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かわいい子(♂)はママになれ  作者: 相当に疲れた人
2/4

幼馴染の家で宅のみすることになったが、俺の不手際でちょっと遅れたら出来上がっていた

今回は本物のママになりそう(小並感)

 駅の改札を抜け、走り出す瑛太。見ごろをとうに過ぎた桜は散り落ち、街道にできた桃色のじゅうたんを意に返さず踏んでいく。


 俺は急いでいた。


 雅の家で飲む約束をしたが、仕事の失敗で居残り業務。詫びの電話を入れて職場から急いで雅の家に向かっていた。


 スマホにチラッと目をやると、時刻は九時半。約束の時間を一時間もオーバーしていた。


 エレベーターを待つこともできず、六階までダッシュで駆け上がった。


 俺が急いでいるのは遅れた申し訳なさともう一つ。あいつが心配だからだ。


 家の前につくとチャイムを鳴らす。


 頼む、いつものあいつでいてくれ……!


雅「ふぁーい」


俺「おい、もう飲んでるのか!?」


雅「しょうがないじゃーん。だって瑛ちゃんがおそいだもん」


 すっかりと紅潮した頬。口は酒臭くって仕方ない。


 手遅れだったか――


俺「何本だ!? 何本飲んだ!?」


雅「まだ二本目ー」


俺「ならよかった……。我慢できたんだな」


雅「ほめろ!」


 あーだるい。


俺「いいこいいこ(棒)」


雅「もっと誠心しぇえい!」


俺「うるさい。玄関前だから近所迷惑だろ」


 そう言われるとしおらしくなって、雅は唇を尖らせてしまった。


 家の奥へとしょぼしょぼ歩いていき、俺も軽く会釈をして雅の家に上がる。



 廊下の奥の部屋に入ると生活空間が広がる。ベッド、ちゃぶ台、デスク、テレビ。


 床にはいろんなものが落ちていて、雅の性格をまざまざと見せつけられる。



俺「お前さー……」


 俺は相変わらずな雅に頭が痛くなってきた。


 雅は俺の辛苦なんてつゆ知らず、キッチンに酒を取りに行く。


雅「映ちゃーん。何がいい?」


俺「どんだけ買ってんだよ!」


 腕に抱きかかえられた発泡酒や缶ビールの数々。


 雅は恍惚に笑い、ちゃぶ台の上に置く。


俺「なあ、こんなにだれが飲むんだ」


雅「瑛ちゃんと俺」


 そう言って雅は爺臭くため息を漏らして座る。


 俺は仕事カバンをテレビのおかれた台の下に置き、ゆっくりと座る。


俺「じゃあ、俺はこれをもらおうかな」


 俺はカシス系の発泡酒を手に取り、喉を潤す。


 雅はあいていた缶を手に取り、豪快に喉を鳴らして酒をあおる。


雅「っぷはぁ!!」


 至福の声を漏らして雅は力強く缶を叩きつける。


雅「聞いてよ瑛ちゃん」


俺「なんだ?」


雅「俺さぁもっってもてなんだよねえ」


俺「知ってる」


雅「え!? いったけ?」


俺「だいたい酒はいるといつもそればかりだろ?」


 こうやって酔うといつも自慢から入る。


 俺はうんざりするほど聞かされておおかた予想はしていた。


雅「じゃあこれは。俺、先輩にコクられたのよ」


俺「まじかよ。どうしたの?」


雅「断ったよー」


 いえーいと言いたげな満面の笑み。


 俺はつられて笑うも素直に笑えずぎこちなくなる。


俺「いいよな……。俺は今日も怒られて残業だったよ」


 羨ましい__


 俺はそんな羨望を振り払うように酒をグイっと飲む。


雅「大変だね。いい子いい子してやろうか?」


俺「はあ!? 嫌に決まってんだろ。だいたい、男にやって欲しくねーっての」


雅「男じゃないし。俺、美男子だし」


俺「すごい自信だなおい」


雅「だから俺は男じゃなーい」


俺「おい! やめ__」


 雅にネクタイを強くひかれた俺は、不意のことで雅の胸に飛び込んでしまう形となる。


 男のごつごつした筋肉質な胸、華奢に見えてもしっかりとした男だった。


雅「よーしよし」


俺「ば、ばかやめろ!」


 俺が暴れると、雅は首をがっちりとホールドする。


 芳香剤のせいだろうか。雅の服は花のいい匂いがして気恥ずかしくなる。


俺「こうなったら……そら!」


雅「うわっ!」


 引いてダメなら押してみろ。


 俺が頭突きすると、雅は仰向けになって俺が覆いかぶさる形になる。


雅「……優しくしてね」


俺「な、な、ななんもしねーよ!!」


 酒のせいで熟れた頬、うるんだ目はどこか煽情的だ。


 なんで俺はこんなにドキドキしてるんだ……?


雅「おやおや~。据え膳食わぬは男の恥だぞ~?」


俺「バカか。誰が男の据え膳を食うか」


雅「今ならタダだぞ?」


俺「誰が男となんか……」


 吐き捨てようとすると、雅が俺の肩を叩く。


 振り向くとネクタイをつかまれてグイっと引っ張られる。


雅「言っとくけど、俺は本気だぞ?」


 __こいつ酔いすぎだ


 雅は目を閉じて唇を近づけてくる。


俺「ば、バカやめろ!」


 …………。


雅「あほ! やーい童貞!」


 目を開くと雅は手を後ろについてケタケタと笑う。


 こいつ……!


俺「さっきから俺をおちょくりやがって……」


雅「え……待って本気にする? 待って待って待って」


 もちろん俺は冗談のつもりでやっている。


 だが問題なのが着地点を見失ってしまった。


 俺はワイシャツにボタンに手をかけ、ちょうど真ん中あたりまで外していた。


雅「…………する?」


俺「はあ!?」


 雅は嫌がることなくむしろ乗り気だ。


 俺は仕返しのつもりがいよいよ止まることができなくなる。


雅「俺、そういうの同性とは初めてだからさ……」


 まてまてまて! これで嘘でしたとか言えない雰囲気じゃん!


雅「やっと瑛ちゃんもその気になってくれて嬉しい……」


 くそ!!!!


 どうにでもなれ!!!!!




後日談

 あの日から雅との関係はぎくしゃくだ。だけど、前より甘えてくる……気がする?



HAPPYEND?

 

着地点を見失ったのは作者でしたまる

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