93話 国王陛下万歳
私の能力<植意>の効果は対象に「指定した意識」を植え付けるというものである。「指定した意識」というのはどのようなものかというと、例えば「クリアスターの言うことを聞こう」とか「クリアスターのすることは無視しよう」とかそういう指向性のあるものだ。行動において意識的、無意識的という区別があるが、私の能力は「指定した意識」を意識的に行動することを強制させる。尚且つそれを意識しているということを本人は認知出来ない。つまり無意識に意識的な行動を強制させる。この能力で連中を傀儡に変え、リンネ・フリージアをいじめていたわけだが。
「おいで、クリス」
この状況は一体?知らない女が、ラヴィ・アメリアという名前しか知らない女が私のベッドに横たわって手招きしている。私はそれを当たり前だと感じているし、何より早く彼女の懐に飛び込みたいと考えているのだ。だがそれをどこかでおかしいと思っているのは、恐らく私が自分自身に施している対洗脳措置によるものだ。この状況はおかしくてこの女は殺さなければならない。漸くそんな考えがまとまってきた。それにしても面白い。能力のせめぎあいとでもいおうか。同系統というか相手も私と同じく脳に影響を与える能力の筈なので、その能力の呪縛を私の能力が解除しつつある。いや、完全に無効にすることは出来ないだろうが相手を殺すという思考まで辿り着けたのだから私の勝ちだろう。
「ね、早く。二人で温めあお?」
「ええ。ちょっと待って、電気を消すから」
私はそう返して自然に銃の置いてある机に近づく。未だ彼女の能力下であるために彼女の言葉一つで胸が高鳴ってしまうけれど、眉間を撃ち抜いてやればこの煩わしさから解放されるはずだ。
「クリスは恥ずかしがり屋さんだなぁ」
彼女の言葉で脳がとろけそうになるのを堪えて電気を消す。そしてサッと引き出しから銃を取り出して、振り向き、引き金を引いた。
ここは「キングオブ電力」の前。殆ど更地となったその場所に、ミリアが誘拐してきた偉い人間たちが出されていた。ざわざわと、状況の理解に努めている。ところで、物凄い轟音と停電も相まって、1番区に住む人間は殆ど起きだしていた。そして野次馬のようにこの異常な光景を取り囲んでいた。そしてそこに更なる波紋が投じられた。
「ま、まさかそんな」
偉い人たちの誰かが呟くように言った。その視線の先に宙に浮かんだ兵器が一つ。それが光源となってスポットライトのように照らされている地面に
「ひぃっ」
国王の死体があった。とはいえ一目見て死んでるなんて思わないと思ったので、血糊がぶちまけられていた。その尋常じゃない血の量を見て、どうやら死んでいると判断してくれたみたいだ。
「し、死んでる」
その誰かの一言が群衆に伝播し、次第に辺りは喧騒に包まれた。ザワザワと皆がどうしようもなく喚いていると。カシャッ。シャッター音が一回。夜だし停電していてとっても暗いので当然のようにビカビカフラッシュ。
少しシンとなり、次の瞬間にはカシャッパシャリカシャッカシャッカシャッカシャッカシャッカシャッカッシャンカシャッカシャッカシャッカシャッカシーカシャッカシャッカシャッカシャッパシャリカシャッカシャッカシャッカシャッカシャッカシャッカシャッパシーカシャッカシャッカシャッパシャッカシャッカシャッカシャッカシャッカシャッカシャッカシャッカシャッカシャッカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャ。
拍手喝采。これはドッキリ大成功なのではないだろうか。まあよく考えたら趣味の悪いドッキリだけれど。いやそもそもドッキリですらないのか。ネタバラシはないのだから。私に誘拐された人たちにとっては悪夢なのではないだろうか。
「や、やめろ!!国王陛下だぞ!!」
偉い人がそんな声をあげると、バッと数多のレンズがそちらを向く。何度も閃光。群衆は遠慮しない。集団でいるのだから一人の声に従うなどありえない。ついでに気が大きくなって、死体に接近しちゃったりもする。
「うぇーいw王様と寝転がってピースwSNSに上げんべw」
「ずりぃぞてめぇ!さっさとどけ!!俺のがバズる写真撮るんじゃあぁ!!」
「国王陛下の死骸に群がるゴミ屑共め!よし!俺が責任を持って動画に収めて晒しちゃる!君たちはマネするんじゃあないぞ!」
「拙者、接写するでゴザ。ん~これは綺麗な死に顔ですなぁ。クンカクンカ。むむ、これは血糊では?ペロペロ。ん~血糊の味~。うわ!なにする!ぷぎゃ」
王のもとに群衆が押し寄せ、潰れていく。圧潰。私は写真にとられたくないので姿を消して群衆を覗いていた。アリス達も潰されそうな勢いだったので回収しておいた。少し離れた所に出しておく。ぺいっ。
「ちょっ、、あら?ミリア?助かったわ?あれ?いないの?」
いるけれど、返事はしないでおいた。




