96話 アリスはアリス
「変態変態へんたーい!!」
カナトに馬乗りになってばちーんばちーんとビンタするリンネちゃん。修羅場。
「り、りんねもうやめブベ」
カナトは制止を試みるもリンネちゃんは泣きながら平手をやめない。カナトの顔もリンネちゃんの手もとても腫れてそうだ。痛そうなので後で治そう。
「おい!アリスの服直せよ変態!寒いだろ〜?アリスは寒いの苦手なんだぞ~?」
「やっぱり!聞き間違いじゃあねぇ!この子確かに自分を名前で呼んでいるっ!!撫で回したい」
「コイツぁとんだ小悪魔だぁ!舐め回したい」
「あ、アリスがアリスのことをアリスって呼ぶのは当たり前なの〜!天地開闢から決まってたの〜!」
そう宣うアリスにゆらりと近づいていく男性二人。その姿はどこからどう見ても変態に他ならない。今、まともな状態なのは私しかいなかった。
「ボス、いやアリスちゃん、いやアリスくぅん。おじさんにもタッチ、させてくれるかい?」
「じゅるり。美味しそうな耳してるね」
「近づくんじゃねぇ!!お、おいそこの!ちっこいの!アリスを助けろっ!!」
ちっこいの?誰のことだろうか。そもそも兵器があるのに何故助けを求めるのだろうか。まあいい。しょうがない。アリスはアリスなんだから全く。
「アリス君、下着姿じゃあ寒いだろう。さて、お体に触りま」
「じゅるっ。金髪美少年-服の下の秘め事-。お持ち帰り決て」
真白の光が変態二名を包んだ。後で出そう。
「お、おお!?お前すげーな!!一瞬で二人をぶち殺すとはよ~!」
殺していない。アリス同士で記憶の共有はされていないのだろうか?
「殺してないよ。消しただけ」
「いや消すのと殺すのは同じだろ」
「また出せる」
「あー、収納能力みたいなやつか」
私は首を縦に振った。そういうことにしておいて、アリスに服を着せてあげるか。
空間が揺らいで服を着たアリスが現れる。
「お~!すげえ!ありがとな!」
さっきカナトに切り裂かれた服を元通りにして着せてあげた。アリスはくるりと回ったりして喜んでいるみたいだ。私も少し幸せになる。
それにしても性別まで変わるなんてことあるのか?人記に記されているアリスの項目が破損しているとはいえ性別を誤認するのか?もしかしてこのアリスは精神は女性だったりするのか?だとすると人記としては「アリス・アメリアは女性である。」という記述に対して整合性がとれていることになるのかもしれない。人記って「生物学上は~」とか気にしないんだな。それとも性別もバグっているのだろうか。
「なぁ、ちっこいの。名前は何てゆーんだ?」
「ミリア」
「よし、ミリアはアリスの子分な~?離れないでついてくるんだぞ?」
私は首を横に振った。アリスがガーンという顔をした。そして半泣き。身長は以前と同じくらいなのに精神はまあまあ低いようだ。
「ミリアはアリスのこと嫌いなのか?」
ぐすん、とそんなことを言う。私は首を横に振った。
「じ、じゃあ子分!」
「駄目」
「アリスのこと嫌いか?」
「ううん」
「子分!!」
「駄目」
「なぁんで」
何故子分にしたがるのか不思議だ。別に子分とやらになってもいいのだが、対等な立場でないとアリスは暴走してしまいそうだ。止める役目が必要だろう。
「友達ならいいよ」
私はアリスにそう告げる。
さて友達の定義を考えなければならない。まずこの世界において友達の存在を主張する人物の数だけ、それぞれの異なる関係性は許容されているものとする。つまり友達だと言い切れば、年に一回だけ会話するような関係であっても友達であることは否定されない。当人らが友達であると認識しているならば第三者の意見は介在しない。また、片方が一方的に相手を友達だと認識している場合であっても同じだ。例えば友達だと思っている相手から友達ではないと伝えられたとしてもこちらが相手のことを友達だと思っていれば友達なのだ。よって友達という認識があればどのような関係性であっても許容されることに間違いない。
しかし世の中は第三者の存在があって初めて関係性というものが観測される。ある二人が結婚したとしても婚姻届けを受理してもらわなければ世界には二人が結婚したということを認めてもらえない。お互いが分かっていればいいと言う人もいるだろうが、それはある種不完全だ。
「AとBは結婚している」ここに第三者Cが加わると、「AとBは結婚しているが、AとCは結婚しておらずBとCも結婚していない。AとBは結婚しており、Cもそう認識している」みたいな感じになる。要するに対比が生まれるのだ。AとBだけだと「結婚している」という状態しかないが、Cが現れることによって「結婚していない」という状態が加わる。結婚という概念に対し、存在し得る状態が補完されるわけだ。
まあ不完全とか完全とかどうでもいいし、結局は当人の気持ち次第だろう。こんなことを考える必要は無い。どうでもいい。




