99話 歴史のお話
剣を抜き放ち、こちらへと駆けだす騎士団。その数は20。対してこちらは私を含めずに5人。ここは公平にいい感じに振り分けよう。
知覚できない真白がその場を飲み込んだ。
「なんだ?」
状況を飲み込めない騎士団の誰か。走っていたら急に景色が変わって周りの人数が減って、眼の前にいるテロリストも一人だけ。当然、困惑するだろう。
「え、ちょ、ミリア?ミリアさん?俺の担当多くない?」
こっちも困惑していた。カナトの担当は8人。カナトの実力的には恐らく一瞬で片がつく。が、相手の能力次第では少しは長引くかもしれない。面白くなるといいな。
「ん?どこ行ったバカ共」
なんか騎士団で一番偉そうなご老人。ここは1対1でシャリテに戦ってもらおう。シャリテが既に能力を使ってご老人を攻撃していたならもう終わってしまうが、まあそれならそれで仕方ない。相手は騎士団で一番強そうでもあるから。
「こちらミスターS。ジジイじゃなくて小学生がいいですどうぞ。ミリアちゃんでも可」
私は反応しないぞ。
「反応無し了解オーバー」
「お~。全部壊そー」
轟音。それが間断なく轟く。騎士団10名は突如変わった景色に困惑している間に、アリスの従える兵器に飲まれてしまった。大きな円を描くように騎士団をぐるりと包囲しながら砲撃する兵器の群れ。その過剰な殲滅は一分間続いた。
こちらはシガレットと、騎士団で二番目に強そうな女性。シガレットが能力を持っているかは不明だが、いい感じになるのではないだろうか。シガレットは大人だし。大人はきっと強いはずだ。多分。がんばれ。
「俺の相手はお嬢ちゃんか。俺の理想、犬猫大陸のために死んでくれ」
「うわ、おっさんきしょ」
「・・・・・・・・・う、うわあぁぁぁぁあ!!!!」
言葉のナイフで先制攻撃を食らってしまったシガレットは相手に向かって走り出した。
リンネちゃんは私と一緒にこっち。
「んえ!?クリアスター!?それと、なぁんだぁ。ラヴィさんかぁ。じゃあ作戦は成功したんだねぇ」
「当たり前じゃないかリンネ。僕にかかればどうってこと無いよ」
ここはDELETEがあるビルの地下3階。私たちが過ごしていた地下2階の下の階だ。ラヴィはここに住んでいてたまに上がってくる。で、誰の記憶にも残らず去っていく。そういう生活をしていた。
「クリアスターはちょっと能力の実験したら気絶しちゃったよ。だから今は気絶した状態でも楽しめる能力使って遊んでるんだ」
クリアスターはちょっとアレなお顔でベットの上でビクンビクンと。私は全身が隠れる布をかけてあげた。
「ところでところでミリア様~。上手く出来たご褒美とか~、くれたりしないかな~」
そんなことより聞きたいことがある。このクーデターは私がいなくてもラヴィがいれば成功したはずだ。ラヴィならば誰の血を流すことも無くいつの間にか王もルールもすげ替えることが出来ただろう。それを何故こんなめんどくさい状況にしたんだ。
「こんな状況になるまで静観しておいて、なんだって今更そんなことを聞くんですか~?」
「私はアリスに手伝うと言った。だから必要以上のことは何もしなかったし、アリスの行動を止めなかった」
だが、アリスのこれまでの行動が、アリスの意思によるものでは無かったとしたら。
「アリスはいつから操られている?」
「え?ミリアちゃんそれってどういうこと?」
リンネちゃんが困惑している。
「最初から。ってことはないんだけど。まあ説明するか~」
説明求む。
「うーん、まずこの国の成り立ちから。アメリアはもともと周辺の国と合わせてもっと大きな一つの国だったんだ。で、特に獣人が多く住んでたの。そして人間と戦争して、人間が勝って。一番強くて英雄だともてはやされた奴が王になった。そいつがさ~、まぁね?人間で初めて生まれた王だったわけで~。なんと特別な能力が発現したんだよね。ま、それが世界の仕組みによるものなのか、王という立場になったことによるパーソナルの変化によるものなのかは分からないんだけどさ~。とにかくその能力〈領域支配〉で、獣人は人間のペットっていう認識とかそれが崩れないようなインフラ整備とかできちゃったわけで。その王はとんでもないド変態だったみたいでね?ペットにした獣人をベットでね?あらら、リンネったら顔赤くしちゃって~。僕まだ何も言ってないよ~?はっ!ごめんなさいミリア様!口がつい。コホン。えーと、とにかく色々やってたらお子さん沢山生まれて~。中には獣人との子供もできたわけで~。国を分割することにしたの。皆が王になれば少なくとも自分の代では争いは起きないからね。まあ獣人は王の子であってもペットって扱いだったけど。で、その辺も能力で何とかして、それぞれの国は同じ国であるって矛盾した認識をさせることによって相互に高度な発展を遂げてきたってわけ。まだ続くよ?」




