子というより、どこか嬉しそうだ。


新「買い物行くよ。でさ、今日は何が食べたい?」


○○「カレーライスとか……かな」


新「わかった。もちろんついてきてくれるよね?」


○○「当たり前だろ。お前ひとりじゃ不安だしそれに今は俺が保護者だからな」


新「料理を作ってもらう側なのに?」


○○「……ついていかないぞ」


新「ごめんって冗談。許して? ね?」


 いたいけに笑う新はどこかあざとい。


○○「どっちにせよついていくけどな。もしものことあったら目を離した俺の責任だからな」



 ○○の家の近くにあるスーパーは品ぞろえが豊富で、生活で不便することはまずない。


 新は目を光らせ、まるで主婦でも宿ったかのように鮮度をぬかりなく調べる。


○○「なあ、そんなに調べる?」


新「当たり前じゃん。鮮度は大事だもん」


 新が厳選した食材がカートに乗せられる。


 ○○は何が違うかわからず見比べるも、結局はわからずにいた。


○○「あ、そうだ。お菓子でも買っていく?」


新「そうだね。好きなの二つくらいなら大丈夫じゃないかな?」


 これじゃあどっちが年上なのかわからない。○○は複雑な表情を浮かべる。


○○「じゃあ、カレーに必要なもん買ったら買うか」


新「そうだね。そっちのほうが計算しやすいからね」



 結局、そのあとはお菓子を二つ買って帰る。


 ○○の手にはビニール袋が二つ。家にたどり着くころには暑さもあって服が灰色に変色していた。


新「ただいま!」


 元気よく家に上がる新。その姿に○○は目を和ませる。


○○「お帰り」


新「お義兄ちゃん早く!」


○○「わかった、わかった」


 キッチンから顔をのぞかせる新にせかされ、○○は靴を乱暴に脱ぎ捨てる。


 ○○はシンクにスーパーのビニール袋を置く。


新「まずは野菜を切って、それから鍋で玉ねぎがきつね色になるまで炒めると……」


 新はカレーの箱を音読して、袋から玉ねぎと人参、ジャガイモなんかを取り出す。


○○「大丈夫か? 俺が切ろうか?」


新「大丈夫。お義兄ちゃんはジャガイモでも洗っててよ」


 突き放されるような言われ方に○○はしょぼんとする。


○○「分かった……」


 ○○は肩をすぼめてしょんぼりとジャガイモを洗う。


新「ごめんお義兄ちゃん……。強く言い過ぎたかも。でも、今回は僕を信じて」


○○「分かったよ。じゃあ俺は、ちょっとした手伝いでもするとしますか」


 ○○はジャガイモを洗い、引き出しからピーラーを取り出す。


新「ありがとうお義兄ちゃん……」


○○「なんか言ったか?」


新「何でもない!」


 新は玉ねぎの根を切り落とし、皮をこなれた手つきで向いていく。


 ○○はピーラーでジャガイモの皮をむきながら、時おり心配そうに新を見る。


 それからは二人の間に会話はなく、無言で作業をする。


 そして……。


○○「よし! 皮はむき終わったぞ!」


 ○○は誇らしげに丸裸のジャガイモと人参を新の近くに置く。


 新はそれを受け取ると、危なげなく同じ大きさにカットしていく。


○○「新、料理うまいな」


新「べ、別にこれくらい教えてもらえば普通だし……」


 新は少し顔を赤らめながら、鍋に野菜を入れていく。


新「後は一人でやるから、もういいよ」


○○「分かった。じゃあ俺は片づけでもしておくかな」


 ○○はそう言って、使い終わったまな板や包丁を洗っていく。


 それがすんだら、食器やスプーンを準備してサポートに徹する。


 そうこうしているうちに新お手製のカレーが出来上がり、おいしそうな匂いがキッチンに漂う。


○○「いい匂い……。母さんのカレーを思い出すよ」


新「そこまで言われると照れる……」


 新は小さい茶碗にカレーをよそって○○に手渡す。


新「大丈夫だと思うけど、味見してみて」


 ○○は息を吹きかけ程よく冷ましてから一口で食べる。


○○「うまい!」


新「よかった……。じゃあ晩御飯にしよっか」


○○「そうだな。てか、お前は家に帰らなくて大丈夫なのか?」


新「え? 今日は泊っていくよ」


○○「服は?」


新「もちろんお兄ちゃんの借りるよ?」


○○「お前の親から聞いてないぞ」


新「言ってないもん」


○○「お前なぁ……」


 ○○は大きなため息をつくと、すぐさま携帯を取り出し親に電話をかける。


 すぐに親につながり、○○は平謝りをする。


○○「すみません。遊んでいたらこんな時間で……。泊まっていくとか言っているんですけど、すぐに帰らせ……え? 泊めてくれ? いやでもそういうわけには……。いえ! 嫌ではないですよ。 わ、分かりました……」


新「どうだった?」


○○「いいてっさ。泊まって」


新「やった!」


 新は小さくガッツポーズをすると、意気揚々とカレーを盛りつける。


新「はいお義兄ちゃん! 今夜は楽しみだね!」


○○「何するか知らないが、子供は早く寝ろ!」


 二人がカレーを食べた後、普通の夜を過ごしたのか。はたまた、そうでない夜を過ごしたのか。それはまた別のお話。


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