91話 既に死んでいようが世は回る
シガレットとシャリテは城の明かりが完全に消えた瞬間、仕事を果たした。
伽でもしていたのか、大きなベッドには裸の男女が3名。真ん中のやや太った男が国王である。既に侵入していたシガレットには気付かずに、気持ちよさそうに寝息をたてている。と、思ったら呼吸音が止まる。ベッドには死体が3体。シガレットは国王を空間拡張の施された袋に入れて、窓から城の外へ出た。
シャリテの仕事。それは王族を皆殺しにすることだった。そしてその準備は、ずっと前に終わっていた。クリアスターに何かされる前から。
彼は組織内で一番の秘密主義者だ。アリスも彼についての詳細は知らない。しかしシャリテは秘密を一つだけ、アリスに共有していた。それは能力。
<既死回世>。この能力は影響を介さず結果を記録する。そしてそれを好きな時に具現させることが出来る。つまりシャリテが人を一発殴ったとしても、その人はよろめくことも無くダメージも無い。しかし具現させると痛い。結果だけがリリースされる。世界の記録に干渉する能力だ。
つまり寝ている間にでも気道を塞いでしまえば、最終的に残る結果は“死”だ。それを具現させれば、苦しいだとか心臓がバクバクすることもなくすんなりと死ぬのである。そして綺麗な死体が出来上がる。国王、それと城内の王族はそのようにして死んだのである。そう、既にこの城「グランアメリア城」にいるのは使用人だけとなった。後は城を壊すだけ。
城の外でシガレットとシャリテが合流する。
「おう。死体は回収したぞ」
「よし。じゃあ壊すか」
シャリテは過去に城を攻撃している。瓦礫も残さないような威力で、確実に城だけが消えるように座標を計算して。シャリテが兵器を使えば、その音も光も衝撃も、<既死回世>によって介されない。つまりばれることが無いのである。
そして、それを具現するとどうなるかというと。
広大な敷地には何も残らない。ただポツポツと使用人が寝ていたり呆然としていたり、王族の死体が転がっていたりするだけである。
城を攻撃するに際し通常なら人も死ぬ被害を及ぼしている筈なのに、結果としてそれが起きていないのは何故かというと、対象を絞った為である。攻撃対象はあくまで城。死体が消えるのは困るからだ。きちんと知らしめなければならない。この国の支配者は死んだのだと。
「そいじゃ死ね」
シガレットはそう言い放ち、リモコンのボタンを押した。
雨が降った。局地的なそれは音も無く降り注ぎ、使用人の命を奪った。
私はアリスと共にドッキリというやつを行っていた。スヤスヤ寝ている人間を真白の光で包んで、出した時には国が滅んでいるという寝起きドッキリを仕掛けるらしい。きっと驚いてくれるに違いない。既に10名の家に突撃したが、大抵の人間は起きていた。なんだか慌てているらしかったが問題は無い。家族の方に目撃された時にはちゃんとドッキリだと説明しておいた。問題は無い。
「ミリア、次は裁判長よ!その次はギルドマスター!」
「わかった」
アリスの指示に従って、次々と持ってくる。
「貴族のユビヴィスタ侯爵とドストルフ伯爵、ついでにバナツィエ男爵もいっちゃいましょう」
「うん」
3人の回収にかかる時間は10秒足らずだ。
その後、アリスにリストを渡されたので一度に全員回収してきた。なんだか皆、豪華な家に住んでいた。
「ありがとうミリア!これで邪魔者はいなくなったわ!」
「邪魔者?」
ドッキリを仕掛ける人達ではないのだろうか。
「あ、勿論ドッキリを仕掛けるのよ?でもそれの前にもう一個大きなドッキリがあってね?そのためには邪魔な人達だったの」
大きなドッキリ。なんだろう。楽しみだ。




