幼馴染の家で宅のみすることになったが、俺の不手際でちょっと遅れたら出来上がっていた
今回は本物のママになりそう(小並感)
駅の改札を抜け、走り出す瑛太。見ごろをとうに過ぎた桜は散り落ち、街道にできた桃色のじゅうたんを意に返さず踏んでいく。
俺は急いでいた。
雅の家で飲む約束をしたが、仕事の失敗で居残り業務。詫びの電話を入れて職場から急いで雅の家に向かっていた。
スマホにチラッと目をやると、時刻は九時半。約束の時間を一時間もオーバーしていた。
エレベーターを待つこともできず、六階までダッシュで駆け上がった。
俺が急いでいるのは遅れた申し訳なさともう一つ。あいつが心配だからだ。
家の前につくとチャイムを鳴らす。
頼む、いつものあいつでいてくれ……!
雅「ふぁーい」
俺「おい、もう飲んでるのか!?」
雅「しょうがないじゃーん。だって瑛ちゃんがおそいだもん」
すっかりと紅潮した頬。口は酒臭くって仕方ない。
手遅れだったか――
俺「何本だ!? 何本飲んだ!?」
雅「まだ二本目ー」
俺「ならよかった……。我慢できたんだな」
雅「ほめろ!」
あーだるい。
俺「いいこいいこ(棒)」
雅「もっと誠心しぇえい!」
俺「うるさい。玄関前だから近所迷惑だろ」
そう言われるとしおらしくなって、雅は唇を尖らせてしまった。
家の奥へとしょぼしょぼ歩いていき、俺も軽く会釈をして雅の家に上がる。
廊下の奥の部屋に入ると生活空間が広がる。ベッド、ちゃぶ台、デスク、テレビ。
床にはいろんなものが落ちていて、雅の性格をまざまざと見せつけられる。
俺「お前さー……」
俺は相変わらずな雅に頭が痛くなってきた。
雅は俺の辛苦なんてつゆ知らず、キッチンに酒を取りに行く。
雅「映ちゃーん。何がいい?」
俺「どんだけ買ってんだよ!」
腕に抱きかかえられた発泡酒や缶ビールの数々。
雅は恍惚に笑い、ちゃぶ台の上に置く。
俺「なあ、こんなにだれが飲むんだ」
雅「瑛ちゃんと俺」
そう言って雅は爺臭くため息を漏らして座る。
俺は仕事カバンをテレビのおかれた台の下に置き、ゆっくりと座る。
俺「じゃあ、俺はこれをもらおうかな」
俺はカシス系の発泡酒を手に取り、喉を潤す。
雅はあいていた缶を手に取り、豪快に喉を鳴らして酒をあおる。
雅「っぷはぁ!!」
至福の声を漏らして雅は力強く缶を叩きつける。
雅「聞いてよ瑛ちゃん」
俺「なんだ?」
雅「俺さぁもっってもてなんだよねえ」
俺「知ってる」
雅「え!? いったけ?」
俺「だいたい酒はいるといつもそればかりだろ?」
こうやって酔うといつも自慢から入る。
俺はうんざりするほど聞かされておおかた予想はしていた。
雅「じゃあこれは。俺、先輩にコクられたのよ」
俺「まじかよ。どうしたの?」
雅「断ったよー」
いえーいと言いたげな満面の笑み。
俺はつられて笑うも素直に笑えずぎこちなくなる。
俺「いいよな……。俺は今日も怒られて残業だったよ」
羨ましい__
俺はそんな羨望を振り払うように酒をグイっと飲む。
雅「大変だね。いい子いい子してやろうか?」
俺「はあ!? 嫌に決まってんだろ。だいたい、男にやって欲しくねーっての」
雅「男じゃないし。俺、美男子だし」
俺「すごい自信だなおい」
雅「だから俺は男じゃなーい」
俺「おい! やめ__」
雅にネクタイを強くひかれた俺は、不意のことで雅の胸に飛び込んでしまう形となる。
男のごつごつした筋肉質な胸、華奢に見えてもしっかりとした男だった。
雅「よーしよし」
俺「ば、ばかやめろ!」
俺が暴れると、雅は首をがっちりとホールドする。
芳香剤のせいだろうか。雅の服は花のいい匂いがして気恥ずかしくなる。
俺「こうなったら……そら!」
雅「うわっ!」
引いてダメなら押してみろ。
俺が頭突きすると、雅は仰向けになって俺が覆いかぶさる形になる。
雅「……優しくしてね」
俺「な、な、ななんもしねーよ!!」
酒のせいで熟れた頬、うるんだ目はどこか煽情的だ。
なんで俺はこんなにドキドキしてるんだ……?
雅「おやおや~。据え膳食わぬは男の恥だぞ~?」
俺「バカか。誰が男の据え膳を食うか」
雅「今ならタダだぞ?」
俺「誰が男となんか……」
吐き捨てようとすると、雅が俺の肩を叩く。
振り向くとネクタイをつかまれてグイっと引っ張られる。
雅「言っとくけど、俺は本気だぞ?」
__こいつ酔いすぎだ
雅は目を閉じて唇を近づけてくる。
俺「ば、バカやめろ!」
…………。
雅「あほ! やーい童貞!」
目を開くと雅は手を後ろについてケタケタと笑う。
こいつ……!
俺「さっきから俺をおちょくりやがって……」
雅「え……待って本気にする? 待って待って待って」
もちろん俺は冗談のつもりでやっている。
だが問題なのが着地点を見失ってしまった。
俺はワイシャツにボタンに手をかけ、ちょうど真ん中あたりまで外していた。
雅「…………する?」
俺「はあ!?」
雅は嫌がることなくむしろ乗り気だ。
俺は仕返しのつもりがいよいよ止まることができなくなる。
雅「俺、そういうの同性とは初めてだからさ……」
まてまてまて! これで嘘でしたとか言えない雰囲気じゃん!
雅「やっと瑛ちゃんもその気になってくれて嬉しい……」
くそ!!!!
どうにでもなれ!!!!!
後日談
あの日から雅との関係はぎくしゃくだ。だけど、前より甘えてくる……気がする?
HAPPYEND?
着地点を見失ったのは作者でしたまる